第24話「強くなった電斗」
電斗が動かないで電撃を放つ。その電撃は以前よりも磨かれて強化された一撃だった。
けど、即座に結界術で防いでから走り出す。電斗を攻撃するために走って接近して届く距離が取れた時点で斬り付ける。
「はぁっ!」
「ふっ! 容易い攻撃だなぁ!」
電斗が直撃しないための結界が施されて攻撃を遮断する。刀が結界を破れなかったが故に最後は懐から札を取り出した。それを結界に張って効果を発動させる。
「強制解除!」
「なっ⁉︎」
完全に守られていた電斗は結界が破られることで不意を突かれた。
結界術は普通だと破られない絶対防御だけど、札は解除させる効果が起こせる。それを利用されて電斗が施した結界は解けてしまう。
刀を握り直してから再び攻撃を仕掛ける行動を起こす。しかし、破れた瞬間から後に空いた間が防御する時間を作ってしまう。
「くそっ! 結界が破れても攻撃が当たらないと意味ないじゃないのよ!」
「そう簡単に間合いは詰めさせないんだな!」
そして電斗が遠距離から電気を蓄積させる態勢を取る。これは間合いを詰めて来る間で完了させて放つつもりらしい。
(これだと間合いは簡単に詰められない。けど、私の戦闘スタイルは近接向けだから間合いが空けられた状態は厳しいわ)
内心で迷った末に考え込む姿を窺わせた瞬間に電斗は笑いながら挑発する。
「はははっ! 怖くて近付けないのか? これで勝負は決まったんだよ。諦めるなら今だけだぞ!」
「うるさい! 誰が諦めるのよ!」
結果的に【天牙一閃】が有効手段として取る他にないと考えた。そんな一瞬で頭を男性の声が響く。
『まずは【天牙一閃】で間合いを詰める際に大きく動き回れ。相手を翻弄して方向は不特定に動き回りながら近付いて攻撃するんだよ?』
(こ、この声は定義様⁉︎ まさか助言してくれるなんて……! 分かったわ。やってやろうじゃないのよ!)
私は【天牙一閃】を放つ姿勢を整える。刀を構えて準備が整った上で【天牙一閃】が放たれた。
「はぁっ!」
しゅっん!
「ここで来るか!」
(まずは一直線に進めて途中で回避しよう。電斗が電撃を放出した瞬間に回避して斬って行く方針で勝てる……!)
電斗は即座に後退しながら狙いを定めて放出する準備に徹した。私が凄まじい速度で来ることを予測して大きく後退する。それに一切の躊躇を許さないほどの後退を見せた電斗だが、それでも私の【天牙一閃】は一瞬で距離を詰められる。けど、詰めている間に攻撃されてしまうと今の電斗なら私でも直撃して耐えられないかも知れないと思考が脳内を過った。
そして私は凄まじい速度を出して詰めた。迅速に繰り出された一撃は残り僅かの距離で間に合わないことを悟る。
「来たぁ!」
それだけ電斗が叫んで歓喜を窺わせる。詰めて行く途中で電撃が放出された。
それは私の頬を掠って過ぎた。その擦り傷を負った時から勝利の確信が抱かれた。
「ぐぅっ⁉︎ そ、そんなっ……⁉︎」
「これでお終いね?」
接近する中で放たれた電撃をベストタイミングで回避してから反射運動を活かした動作が停止することなく出来る限りの減速を抑えた。
刹那の一撃が下す刃を電斗に首が刎ねてしまう寸前で止めた。しかし、少しだけ刃が首筋に及んで切れてしまう。多少の出血が生じるが、それだけで済ませられて安堵する。
「ごめんなさい。少し切れちゃったわ。これじゃあ私が未だに未熟だって思わされてしまうのよね?」
「お、お前ぇ……あの速度で回避したのか? 驚いたぜ……」
「うん。私でも驚いているわ」
私は刀を鞘に納めるために鞘を転移させて手元まで持って来る。鞘に刀が納められると背中を向けて電斗に告げる。
「良い勝負だったじゃないのよ。だけど、まだ負けてられないわ」
「……くっ! 参ったぜ。もっと修行が必要だな……」
電斗は悔しそうな言葉を溢して落ち込んでしまう。それも惜しいところで勝利を逃したのだから当然だと言える。
(それにしても定義様の助言がなかったら負けていたわ。これだと少し卑怯だったかも知れないじゃない……!)
人から受けた助言が自分を勝利させた結果が悔しくてしょうがない気持ちを抱いた。こんな気持ちが生じた時に私は涙を堪える。
それから私たちは休憩を挟んで修行が開始される。
今日は電斗と一緒に修行する予定が組まれていたことから色々と結界術に関して教えて欲しいと思う気持ちが内心にあった。
「結界術を取得して良かったな? あれは咄嗟の防御に役立つ手段だから身に付けて置いても損はない。結界術の枠は人だけで省かなくても問題ないところも取得する恵利点はある」
「結界術がなかったら私は死んでいたわ。あの一瞬で思い知らされた。だから、定義様に感謝しているのよね?」
「清原定義……。彼は初代神主を務めて巫女の誕生に繋がった人だよな? まさか加護を通して意思が残っていたなんて驚きだ」
そんな風に電斗も驚愕するほどの事実だった。巫女が与えられた加護は定義様が施した異術で成立している。それは巫女が誕生した時に施された守護が生じる。これが私を生かしてくれたことは紛れもない真実なしかない。
「取り敢えず修行して強くなるんだからね! これから沢山の人々を救って来世は素敵な人生が送れるかも知れないでしょ?」
「それなら今からでも遅くなかったはずだ。けど、俺たちは生まれた頃から宿命を背負わされていた。俺は少なからず使命感を全うしたいと言う気持ちで霊術師をやって来た。昔から人と違った自分を肯定してくれた幼馴染みがいた事実が生きる意味をもらって今がある」
「へぇ? 幼馴染みなんていたのね? 女の子かしら?」
私がニヤニヤしながら尋ねてみると電斗は真剣に回答する。その表情はあまりこちらの意図を気にするようなはんのうでもなかった。ただ、寂しそうな表情で返事した。
「もう会ってないんだ。あいつは小四の時に遠くに引っ越して以降は話してない。だから、今はどんな生活が送れているか気になるかも知れないな」
「ふーん? 意外と真面目に考えているんだね? 気持ちは分からなくもないけど」
私は電斗が追い込まれないように意識しながら回答した。わざわざ人が寂しく思っているところを攻撃するような趣味はなかった。
電斗と喧嘩して関係を壊したくない一心が強い上に心から同情の声が上げられないなんて出来なかった。
「きっと電斗が人を救いたい一心で戦っていることを知れば凄く関心するんじゃないかしら? 仲は良かったんでしょ?」
「たった一人の友達だった。実はファーストキスの相手だったんだよ。これも別れる前に一度だけ交わした思い出が今でも忘れられない。だから、救って欲しいと依頼されたなら全て受ける。それで彼女が幸福を掴める理由として影響するぐらいの活躍を見せたい」
(意外に真面目でちゃんと思考が働かされているわ。それだけ好きだったんでしょうね? 私だと初恋すらないかしら? けど、大して恋愛は興味が湧かないのが私の普通だよね〜)
内心で自分が恋するイメージを浮かべるのが難しかった。やはり、初恋を迎える暇がなかったことが特に大きく関係あるだろうと何となく分かっていた。
しかし、暇を作れてしまうことは修行する時間が減らされる可能性を残している時点で今は経験がなくても良かった。
「そろそろ修行に戻りたい。結界術を駆使するコツを知りたいんだろ?」
「うん!」
そんな風に電斗から声を掛けて来た。それは私が教えて欲しいと希望していた内容だった。
電斗と共に施す修行は充実して終わった。電斗が教えてくれたコツは今度に活かせる内容が詰まっていたことから伺って良かったと思った。
「もう少しでクリスマスが来るのよねぇ〜。少しぐらいはみんなで祝っても良いけど、他は意外に取り合ってくれない可能性があるわ。こちらから提案しても無駄かも知れないところは面倒なのよ。ま、思い切って聞いてみる方が良いよね?」
就寝前にカレンダーを見ながら呟いていると過去の記憶が蘇る。それはお母さんが家を頻繁に空けることが多くなって四ヶ月後を迎えた頃だった。急に帰宅したお母さんからしばらく休日を取ると告げた時は喜びが溢れた。
「お母さんは今頃だと寝ているのかしら? 凄く会いたくてしょうがないよぉ……」
少し情けない声が出てしまう。私の寂しいと思う気持ちは凄い強かった。偶に挫けてしまう寸前の心を押し殺して過ごす日々は気付いた時に酷く落ち込ませる。
そんな私は周囲で生活する家族が羨ましくて嫉妬心を抱く日常が続いた。
ベッドの上で天井を見詰めながらクリスマスとお母さんが揃って過ごせる日を多少は期待して目が閉じられて行く。
私はいつの間にか眠り始めた時の記憶を掘り返してみたが、覚えているはずがなかったところから理由不能を起こさせた。
次の日。起床した後に洗面所を訪れる。水で顔を濡らして寝癖を直す。いつも出来ていることは怠らない意識を持って生活したいと思った時から続けられて来た【日課】と呼称されても可笑しくはない。
そして玄関を寄った時に電斗が靴を履いているところに遭遇する。
これから修行しようと誘ってみたところで家から出る準備は十分に窺える。
電斗は修行に参加しないと表明してから理由を説明する。
理由は大きく分けて二つある。
一つ目は私と修行する予定は事前に一日だけと決めた上で過ごしていたからだと言う。
私が実力不足で鍛錬に不満がある訳じゃない。単純に電斗は私から離れたいと言い切った。何故ならいつまでも甘えられないからと己の気持ちを表した。
場所を与えられた時から十分とも言える生活を送って来れたことが何よりも最終決断の理由を急がせたのだと電斗は語る。自身の見るべき世界を少しでも多く目撃して強くなりたい。自分は居場所を定めなくて良いから縛られない環境で高みを目指したい。
いつか義廻を討ち取るだけの戦力となる日まで立ち止まりたくないから自分なりのやり方で進めたくて選択した道で間違っていると思ったことはないらしい。
後は残る二つ目は根本的に事前から受けていた依頼が迫っている故に早めの準備を整えたいと思ったところが強かったそうだ。
次の一件は厳しい一戦が予測される。だから、修行する中で揺らいでしまう結果を招いて本番で不備を出したくない。本来の目的に身を打ち込ませるために今から出発したかったらしい。
電斗が考えていることは立派だった。私でも差を付けられたように思えた。けど、それで終わらせるつもりはない。
「事情は分かったわ。貴方の目標が定まったなよね? けど、一人で背負い込まないで欲しいのよ! 私たちは共に戦うと決めた仲間でしょ! だから、貴方を行かせてあげない訳じゃない。ただ、忘れないで欲しかった。貴方は一人じゃない! それだけは念頭に置いて挑みなさい! いつか待っているわ」
私の想いは伝え切った。これが再び長い別れだとしても悔いはない。きっと今後でも一緒に過ごせるチャンスは訪れると信じているからだ。
これは終わりじゃない。まだ先に続く道を進めて行くための過程でしかない。だから、私は電斗が聞かせてくれた決意だけで負かされない自分を作りたいと心から思った。
「行ってらっしゃい……!」
渾身の挨拶で電斗を送り届ける意思が見せられたと思う。これが最後かもしれない。けだ、そんな不確定未来を装って止められる訳がない。頑張ってもらうために見送る決意を抱いた。
「色々と悪い。俺の決意は単純に綺麗事かも知れない。でも、進ませてくれたことに感謝しながら突き進みたいと改めて思えた。本当にありがとう」
「ううん。大したことは出来ていないわ。だから、ちょっと未練が残っているかも知れないのよ。ま、良いんだけどね!」
最後だから精一杯の笑顔を見せて出発してもらう準備を仕上げられることを願った。これで終わらないように祈りながら見送る。
「行って来ます……!」
「頑張ってよね!」
そうやって電斗を見届けた。電斗の出発は急すぎる話だと困惑した理由を招いた。
けど、大して問題視した訳でもない。きっと大丈夫だと信じて良い結果報告を待つことを決めた。
「よーっし! 私も頑張るわ! 負けていられないんだからね!」
そんな感じで私は見送った後は修行に専念した。電斗と過ごせた短い時間は貴重だった。とにかく頑張りたいと心底から思わされた結果が未来に繋げた。




