第15話「三度目のリベンジ戦」
私はハゼロと対峙する千鶴を置いて義廻に挑戦している仲間の下に来た。義廻は相変わらず余裕な表情で三人をあしらい続けるが、そこを不意の一撃を放つ姿勢を取った。きっと姿勢が作られた瞬間に【天牙一閃】が来ることは分かっていたはずだと自覚していた。しかし、今回は少しでも隙を作るために迅速で間合いが詰められる。そこから護霊刀が首を斬るための斬撃を加える。
「おっと? まさか首が狙いか? 不意打ちでも対応は出来る。その点が分かっていないようでは戦場は生き抜けない!」
「思ってない。こんな一瞬でお前に勝利が望めるなんて思えるはずがないんだからねぇ!」
「何っ⁉」
一瞬だけ視線が逸らされた間に違う方向から三人の攻撃が一度に襲撃する。無数の攻撃を避ける必要が迫られた瞬間を義廻は掻い潜る。
「ふっ! 面白い!」
義廻は攻撃に対する策を瞬時に練り上げた。私が放った技に対した防御は一瞬で作り出して手元に握られた魔剣が護霊刀を受け止めて首の切断から逃れた。残る三人は即座に繰り出した義廻による攻撃で二人が排除された。双羽と電斗に向けて悲哀のこもった怨霊が出現して攻撃の中断を強いられる。
「な、何だぁ⁉」
「お、怨霊が一度に発生するなんてどんな異術だよ!?」
「僕が駆使する魔術は【死霊操作】と呼ばれる万能性の高い異術になる。自らが殺すか自縛した幽霊を取り込んで操る異術で昔は恐れられた。こいつと対峙した奴は確実に殺されると噂が広がっていた頃から少しずつ魔術の強化を施して来た。それが現在に至る訳だ」
そこで楽典さんが放った殴打だけを片手で受け止めた。触れた瞬間に弾ける様子が窺えたが、それを握り潰して掻き消して見せる。そこから二人の攻撃を同時に防いで見せてしまった義廻は先に楽典さんの腹部を急に現れた波動で押し返す。
その一瞬は義廻の意識が私から逸れた。その隙を利用して一歩だけ後退した後で回転斬りを放つ。しかし、義廻は簡単に防いで
「甘いから避けられてしまうんだろ? 早く攻略して見せられないか?」
吹っ飛ばされた楽典さんはすぐに態勢を立て直して次の攻撃に備えた。私は恐らく殺す気がなくて助かったことに気付いていた。あの対応は最初から理解した動作の中でも適切に避けている。あそこから反撃は容易かった点がどうも引っ掛かっているが故に楽典さんの表情は真剣に思い悩む姿が見られる。
そんな楽典さんは思考を巡らせる。少し停止したことで他の三人が休息する分と同時に攻撃手段を選択する。その思考期間は義廻が攻撃を下す好機にも思える時間だったが、敢えて猶予を与えた瞬間を作られて楽典さんに不安要素を与える。だが、それでも楽典さんは動き出した。
「その様子から窺える点は一つだけ。俺でも余裕を持って窺ってやがるムカつく態度が取れてしまう実力差……! これを何とか四人で埋める他にない!」
「君たちがどんな手段で向かって来ても無駄だよ。僕は平安時代から生き永らえた経験が戦闘技能を向上させて来た。しかも、僕の【死霊操作】は幾らでも幽霊の魂を取り込める無限ストックを可能にする異術なんだよ。この差が歴然としている理由は誕生した時に授かった異術で決まる!」
「その通りかも知れない。けど、攻略法が見付かれば大抵の差は埋まる。そんな試行錯誤が勝利をもたらす鍵になる」
「甘い話は止さないか? 僕は君たちを殺すなんて容易い。現状を楽しんでいるだよ。それが分かっているなら早く倒して見せろ!」
「言われなくてもやるに決まっている!」
今度は新たに見せられる技を楽典さんは披露した。それは黒い閃光を上空に飛ばして無数の小さい球体が落ちて来る。
「フラッシュシャワー!」
黒い閃光が無数に散らばって小さい球体は落下して行く。これが義廻の頭上に降り注がれる数秒前に放出を止めて間合いを詰める。次に義廻が受ける攻撃は解き放った技か直に叩き込まれる殴打の二択が迫られた。それでも一切の動揺を見せる様子もない義廻に対する攻撃を殴れる距離に入った瞬間に拳の収束を止めて違う手段が打たれた。
「それだけ余裕でいられるなら俺だって考えがある!」
「ほう? どんな攻撃なんだ? 早く見せてくれよ」
「避けないと死ぬぞ?」
そんな風に落下した黒い閃光が降り注がれる寸前で頭上に向けて防御壁を作り出す。それで落下して来た黒い閃光は全て防がれた。しかし、黒い閃光の落下が終わるまで時間が取られた間に強大な霊力出量の技が解き放たれた。
「デストロイフラッシュ!」
黒い閃光に込められた霊力は凄まじい精度を底上げさせて収束した巨大な球体が形成される。それは一撃で終わらせるつもりのこもった最後の希望だった。しかし、相手が未だに動かない理由があると思った私は避けられても追加の攻撃が下されることで勝率を上げる。
「はぁぁぁあああ‼」
「良いねぇ? それが君の本気だな!」
(この機会は逃さない! 予測に入ったとしても楽典さんの本気を捌いた上で避けることは難しいはず! 直撃と同時に斬ることを意識して放つ!)
他の二人は怨霊と対峙して手が離せない状況下に置かれて助太刀が難しい状態に持ち込まれていた。そこで一斉攻撃が出来る人は私だけだと言う状況なら行くしかなかった。そんな決意が再び【天牙一閃】の構えを取った。
「これで最後だよぉ! 死ねぇぇぇえええ‼」
(今だ……!)
凄まじく大きい球体が義廻に迫る。安定の威力を保持した状態で義廻を呑み込む勢いを見せた。それ以降の義廻の動作を見れない状態となった楽典さんが取り敢えず様子を窺ってから次を考えることを決める。そんな中で義廻は直撃する手前で死霊が収束されて変わった大きな手を形成する。それが全てを受け止めて強大な技は惜しくも掻き消されてしまう。しかし、強大で弾く性質まで最大強化を施した技は手を崩すだけの威力が現れる。そこが最も斬り付けられる好機だと思って一気に決めた。
「いっけぇぇぇえええ!」
「そっちからも来るか……!」
私の握っている護霊刀が無防備を晒した義廻の首に刃が押し当てられる。そして勢いに任せて撥ねてやった。それは奇跡にも思える瞬間で首が斬れた後に抜ける際の尋常を超える速度が球体の余韻に巻き込まれないで済んだ理由だった。
「え? 怨霊が消えた!?」
「油断して祓えない状態に持ち込まれたけど、どうやら異術が解けて消えたらしい」
「ふふっ。まさか勝利するとは思ってもみなかった。けど、最後は一本を取られたね?」
「ふふん! どうよ!」
凄く晴れたような表情で三人の下に駆け付ける。そこで四人が集結してボスを倒した安堵が起こる。夢が叶った瞬間に巡り合えて本当の歓喜が味わえたことに大きく感動を呼ぶ。義廻の魔力が消滅したことから殺せたと判断しても問題がないかも知れない。実際に球体から逃れる暇がなかった訳じゃないはずが楽典さんの攻撃だけで解決するような話で済ませられないことは確かだった。それを楽典さんも認めていた。
「最後の援護は助かった。あれで勝利が望めなかった時のことなんて考えられなかったぐらいだ。しかし、こうして四人で倒せたことも良い経験になったと思う。ありがとう」
「師匠がらしくないセリフで決めているよぉ~」
「うるさい」
そんな感じでこっちはひと段落した。しかし、一方の千鶴は未だに交戦が終わっていない状態が続いた。
「その程度で聞く訳がないだろ!」
「そっちも同じだよ。それじゃあ永遠に終わらないんだよね!」
素早い動作で繰り広げられる一戦は一歩も譲らない状態に至る。実際にどっちが不利とか途中から窺った私たちだと分からなかった。けど、見て分かることは千鶴の全身が殆ど黒くなって繰り出された殴打がハゼロに打ち放たれるシーンが多く見られる。
そこで私の参戦を果たして一緒に交戦することで勝率を上げて行こうとする。しかし、それを楽典さんが止めて一言だけ注意を施した。
「待て! 今から参戦なんて無理だ! 今は落ち着いて勝利を待機するしかないだろ!」
「だって千鶴が死んじゃうよ! 私たちのせいで死んでしまうなんて結果は出せないんだからね!」
「分かっている。だから、少し回復させているところなんだよ。ここは俺が引き受けるからお前たちは待機しろ!」
「ら、楽典さん……?」
楽典さんが真っすぐから視線を向けて来る。そこで楽典さんの意見は俺たちが出る幕はないと断言する姿勢だけを見せた。それは俺たちの参戦は逆に不利を招く理由となるから交戦が終了するまで待機に徹して行くしかないと発言した。その間に起きる時間だけ空けて体力の回復を待った。
すると、そこで千鶴が戦況を有利に変えた。それは良いタイミングで雨が降り出して来た時に起きた話だった。再び見た先の二人が殴り合っている。それも先ほどより強くなって優勢を勝ち取った瞬間だと気付いた時は凄い嬉しかった。何故なら難敵として恐れた男が死んで行った事実を抱えて以降の人生が暮せると思ったからである。
「この雨は千鶴の天術かな?」
「それはあり得るかも知れない。あいつの天術で集落が脅かされる状態が続いて止むまで時間が尽くされる理由を聞いていた。なら、天術が自身の力を引き出して現状に有利をもたらしてあげたんだろ?」
「これなら俺の出る幕はないな?」
そうやって意識が千鶴の交戦から外れて来た時に大きくハゼロの悲鳴が聞こえていた。その悲鳴はきっと千鶴の決めた殴打でハゼロが出ちゃった感じだと思ってくれても構わないところである。
暇が出来た時は広い場所で辿って来た過去の話をしたいと思った。だから、この一戦で千鶴が敗北するなんてことは悪いが許さない方針で行って欲しかった。見守られて交戦の勝利を掴みそうな千鶴に最大の声援を送って今回は丸く収めて行く。そんな経験がなかった千鶴は少し疲れ切った表情で相手と対峙する。ちゃんと私は千鶴を褒めて期待していたことの成果が出るまでの困難を乗り切ってもらえる状態が作りたかった。そこはやり切った後が特に満足させられる一瞬だから千鶴の一戦を最後まで見届ける。
「うぉぉぉおおお‼」
「くっ! 接近させない!」
どかーん!
幾度に渡る爆発が千鶴に直撃するが、それを平然とした態度でハゼロが勝利の出来ない事実を告げる。お互いが間を置いて向き合った時の優勢は千鶴だった。まだ体力が残って戦える状態を維持することで私たちの時よりも余裕があった。
「君の爆撃は効かない。何故なら俺の部位が黒くなっているところが硬化と筋力の大幅に渡る強化がもたらしてダメージに相当する威力が足りないからだ。それを受け入れられない奴は勝利が難しいだろう」
「くっ! こんな奴は初めて見たぜ……」
最後に追い詰められたハゼロは大きく息が荒い様子を窺わせる。ハゼロを凌いでいる千鶴は爆撃を受けて落ちる訳がない。硬化された部位は多くが黒に染まると防御力の上昇が見られることは分かった。その身体強化にハゼロの爆撃は無効化されてダメージは微塵も入らないで一戦に終幕が訪れそうだった。この結果をハゼロは信じられないと言った表情で絶望に浸った。
「悪い。もう他が終わったみたい。だから、決着を付けよう」
「ち、畜生ぉ⁉ ならば、最大出力の爆撃をお見舞いするぅ!」
そんなハゼロが全身の残った力を込めて爆撃を放つ態勢を作る。それが見られた時の千鶴は単純に突っ立っている状態を維持して余裕の勝利を望んで爆撃に耐えるための姿勢に気を付けた。そこは最後に生命を賭けた攻撃を下して終わることを互いが結ばれて行く。




