第13話「集落長の罠」
私たちは最後に本来の目的でもある少年を救出するために最下層まで降りる。そこまでの道のりは何者にも邪魔されないで通ることが出来た。もしかすると村人たちは監獄の様子を窺えないのかも知れない。それを踏まえて少年が救出された後で脱出を試みる。
「そろそろ少年の情報を教えてくれないか? 今回の救出は目的があるから危険を承知の上で来たんだろ?」
「勘が鋭いね? 肝心の彼は忌子として殺害を予定された人間として囚われる現状にあるが、実際は千年なんて期間で収まる人生を送って来た訳じゃない。彼こそが集落が作られた空間を生み出した本人になる」
「ええっ⁉︎ それって本当かよ⁉︎」
「それじゃあ何で村人は殺して欲しいと言って来たの? そこが謎だよね?」
「少年が住み着いていた場所は、集落の南から距離の離れたところに位置している。そこは村人たちからしてみると、凄い豪華で金銀の発掘が頻繁に見掛けられる夢の場所だった。その土地が欲しいが故に千年前に少年が襲撃を受けた。大勢の人たちが押し寄せて交戦が始まった。一人で全員を相手した訳だが、少年は真面目で話し合えば分かると信じて村人を通した結果が拉致されることに繋がった。そこで少年は村人の中でも最悪とも言われる呪術で意識を奪われた。もちろん意識だけでも奪えたことが奇跡とも言える結果だと集落長は歓喜して金銀を発掘して来た。しかし、恐ろしかったのは少年の殺害を命じたが、幾度の攻撃でも身体は再生して息は絶えなかったことだ。それから今となっても殺させない状態が続いてしまった。さらに心臓が止まらない限りは天術が機能して天候に影響が及ぶ。どうにか体力が尽きる度に天術は不能になるが、それは永遠に継続されることでもないと分かった。大体だと三日で体力は回復して再機能を果たす。つまり、少年の存在は大きく害なんだよ。だから、殺したいらしい」
「ま、マジか……。それは酷いな?」
「その情報を入手した時に俺は何度か村人に変装して少年がどんな人物であるかを探った。結果が味方に付ける価値観の高い優れた術師だと評価するに値した人間だ。そいつが味方となれば俺たちは序列六位以上にも対抗できる考えた」
(結局は序列のことで頭がいっぱい何じゃん。初めて聞いた時はこんな奴でも救えるんだと勘違いしちゃったなぁ。今はすでに楽典さんを許さない。味方してくれる優秀な勢力が欲しいだけの救出なんて馬鹿げているとしか思えない。けど、少年はきっと解放されたいなろう。ならば、立場を利用されていても救う他に選択肢はないよね?)
そんな決心が内心で抱かれると私は階段を降りる足を早めた。それに電斗が何で急いでいるのか尋ねて来た。
「おい、どうしんだよ? 何でそんなに急ぐ必要があるんだ? もし、敵がいきなり襲って来たら大変だぞ?」
「早く脱出がしたいの! だから、出来るだけ急がないかな?」
「俺は構わないけど、それで体力を消耗するなよ?」
「分かっているわよ! それじゃあ早く行こう!」
そうやって私は三人を急がせた。やはり、ずっと階段を降りて行くことは辛い。それだけの負担が私の足に掛かって来るが、それでも歩みは止まることを知らなかった。実際に階段が続く道を進み始めてから随分と経った。そこで異変に気付いた楽典さんが引き返すことを決めて私たちに伝える。
「これは罠かも知れないな? きっと幾ら降りても少年が拉致された部屋に辿り着けないだろう。もしかすると階段は無限に続いている可能性が高い」
「はぁっ!? それじゃあ意味ないじゃん!?」
「やっぱり、あの集落長の仕業か?」
「そう考える方が説明が通しやすい」
「そ、そんなぁ……」
私たちは真相が明らかになった時の無駄足が負荷を背負ってまで歩み続けた意味のない行動に対して凄い不安を抱いた。それも、さっきまでの三人は誘うための罠に過ぎないと楽典さんが判断した。
しかし、楽典さんは戻る際に掛かる時間と負担を考えた上で奥の手段を使う。それは手持ちのリュックに入れた【転移札】と呼称されるアイテムだった。それはうちでもらった一品で今が使うタイミングとしてはぴったりだと告げる。
私の場合だと見習いの立場に位置することが理由でお父さんは使わせない方針を通していた。何故ならどんなピンチでも自らの思考を駆使して搔い潜るようにするためだった。そんな厳しい条件を出して普段の活動に励ませることに対する不満は多少はあったけど、そこまで文句を言って使わせてもらいたいなんて思った経験は一度もなかった。しかし、それが自分を鍛えて来れた理由でもある点は感謝している一面だと考えていた。
「取り敢えず三人は俺に触れた状態で固まれ!」
そんな風に【転移札】を持った楽典さんに触った状態を作って使用する。主に発動させるためには霊力の供給が必要だった。なので、楽典さんが霊力を注ぎ込んで行った瞬間に転移が完了した。
「つ、着いたな?」
「こ、ここが入り口なのか?」
そこで私は周辺を見渡した瞬間で大きな声が上がる。それは監獄に入る直前の入り口を見張っていた二人の村人が急いで取り押さえるための行動を開始した。それを受けた私たちは逃げる他にないと思った。しかし、一人だけ撃退した方が早いと一言が吐かれた次の瞬間に黒い閃光が放たれた。
ぶしゃぁぁぁあああ!
「な、何だぁ⁉ ま、まさか殺しやがったなんてぇ!?」
「次はお前の番だぞ? 掛かって来ないのか?」
「も、申し訳ないです……!?」
けど、楽典さんはそんな命乞いがあっても応える気なんてなかった。それはこちらが追い込まれたことの恨みで決定している話である。後は監獄を目指す前に訪問した集落長の下に駆け出す。
走った末に日常で鍛えた足は素早い速度で目的地に向かった。そこで通り縋る村人たちの視線が向けられるが、無視して集落長がいる場所を目指した。そこで私たちの前を集団で立ち塞がる様子を窺わせた。
「止まれ! この先は行かせない——『良いから退いてくれよ!』ぐぁぁぁあああ⁉」
その一瞬で電斗が電撃を放った。電気が立ち塞がった敵の全体を痺れさせて動けない状態に追い込ませた。私たちは走ることを止めないで次々に現れる敵を倒して行くうちに集落長の自宅を見付けた。
「止まっている暇はない! 奴は呪術師だと予測される! 注意しろ!」
そして私が護霊刀を取り出した後で一度だけ停止する。一緒に停止した双羽と隣り合った上で電斗と楽典さんが一斉に魔術を発動させて攻撃の向けられた自宅が消滅してしまう事態を作った。
「標的まで死んでないよな?」
「もちろん標的から外す気で攻撃したんだ!」
「やるじゃん!」
そんな中で自宅の吹き飛んで行った後に現れた人影は二人の守りで固められている様子が窺える。その瞬間を目前に迎えた時の私たちはすでに冷静を崩すつもりはなかった。何せ残る刺客は目前で距離を空けた場所に位置する三人が全員だと分かっていたからである。
「よぉ? 帰ったよ? どうやら感動のご対面だな?」
「ば、バカなことを言うな!? お前たちは監獄に囚われていたはずだろ! さっきの霊力はお前たちが起こした反応か!?」
「その通りだ。すでにお前を殺すために揃って抜け出すまでの一連は意外と容易い問題だったよ」
「それで同族を殺して来たと言う訳か? 何と卑劣な連中だ……。ここはお前たちが仇を取れ!」
「「了解!」」
そこで出現した二人は以前に倒して来た連中と違った服装を身に纏っていた。それが特に何か意味を示していると思った時に楽典が注意を促す。それは今から交戦する二人に関して気を付けるべき点を押さえた一言だった。
「奴らは危ないから気を付けろ! これでもかなりの手練れだ!」
「なっ⁉ こいつらが?」
「早いうちに終わらせましょう。住居の修正にも手を付ける必要性があるんですからね?」
「言えているわ」
そうやって女性が二人で異様にも思えるエネルギーを発揮させて妖怪を顕現した。それも二体は対になって初めて真の力を発揮するタイプの効力が見た時に分かった。実際に二人の異術は【召喚術】に当たることは目前の状況で理解するに至れた。しかし、理解の上で二体の妖怪が放つ妖力は半端ないぐらいのエネルギー反応を起こさせる。
「驚いたか? こいつらは呪術で強化された対の妖怪だ!」
「妖怪は呪術に対する耐性が強くて簡単に崩れない。その利点が活かされた戦闘スタイルでお前たちを始末する!」
「来なさい!」
そこで二人は後ろで待機して妖怪が私たちを殺すための目的を認識させて襲わせる準備を整えた。
この時に扱われた異術はいわゆる【召喚術】と呼ばれる類に入るタイプの効力を発揮させることを私は知っていた。偶に魔術として扱わている奴が見掛けられるが、多くは類似しているだけで同じ異術に含まれることはない。つまり、タケルは魔術で間違いないと言える。
「それにしても妖怪だから呪っても問題ないは少し厄介だな? 俺が一人で倒せる相手じゃない。ここは他に二人は欲しいかも知れない」
「それじゃあ集落長に備えて俺が控える。残りの三人は協力して目前の二体を始末しろ」
「師匠の判断なら従うわ! ここで祓えば良いのよね?」
「指図されることは好みじゃない。けど、状況を踏まえて判断が下されたなら従わないこともないでしょ? 行くわよ!」
そこで壮絶な一戦が幕を開ける予感が窺える。相手は従わせている妖怪を大幅に呪術で強化して戦わせることで自身は安全地帯に残れる戦闘スタイルが見た時に分かるポジションを決めて来た。そんな中で召喚した媒体で勝利を目指すために必須とも言われる点はどれだけ術師が叩かれないかが問題として掲げられる。早いうちに一掃したい場合は召喚された媒体を操作する側の本体を倒せば簡単に勝利が収められる。そこを考慮した上で召喚術を取り入れる術師は交戦する形で挑んで来る。しかし、本体に攻撃が及ばせない手段が存在する。それは絶対防御の要でもある結界術を常に張り巡らせることだった。これがセットで扱える術師は遠隔操作の際に伴うリスクを軽減させられるのであった。
「本体が結界で守られている以上は妖怪を先に片付ける必要性がある。あまり本体を意識しないで一気に妖怪の始末を優先する形で行くぞ!」
「二体を同時に相手するなら私と電斗が可能でしょ? けど、両方の一斉攻撃は一人で担う作戦が有効だと思う。ここは私が上空で二人に直撃しないように攻撃するわ」
「それで良いわ。取り敢えず妖怪を倒すことに集中しよう」
そんな風に私たちは作戦会議を簡単に終わらせる。その後で交戦に集中する姿勢を見せて行くと相手が攻撃を開始した。
二体の妖怪は手始めに私と電斗を襲撃して来る。やはり、上空の相手だと届かない点を踏まえて攻撃が当たる方から先に倒すのだろう。私の下に向かって来た妖怪は妖刀を振るって攻撃する。妖刀なら私の護霊刀で対抗して弾いた後の後退を見計らって追加の攻撃を下す。私は即座に妖刀の握られた手を斬り落とすために振り下ろされた。しかし、素早い回避で逃れた妖怪が口から炎を吐き出した。燃やされないためにも咄嗟の回避が成功して直撃はしなかった。けど、妖怪の猛攻は収まることを知らない。
(相手の攻撃手段は妖刀での斬撃以外にも炎のブレスがある点は警戒するしかない。けど、相手がターゲットにしているのは私と電斗ぐらいなら後は双羽の一撃を的中させて行くのが良いだろう!)
「双羽ぁ! いけぇぇぇえええ!」
「行くよぉ! 特大火力でお見舞いするぜぇ!」
上空で凄まじい火力で槍が形成される。それも十本の槍を一度に形成して二体の妖怪を目掛けて放たれる。炎の槍は五本ずつ妖怪に向けて直撃した。
「「ギャァァァアアア!?」」
炎で燃やされた妖怪たちは一斉に悲鳴を上げて混乱が巻き起こる。そこをすかさず私と電斗でトドメを刺す段階に入る。私は【天牙一閃】の態勢を作って踏み込むと同時に間合いを迅速に詰めて斬り付ける。そこで狙いを定めた先は一撃で終わらせるために首を正確に斬り払った。
「はぁっ!」
すぱっ!
妖怪の首が撥ねて宙に舞う光景を晒す。これで一体目の撃破は完了して残る方は同じタイミングで電斗が片付けた。
高圧電流を球体の形状に収束させることで強大すぎる塊が出来上がる。その電気の塊を燃やされて動けない妖怪を標的に定められた瞬間に解き放たれる。
「これで終わりだぁぁぁあああ!」
収束された電力が一気に残った妖怪に直撃して弾けた。それは電気の威力が最終的に妖怪を肉片に変えて消滅する。
この時点で私たち三人はもう戦えない状態に陥る。後に残る標的は集落長だけとなった。最終戦を余儀なくされた集落長は少し驚愕したような表情で見ていたが、そんな様子はすぐに取り払われることになる。
一方で妖怪が倒された二人の術師はかなり焦っている。何故なら呪術を施した妖怪が倒されてしまったことが大きく自身の代償として運命は死を辿らせた。
「「そ、そんなぁ——!?」」
ぶしゃっ!?
召喚して戦わせた二人は行使した呪術の影響で強化させたことで妖怪が死んでしまうと自身にも同じように返って来る縛りを結んでいたのが不運を招いた。二人の肉体が粉砕して血が飛び散った。辺りは血痕が飛び散って赤く染まった。近くにいた集落長は返り血を浴びて絶望する中で私たちよりも前に楽典さんが立ちはだかる。
「今度は一対一で決着を付けよう。それでも構わないかな?」
楽典さんは笑いながら集落長と対峙した。




