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天命の巫女  作者: 紅薔薇棘丸
第二章「囚われた少年の解放」
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第12話「苦心を強いる再戦」

「久し振りですね? こんなところで会えるなんて運命は残酷だと思います」


 彼は私を見た瞬間にそんな一言を送って来た。そいつの存在は私に大きく動揺を誘って疑問を抱かせる。


「ふ、ふざけんな! 何で私と交わした約束を破ってるのよ! 殺されたくて破ったの‼」

「そんな訳じゃありませんよ。これも集落長の意向です。ここで訪れた奴らを殺すように命じられているんですよね。生きて行くために必要だと思って現状があります」

「だったら殺すしかないじゃん! 私が生かした理由は何だったんだよ!」

「申し訳ないです。しかし、私も生き抜くための使命だと思って再び現状があります。もし、再び負けた時は潔く死んでも良いでしょう」

「後悔するなよ! これでお終いだからね!」


 そうやって私は護霊刀を握った。護霊刀の剣先を相手に向けながら構えると深く息を吸った吐いた。そして男の背後に位置した獣が前線に立たされた。こいつは長野県で相手した猛獣使いだった。あの時に斬り落とした腕は何かしらの手段を使って再生している。きっと魔力が感じられる点から察するに魔術で腕を作り出したのだと予測が浮かべられる。

 さらに今度は以前よりも巨体を誇った狼が牙を剥く。いつでも私を殺すための気迫を放っているが、私は少しの動揺も見せる様子は窺わせなった。実際に狼は凄い獰猛で人を殺害することに躊躇しないような態度が取られる。そこで今度は殺して置く以外に対処法は見付からない時点で楽典さんが言っていた話を思い出す。あの話は本当に正しかった。それを無視して生かしたばかりに再戦を強いられるとは思ってもみない展開だった。しかし、それでも私は向かって行く意思を見せた。


「次はないわ。二度目はさすがに難しいのよね」

「構いません。私も人生の掛かった一戦だと聞かされて受けたんです。以前まで所属していた魔術教団を抜けて彷徨った挙句に辿り着いた先で生かしてもらった恩を返さないなんて出来ないんですよ! 覚悟してください!」

「良いわよ! もう後に退けないんだから!」


 私が斬り掛かって行く前に今度は相手から名乗り上げた。それを知った時から違った進路があったはずだと内心で抱いた思いは不快だった。これ以上にない怒りと悲しみが募って名乗った名前の重要性などは持てなかった。しかし、生涯を懸けて忘れるつもりはない。何故なら彼は自身では解けない呪印を刻まれているからである。


 ここで出て来た【呪印】とは、呪術を使用した時に生物の肉体が刻んで置かれる紋章を指す。これを一度でも刻印された生物は正常に身体が動かせない状態か普段の生活に支障が生じるなどの症状を見せる。

 本来は呪術師の撲滅を進めているが故に禁忌の異術としても取り上げられるぐらいの効力を秘めていた。呪術は生物の生命を弄ぶことに特化した【呪われた異術】と呼称されて嫌悪の意を向けられた存在で有名を極めた。

 まさにそれが露出した右手の甲に刻印されている点に気付いた。つまり、彼は呪術を行使されて精神状態を乗っ取られている状況下に陥っていることが窺える。呪術が扱われてしまった場合は、もはや最悪の事態しかもたらされないことは両親は熱心に使わせないつもりで語ってくれた。だから、そんな異術に脅かされる未来は避けて来た。しかし、ここで私の思い掛けない人に使われて黙って見過ごせる訳がなかった。これも全ては集落長が仕向けた話なら殺す他に選択肢はないと決心を素早く抱かせた。


「さぁ、始めましょう。私の名前はタケルです。いわゆる私の魔術は【猛獣改変】と呼ばれてます。これは通常の動物を巨体化させると同時に筋力の増強を施して操る異術です。特に改変される前よりも獰猛な性格に変わって身体能力にも大きく影響が及ぼされるために何千匹と言う群れを扱えば相当の戦力が得られると聞いています。以前は何千匹と言う群れを率いて世界征服を企んでいたが二人の霊術師の手で全てを失ったのです。その二人は絶妙なコンビネーションと個人の持つ実力で猛獣を蹴散らして回った目障りな奴でした。名を清原智成と清原璃幸なんて名乗っていた連中でしたね?」

「はっ!? お父さんとお母さんが倒したの⁉ まさか二番目に被害規模の広かった一件はお前が仕向けた奴だったのか⁉」

「詳しい話は知りません。記憶が縛られて思い出せる情報が乏しいんです。しかし、それでも良いと思っています。以前よりも強化されたことで復讐が果たせると期待しているんですからね! では、手始めに貴方を殺しておきましょう!」

「来なさい! 絶対に助けるわ!」

「無理だ! そこは確実に息の根を止めろ!」

「——え?」


 そこで楽典さんの一言が私に届く。それは私の行動を静止させる。すると、即座にタケルが猛獣に指示を出して襲わせる。


「ガォォォオオオ!」

「なっ⁉」


 すぐに向かって来た猛獣が爪で切り裂こうとする。その爪は私の護霊刀で受けて押し返した。猛獣は後退してから後ろ足で踏ん張って蹴り飛ばした勢いで突進する。再び爪が私を裂きに来る瞬間を捉えて護霊刀を振るった。それは猛獣の腕が斬り落とせる位置まで避けて護霊刀の刃で前足を払った。見事に切断された前足の付け根から血が噴き出して猛獣が嘆く。巧みに反応して動けるように修行を積んでいた経験が咄嗟の展開で特に有効打を決める一手になった。


(取り敢えず猛獣の相手は何とかなる。けど、肝心のタケルはどうして良いか分からない。私が殺さないと駄目なんて楽典さんは容赦ない一言にもほどがある)


「珠美! まずは猛獣を撃破してからタケルにトドメの一撃を決めろ!」

「その判断は私の前に立ち塞がって来たから始末は仕方がないと言うの? タケルは呪術で操られて対峙しただけの無害に収められる人間だよ! 助けてあげても良いじゃん!」

「それは違うぞ! 呪術は一度でも使われてしまうと呪術師本人を叩かない限りは効果を破れない! つまり、そんな余裕が俺たちにないんだよ! 分かってくれ!」

「え……? そんなことが本当にあるの……? う、嘘だぁ⁉」

  私は思わず叫び声を上げた。私の内心は呪術と言う残酷すぎる手段を使用した相手を恨んでいた。それを施したからには殺してやる他に償わせようがないのである。しかし、実際に償わせたいと思う気持ちは少なからず被害を受けたタケルを殺した後になる。それが私の心情を大きく失望させる。


(殺さないと……いけない……?)


 そこで私は考え込んでしまった瞬間に身体が震え上がる。その震えた状態は以前の一戦で敗北した後に見せた反省して今後は危害を加えない約束の果てに生きた人間の終焉を私が誘導する必要性に絶望が内心を染める。こんなにもやり直せるような人間を殺すなんて行為が強制される現場に私は冷静を保てなかった。それが一目で窺えたタケルは使えなくなった猛獣よりも前に出ると【凶黒砕牙】が彼の手に渡った。すでに戦えない状態に陥った猛獣はいらないかのように距離を縮める。そこで残る数歩で届いても過言じゃない距離で魔剣を構えた。


「来てくださいよ? 私が殺してあげたいんですよね?」

「た、タケル……⁉」

「さぁ、死んでください!」

「——はっ!?」


 タケルの魔剣が振り上げられて頭上から降って来る。その刃が頭の上に落ちて来た時は割れてしまう可能性を秘めている。しかし、そんな行為が下される前に生きたい気持ちの実現を迎えるまで何度も繰り返して交戦する意思が自然と魔剣を受け止めた。それは右手に握られた護霊刀が凶黒砕河の衝突が起きる。そこは普段の意思が揺らいでしまう理由を作る私は恐怖で支配された。けど、向かって来た攻撃に素直が見せているような抵抗を施した。きっと死にたいと思っている訳じゃないと自分でも分かっていた。こんあところで死んで良いなんて思っていないんだって思いが抵抗に及べた理由だった。

 しかし、現実は残酷である。呪術の使用で操られたタケルを殺して先に前進するなんて出来るはずがなかった。タケルの攻撃に凄まじい悪意が感じられるのも呪術が仕向けているからだとするなら内心で助けを求めていたかも知れない。救済が敵わないなんてもう嫌だった。だけど、仕方のない話はどうっても変えられないのが現実だって目前のタケルが見せる悪意で思い知らされたような気がした。


「殺したくないよぉ……。もう大事な人が死んで行く姿なんて見たくないんだからさぁ⁉」

「殺せないなら好都合ですね! 気が変わらないうちに殺させてもらいますよ!」

「お願いだから止めてぇ!」


 そうやって交戦に決着が付かない状態で時間だけが過ぎる。時間に制限がないことが幸いだったけど、殺したくないから勝利が収められないでは話にならなかった。そこで楽典さんが一言だけ呼び掛ける。


「良いから殺してしまえ! お前の気持ちは分からなくもない! けど、お前が死んでそいつが助かっても呪術は解けないんだよ! 早く楽にしてあげることが救いかも知れないだろ!」

「こ、殺すことで救いになる……? そんな結末が本当に正しいの?」


 徐々に攻撃が激しくなって防いでばかりいる状態が厳しい状況に追い込まれて行く。これでは不幸にも致命傷を負って死に至る理由を作ってしまう展開に持ち込まれた場合は私たちの希望は失われるだろう。


(仕方がないと高を括って殺すのかぁ……。これが現実なんだね?)


 そんなことを思った瞬間に私は消耗されて行く体力を実感しながら受け堪えた現状に終止符を打つ。これ以上の攻撃を受けたとしても何も変わらないことが言える状況下で自分の気持ちだけを優先する行為は正直に言えば迷惑だと思う。それを踏まえた上でどうすることも出来ない現状をいつまでも引きずる意味なんてあるはずもなかった。


8もうしょうがないことなんだよね? タケルには悪いけど、私も脱出しないと行けないんだよぉ。だから、見捨てるしかなくてごめんなさい)


 そうやって内心で謝罪を念じてから次に来た攻撃で様子が一変した。タケルの攻撃は私の思った末路を辿るように受けられて強く押し返された一瞬で少し後退した矢先に素早い反撃が向けられる。そこで私が向けた殺意はタケルにも大きく動揺を起こさせて異変に気付いた瞬間が対抗する姿勢を作り出す動作に変える行動を見せる。しかし、すでに私は次の攻撃からどんな対処で向かって行くか瞬時に定めた後だった。そして巧みに回転しながら相手の空いた手首を斬った。見事に斬り落とされた手が握った魔剣を思わず離してしまう。この時は急に生じた痛みと手から離れた魔剣の行方が分からない中で私が即座に喉を突き刺してトドメが刺される。そんな一瞬の出来事が思考に追えないだけの速度が施された。さらにタケルは意識が掠れて一瞬で起きたことが分からない状態で視界を閉ざす。タケルが後ろから床に倒れた瞬間に私の視線が死を辿った彼の最後を見届ける。


「これで良いんだよね?」


 そこで私が小さい声で呟いた時に三人が驚愕して駆け付けて来る。この状況は私の決断が大きく勝利に繋がった点で称賛の声が上がった。しかし、どんな称賛でも私は微塵も嬉しいと思わなかった。それ以上に結局は殺してしまった事実が涙を流させる。そして私の涙が流れたことに気付いた三人は大声で泣き叫ぶ私を励ました。その決死の覚悟が辿った未来は脱出の糸口を示した。だから、私も殺したことを後悔してない。だって私の人生はタケルの分まで生きると言う決意を抱いた上で殺す選択を下したのである。この結果に決して意義はないと心に言い聞かせた。


「どうやら無事に縛りは消えたよ。これで俺も霊術が扱える。後は最下層に囚われた少年の救出で最後になる。協力してくれるか?」

「これ以上の犠牲が払われないなら考えても良い」

「きっと大丈夫だろう。そんなに重ねて不幸が訪れる訳がないだろ? だから、後は残った目的を達成させるだけで助かる」

「私は分かったけど、残りの二人が賛成するかは知らない。自分たちだけでも先に逃げることも不可能ではないんじゃないの?」

「俺は少なからず行きたい。実際に少年の秘密が知りたい気持ちもあるんだ。そこで向かう途中の道のりで教えて欲しい」

「別に構わないよ。後は珠美だけが残っているんだがな? どうするんだ?」

「もちろん行くわよ。私だけ監獄から脱出しても根本的に元の次元に戻る「手段がないじゃん」

「確かに」

「それじゃあ決まるだな? 全員で少年を救出するぞ!」


 こうして無事に三戦目の勝利を収めた。やはり、凄い悲しい結末が待ち受けていたこともあったが、実際に楽典さんの霊術が機能を取り戻した。後に必要となる行動は少年が救出されてから楽典さんに従って帰るだけだった。

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