第10話「本来の目的と真相」
私は他の三人と一緒に例の少年が囚われている監獄まで案内を受けていた。実際に少年を見た方が呪いはどんな感じで機能しているのか識別することが出来ると楽典さんは言っていたから一緒に来た。取り敢えず呪いを解くまでは手伝って欲しいと言われたので、私たちは同行を了承する必要性があった。ここで少年と接触することで呪いの解除方法が分かるかも知れないと言う点が私たちの同行意義となるなら行かない手はない。しかし、実際はそれ以前に張られた罠に乗り込んで行くような誘導に引っ掛かった結果を楽典さんが知らせる。
「申し訳ない。そこまで嫌だったかな?」
「ぐわぁぁぁあああ⁉ 師匠のせいで危ない場所に来てしまったぁぁぁあああ!? こんな場所に囚われるぐらいなら付いて来なきゃ良かったぁぁぁあああ!?」
「よし、今から別行動で行くしかないか?」
「ふざけんなぁ! 殺すつもりかぁぁぁあああ!!」
そこで楽典さんが詳しい事情を聞かせてくれる。私たちの入った場所は罪人を収監するための監獄だと再び説明があった。しかし、そこに来た理由が私たちの考えていた内容と一致しない点だった。
「え? 私たちは誘導されたんですか?」
「そうなるんだ。いやぁ、申し訳ないとは思っているが、君たちなら乗り越えられると信じて選んだ人材だ。それに攻略する糸口は掴めている」
「しかし、何で易々と私たちを誘導したの? そんな時こそ異術は行使するべきでしょ!」
「分かっている。しかし、この集落を見付けた時に包囲されて蹴散らしたは良いが、一週間の交戦が続いても相手は尽きなかった。そこで俺から交渉を持ち掛けて代わりに呪術を使った縛りを結んだんだ」
「し、縛りって何? そんなに逆らえないぐらいの効力があるの?」
「もちろん。これは主に約束を果たさせるための呪術技法と呼ばれている。かつて世界中が武力で国を治めていた時代に使われた呪術だ。これを破った人間はどんな奴でも死を辿る恐ろしい異術になる。それを結ばされたからには逆らう訳にいかないんだよ」
そこで楽典さんが本当の理由を打ち明けると向かうと交渉で交わした条件の説明に入った。それは日頃の鍛錬が鍵を握るような内容だった。
「え? つまり、この監獄の地下で向こう側に着く刺客が三人は待ち構えているの?」
「あぁ。その三人を俺以外が撃破することで俺が結んだ縛りが解けるって仕組みになる。それまでは俺も異術が使えないから後は君たちに任せるつもりで連れて来た。ま、少年の殺害は目的じゃない。それ以上に少年は助けるつもりで集落を訪れて現状に至るんだよね?」
「少年が目的だと? それは本当なのか?」
「もちろん。その少年こそが集落を収めるための空間を形成した当人だからね? それが複雑な理由が重なって村人から囚われる形を辿ったようなんだ。そこで訪ねた時に交渉する他に手段を選べない状況に追い込まれたと言う話だよ。非常に面倒だよな?」
(今回は善意で自らを犠牲にしたんだ? そんなことが楽典さんでもできるなんて思わなかった)
その話を聞いた時に私たちの反応は少し意外に思っていた。何故なら事情を偽ってまで助けたい人物がいたことで起きた一件だと告げられた時から異術を全く使わないで長い間は過ごした点に呆気を取られたのだ。しかし、それを私たちが非難することはなかった。とにかく今は脱出するために刺客を一人ずつが相手して倒す必要性があると言う話を背負わされている現状に置かれていたことが分かった時点で村人は敵視を避けられない存在となった。
ここで私たちは復讐を果たすつもりで刺客に挑戦する意思を持った。それを勝利することで見せ付けたいと心から思えた時の闘志は貴重な経験とも言えた。これから迎える一戦に備えて私は気合を入れて目的地まで歩みを進めた。
「この階段を降りて地下に行く。その先に刺客が待ち受けていると聞いた。それは絶対に守られないと向こうが死んでしまうのが縛りの効果になる。つまり、お互いにデメリットが生じるから使う時は要注意が必要だよ?」
「なるほど。勉強になったな」
私たちは取り敢えず最初に戦う人を決めながら先を目指した。そこで初戦から戦ってくれると名乗り出たのは双羽だった。初戦で勝利を収めて楽したいと言う理由で決めたらしい。しかし、必ず勝利すると断言して初戦を一任された。
「これまでの修行は全く見れていなかったが、ちゃんと鍛えていたのか? 今回の一件は生還しても二度目があるかも知れない。だから、俺たちは強くなる必要性が求められる。それは教えた通りだろ?」
「うん。さすがにこんな形で成果を示す時が来るとは思っても見なかった。けど、勝利しないと生還できないならやるしかないね!」
「頑張って勝利しようね!」
「俺たちの人生が掛かっている。洒落にならない死はごめんだ」
「分かっているだろうけど、君たちを選抜した理由は見込みがあるからだよ。だから、絶対に脱出しよう。俺も縛りから解放されたなら後は余裕だから任せなさい」
「はい! そこまでは私たちが何とかしてみたせます!」
「俺にも出来ることがあるならやるしかないでしょ。ここは日頃の成果を出し切るところだ!」
「私の力で乗り切れる話ならやりましょう。今回は正当で確かな理由で助かったんだよね!」
そんな感じで私たちの意志は繋がった。今は立ち塞がる刺客を指定された人数だけ倒して少年の救出が完了すれば脱出は可能だった。そこで私たちが意識することは一人でも敗北が許されない点である。この場で敗北を許してしまうと出られなくて餓死するしかない状況下に追い込まれる。さらに縛りで異術が使えない楽典さんが戦略にならない分は残りの二人で生還を目指す必要性を有する。しかし、敗北する時は一人が殺されている状態で残った二人が纏めて相手して倒すことが絶対条件だと思われる。つまり、全員が責任を背負って一戦に臨まないと脱出は不可能に終わるかも知れないと言うことだった。
そして階段を降りた時に開いた扉の向こうに踏み入った先は古い戦士を真似て作られた銅像が立っていた。そこでや楽典さんが説明を加える。
その銅像はこれまで歴史に名を残した集落の人間を強調して作られたらしい。それが今度の私たちに不安を抱かせているな? しかし、唯一無二の存在が場を明るくして勝利を目指す道のりを進んで行く。
「誰かいないのな? 最初は私が相手するよ?」
「良く現れたな? その勇気だけは讃えてやろう!」
そこで出現したのは一人の男だった。そいつは全身を武装した状態で私たちの前に立つ。そして腰に下げた剣を鞘から抜いて構えた。その男を見た時に電斗が代わりに出ようとする。それは武器を相手する危険性を考慮した上で一歩を踏み出したのである。しかし、それを双羽は引き留めて進み出る。
「私がやる。武器を携えている相手は他にもいるかも知れない。それなら私の出番は初戦が良い」
「そこまで言うなら良いが、俺たちの人生を背負っていることを忘れるなよ?」
「それはお互い様だよ。この先は任せたからね?」
そして双羽が初戦の相手と向き合った状態を作る。彼は剣を構えていつでも来ても問題はないと吐き捨てる。
「来いよ? どこからでも来るが良いさ! しかし、お前の死は確定している!」
「普段から鍛え上げて来た肉体と異術を同時に解放する時が来たようね? それじゃあ始めようか!」
双羽が青い炎で翼を形成した。それは燃え盛る炎が収束して翼の形状を整える感覚を使って相手に挑発を施す。
「所詮は村人の分際で調子に乗るなよ? こっちは現代でも唯一の霊媒師を継いで来た家系に生まれたんだよね? そこで世間に知られていない監獄の地下で殺されるなんてごめんなんだよ! 私は全力でお前たちを倒す!」
「けっ! 外の連中は虫の良い話ばかりして馴れ合いが死を覚悟する場面に駆り出されるんだよなぁ? そんな貴様の下等生物としての秩序が気に入らねぇんだよ!」
「態度がデカくて参るわ!」
双羽は翼から燃え盛っている炎で槍を形成して一気に放つ。それを意とも簡単に避けて距離を縮めて来る相手を前に翼の炎が広範囲に放出される。
「フレイムウェーブ!」
「何っ⁉」
炎は波が立つように広範囲で相手を捉えて直撃する。そこから接近を試みた双羽は燃やされて藻掻いている相手の懐まで潜り込んで炎を纏った拳で殴った。
「うぉっ!」
「ぶはっ!?」
真っ先に攻撃を決めた双羽は大きく後ろに吹っ飛ばして相手が銅像に突っ込ん行った。これで直撃した衝撃と炎の殴打が腹部に決められた。この一撃は修行で練習して来た一連の動作だと言える。私が一緒に連撃を決められるように放った殴打は強力で凄まじい威力を誇った。
「凄い威力の殴打だね? さすがに鍛え上げた筋力が全力を底上げしているような瞬間だったな?」
「どうよ? 師匠がいなかった時でも電斗と珠美ちゃんが手伝って良い手順を決めて見せたわ!」
「前を見ろ! 相手は未だに倒れていない! 常に集中して最後まで気を抜くんじゃない!」
「分かった!」
そうやって電斗が発した言葉にちゃんと応える姿勢を見せる。この場で負ける訳にいかない一戦を確実に勝利することだけを考えて双羽は相手に次の攻撃を仕掛けた。
「これで決めてやるわ!」
翼の炎が頭上に収束を始めて大きな球体が出来た。これは最近になって練習して来た大技だと思われる。巨大な球体を作り上げるために炎の収束が限りなく集まって強大な火力が生み出される。そして吹っ飛ばされた相手の身体が焼き尽くされて例えやけ死んでしまっても構わない一心で解き放った。
「いっけぇぇぇえええ‼」
炎で作り上げた球体が相手を焼き尽くそうと迫って行く。それに気付いた相手は驚愕して命乞いを求める声を上げようとするが、すでに炎が直撃した瞬間に焼けてなくなるところを目前に見届けた。
「ぐぁぁぁあああ⁉」
見事に相手は焼却された。それを受けた肉体は全て焼けて骨だけが残って消えた。この一戦は双羽のもたらした圧勝で終わりを告げた。
やはり、事前に修行を積んで来た甲斐があったと言える瞬間を噛み締めた。
「やった……?」
「大丈夫だ。あの骨は本物で間違いない」
「これで一勝目になるな? しかし、残る二勝が必須なんだ。気を引き締めて行こうか?」
そんな感じで私たちは焼却させられた相手の断末魔が響く前に倒すことが出来た。そして奥の扉が自動で開いた。きっと開けてもらった扉の先に待ち受ける相手は次の部屋で私たちの到着を期待しているに違いない。そこで次は電斗が刺客に挑戦する意思を見せた。それは勝利する以外に目指す点はないと言った気迫で階段を降りて行く。普段から修行に対する姿勢は誰にも負けないぐらいの意識を持って励んでいるところが窺える点が今回の期待を大きく持たせてくれる存在感を出していた。
「きっと勝利して見せる。例え俺が立てなくなって動けない状況に陥っても、それを迎える前に決着を付ける。この際は魔力が尽きても構わない。絶対に俺は勝利を収めてやる……!」
「頑張ってくれよ? 俺たちは全員で命を背負っているんだからさ」
「分かり切った話だ。この大事な状況で心配させないだけの余裕を持って勝利したい」
「期待して見ているからね?」
「早く蹴散らして脱出だぁ~!」
そんな感じで私たちは次の部屋を目指した。そこまでは大して時間が経過することもなくて扉が見えたところで電斗は立ち止まる。そこで深呼吸をしてから扉に手を伸ばした。




