忘れ去られた1つの星
湯気がたっている....
昨日は、申し訳なかったな....
私と母は昨日喧嘩をしてしまった。
だから、今日の朝ごはんは用意してもらえるなんて思ってなかったし、まさか出来立てを出してもらえるとは、予想外である。
返事こそしなかったが、こういうところで優しさがでる母はやっぱり喧嘩に向いていないのだろうなと常々思う。
普段私と母はとても仲が良く、今までの17年間喧嘩をした回数など片手で数えられるほどと言ってもいいくらいだ。それに母が誰かと喧嘩している姿など見たことがない。
そのせいで子供との、いや
人と喧嘩することに慣れていない。
慣れていない、というのもおかしな話だが、母は相手の意見に合わせることが多い。
だから誰かと意見が違い口論になったりすることは全くと言っていいほどない。
ただ....誰かに迷惑をかけるときだけは、どんなに温厚な母でも頭に角が生えたのではないかというくらいに怒る、
大袈裟な表現にはなるかもしれないが、怖い話を聞いてその日の夢に出てくる、それくらいの恐ろしさはあるのだ。
そんなことを考えながら、椅子に座る。
「いただきます」
今日の朝ごはんは......エビチリだ。
いつもなら母と話しながら、食べるのだが、返事はしてくれなさそうなので、黙々と食べ進めていく。
「ごちそうさま」
そう言いながら、お皿をシンクの下にそっと置く。
ジャーーっと水道水に浸けたあと、通学バックに教科書を詰め込んでいく。
時間がない!!と焦りながら、櫛で髪をとかし、制服も少しヨレヨレになってしまったが、なんとか時間に間に合った。
「いってきます」
通学靴のつま先をトントンとしながら、玄関のドアを開ける。
今日は、想像してたよりも暑くなかったな、よかった。
今日は校庭で体育をしなければいけなかったから、暑かった場合かなり困る。
少し気分が良くなり、ステップ気味に歩いていく、学校に着くと
友達である"リブラ"がちょうど下駄箱で履き替えているところだった。
リブラが私に気づき、手を振りながらこっちに近づいてくる。
「おはよー!」
「おはよ!」
リブラは、私の幼馴染でとても仲が良い友達だ。
2人で一緒に週末の出来事を話しながら、教室に向かう。
教室に着くと"アクア"がいた。
「やほやほ!」
スマホを見ていたアクアに話しかけると、いつもより機嫌が良さそうな声で返事が返ってきた。
「なんか機嫌いいね!なんか良いことでもあった?」
通学バックを机の横にかけながら、話しかける。
「んーとね、この前新しく販売された小説が意外と面白くて!最近は結構つまらないのばっかり当たってたから....だから面白いのに当たってめちゃ嬉しいんよ!」
とても明るい声で話してるところを見ると本当に面白かったんだろうな、と思わず笑みが溢れる。
「なんの小説?」
リブラも読書が趣味なので、とても興味津々だ。
すると、頭の上に何かズシッと重いものが乗っかる。
「なんの話してんだ〜?」
その声の主は"ゲミニ"だ。頭の上に乗っかっているのは.....おそらくこいつの腕なんだろう。
すぐに腕を払い、その瞬間腹に1発入れてやろうかと迷ったが、足を踏むことで許すことにした。
「いってぇ!?」
ふんっと言いながら、痛がってるゲミニから、リブラとアクアの方に向き直す。
しかし今度はなんだ。後ろで気配を感じる......これは....
スッと後ろを向きながら
「"スコル"、背後に立つのはやめてくれない?」
「.......ごめん」
「......これ.....先生から....渡せって.....あと.....ゲミニが......ごめん」
コミュニケーション能力がとても高いゲミニと、こんなにも大人しいスコルの2人が仲が良い姿というのはいつ見ても不思議なものだ。
かなり慣れたが、この教室は変人が多すぎるな。
そんなことを考えているとチャイムが鳴る。
おっと、すぐに自分の席に座り、担任を待つ。
今日も騒がしい1日になるんだろうな、と頬杖をつきながら窓の外を眺める。
そして今日の授業が全て終わり、下校時間になる。
「リブラ〜!アクア〜!一緒に帰ろ〜!」
「もちろん!」
「ええよー!」
そしてアクアとリブラと別れるまでの間、小説の話だったり、今日のゲミニの怒りだったりといろいろな話で盛り上がる。
「それじゃあ、また明日!」
「バイバイ〜!」
「じゃーな!」
とことこ、とゆっくり歩きながら、
「今日は楽しかったな〜」
と、ルンルン気分で歩いていく。