2028年2月12日 米下院特別安全保障委員会・非公開ブリーフィング 機密分類:視聴限定/再配布不可
これは2028年2月12日、ワシントンD.C.にて実施された米下院特別安全保障委員会・非公開ブリーフィングにおいて、元・米軍民間協力者でありSilent Egress作戦対象者のひとり、リア・トンプソン(当時33歳)が行った証言の抜粋である。この証言は、正式議事録には記載されず、“機密分類:視聴限定/再配布不可”としてアーカイブされている。内容は、作戦中に失われた協力者「燕(Swallow)」の記憶、および戦術的・倫理的観点からの反省を含んでいる。
【証言者:リア・トンプソン/元・国防分析契約研究員】
「私は、42人目ではなかった。私は“連れて行かれる側”であって、“見送る側”ではなかった。だがあの夜、誰よりも“置き去りにされた”という感覚を、心の底に刻み込まれた人間の名前を、私は今も忘れていない。彼の名は……“燕(Swallow)”。私が生きて帰れたのは、彼が“残った”からだった。」
【証言内容・抜粋】
「2027年3月20日夜、台北市西部の旧工業区地下に設けられた退避ポイントにて、私と他3名の脱出対象者は、“燕”が事前に構築していた地下回路を経由し、RAVENチームのVTOL離脱ゾーンまで移送された。
彼は最後のチェックポイントで私の手を取ってこう言った。
“君の名前はこの後、記録される。君の協力も、技術も。
でも、君が歩いたこのルートは、僕がここで消えることで初めて“公式になる”。”
その言葉の意味が、すぐには理解できなかった。だが、彼があの夜、デバイスを一つ一つ手で物理破壊していた姿が、今も焼きついている。“すべての痕跡を消すために、自分ごと消える”という行動。それが、Silent Egressにおける“最も音を立てなかった犠牲”だった。」
「米国は、私たちを救ってくれた。だが私は問いたい。“彼のような人間を、記録無きままにしていいのか?”と。彼が遺した最後の言葉はこうだった。
“記録は残さなくていい。ただ、お前が覚えてろ。俺の代わりに。”
だから私はここに立っている。この場が議会の非公開ブリーフィングであれ、たった一人の委員が耳を傾けるだけであれ、彼の存在を“国家に記録させる”ことが、私に託された役割だった。」
【終了後、委員会備考欄メモ(抜粋)】
「証言者は明らかにPTSD傾向を示すも、発言は一貫性・整合性あり」
「“燕”と呼ばれるNOCの存在については、作戦報告書の『第三国現地協力者』記述と一致」
「正式記録には残せないが、将来的な名誉回復または内部表彰対象として再審議可能性あり」




