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慕情  作者: yukko
令和
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初春の慶事

年が明けて2025年1月4日に香澄は正樹夫婦と会いました。

正樹の妻・結衣のお腹は大きくなっています。

香澄は「羨ましい。」と思いました。


「香澄さん、明けましておめでとうございます。」

「明けましておめでとうございます。それから……

 ご懐妊、おめでとうございます。」

「嫌だぁ~ ご懐妊って……やんごとない一族みたいじゃないの。

 違うのに…… ねぇ。あなた……。」

「全く違うよ。普通の、普通のサラリーマン一家です。」

「そんなぁ……御謙遜を!」

「まぁ、謙遜なんてしてないわよ。事実よ。事実。」

「兎に角、無事にご出産を! 初めてのお孫さんでしょう。

 正樹さんのご両親様にとって……。」

「うん。そうなんだ。僕の家はね。結衣のとこは初めてじゃないんだよ。」

「そうなんですか………。」

「ええ、兄が居るのでね。兄の所に昨年生まれたのよ。

 だから、2人目の孫なの。」

「まぁ、おめでた続きなんですね。……(あやか)らないと!」

「肖りたい?」

「そうですね。友達も皆、子育て中なので、いつか……そんな日が来たら

 ……………って思ったりすることもあるんですよ。」

「大和三山だけどね。」

「はい?」

「あれを……僕に教えてくれたのは、智樹なんだ。」

「そうなんですか………。」

「あいつね。何故だか……高校3年生になってから、歴史を勉強するようになった

 んだ。急にだったから不思議で覚えてるんだ。

 それで、世界史も日本史も詳しくなってね。特に日本史の飛鳥時代を調べてた

 よ。それも不思議だったから覚えててね。

 そしたら、大和三山の写真を撮って来てあげて欲しいって………香澄さんに。

 理由は教えて貰えなかったけど、まぁ行ってみたい所だったから、いいなと

 ………それで、写真を撮って香澄さんに送ったんだ。」

「………そうだったんですね。」

「うん。………香澄さん、あいつと……智樹となんかあった?」

「どうしてですか? どうして、そんなこと聞くんですか?」

「うん。なんだか……変なんだよね。ある日から……なんとなくだよ。

 なんとなく、そう思うんだ。」

「あのね。香澄さん、私たちからメッセージのやり取りとか……

 テレビ通話をしてて…なんとなく前と違ったように感じたのよ。」

「ごめんね。違うかもしれないけれど、もしかしたら、香澄さんとなんか…

 なんか、あったのかな?って勝手に思ったんだ。ごめんね。」

「私は先輩に命を助けられました。それはご存じですよね。」

「うん。知ってるよ。」

「そのくらいです。」

「そのくらい?」

「そのくらいしかお会いしていません。お会いしてないから分かりません。」

「そっか………ごめんね。変なこと聞いて………。」

「本当にごめんなさいね。まるで尋問みたいだったわね。ごめんなさい。」

「もう! 嫌ですよっ。そんなに深刻にならないでください。

 折角のお料理が美味しくなくなります。それに……

 折角のご懐妊のお祝いの席なのに!」

「そうだね。」

「先ずは美味しく頂きましょう。」

「はい! 美味しく頂きます。」


食事を終えて、正樹夫婦と別れ、迎えに来てくれた父の車に乗って帰宅しました。

帰宅して、部屋に入った香澄は壁に飾っている「大和三山」の写真を見て泣いてしまいました。

声を殺して泣きました。

何故だか分かりません。

正樹の妻の妊婦姿はショックでした。

傷つかないというほど癒えてはいませんでした。

でも、それだけではありませんでした。

智樹が変になった………それを聞いて香澄は思ったのです。


⦅先輩……私のせいですか?

 先輩……高校の頃の先輩に戻って! ……お願い……!⦆


と…………。

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