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慕情  作者: yukko
令和
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それぞれの暮らし

児童相談所での勤務にも慣れて、様々な子ども達にとってBESTは無理でも、せめてBETTERな選択を出来るように心がけて香澄は接しています。

ただ、児童相談所の範囲が広くて、その範囲の広さと人員が合っていません。

それが、一番の悩みであり、それが一番子ども達にとってのマイナス要因です。

精神的に疲れてしまうことも多々あって、そんな時は「大和三山」の写真を眺めています。


つい声に出して歌ってしまいました。


「♪ かぐぅや~まはぁ~ うねびをおしと 

  みみなしと あいあらそいきぃ~ ♪

 後は……覚えて無いわ……。あ~~あ。

 大和三山に行きたいなぁ。見に行きたいなぁ~。」


「大和三山」………それは正樹が京都に学会で行った時にわざわざ奈良県に行き撮って来てくれた山々の写真です。

季節ごとに写真を撮って来てくれたのです。

ただ、最初の「大和三山」だけが、正樹が撮って来てくれた写真でした。

後から送られてきた写真のうち、1つの季節は智樹が撮ったものだと後でしりました。

その2つの季節の「大和三山」以外の写真を撮ったのは正樹の妻・結衣だったのです。

それを知った時のショックは大きかったと今の香澄は思い出します。

あの失恋から、そんなに経っていないのに、もう何年も経ったような気もしますし、経っていないような気もするのです。


友人たちが結婚して子どもが生まれて……会えなくなっていくのです。

生活が違いすぎて……妊娠中は会えていたけれども、出産後は会いに行くのが悪いように思えるのです。

大変なのに友達と言っても来客であることには変わりないので、迷惑をかけたくない香澄は会いに行くのも連絡を取るのも控えるようになりました。

連絡を控えるようにすると、友達も「忙しいのに違いない。」と思ってくれたようで、なんとなくお互いを思い合った結果、疎遠になってしまったようです。

それは、香澄にとって寂しいことでした。

職場での人間関係では、古くからの友人のようにはいかないのです。

どうしても職場の雰囲気を壊したくないのです。

それで、香澄は職場の人と距離を少し置いています。

人が恋しいと思う時が香澄は増えてきました。


そんな日を過ごして、いくつかの季節が過ぎた頃に……正樹の妻からメッセージが届きました。


「香澄さん、御無沙汰しております。

 私たちの結婚の際には素敵なお祝いをして頂きました。

 頂いたデジタルフォトフレームは今も大活躍です。

 香澄さんはお元気ですか?

 今度、お会いしたいです。

 来年ですが、1月1日に日本に帰ります。一時帰国です。

 主人は直ぐにアフリカに戻りますが、私は出産を日本でします。

 その後の子育ても、日本でします。

 だから、仲良くしてくださいね!

 日本に帰って来てから、会う日を決めましょう。

 香澄さんに会うのが今から楽しみです。

 もう、会うって決めてますので、香澄さんに拒否権はありません。

 Roger?

 では、帰国したら連絡しますね。

 それまで……またね。」


正樹夫婦のご懐妊の報に驚きながら、「ご夫婦だもんね。いつかは……だったのよ。」と言い……胸が痛くなったのを香澄は無視しました。

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