飛鳥と今の令和
香澄は梅雨が嫌いです。
疎ましいのと、雷が怖いからです。
洗濯物は乾かない、何だかジメジメして気持ち悪い、蒸し暑くて体力を奪われていくetc.
枚挙に暇がないほど梅雨は嫌いです。
一番嫌いなのは雷です。怖くって仕方が無いのです。
梅雨空を見ていて、ふと思うのです。
⦅前の令和の私も、梅雨、嫌いだったのかなぁ?
飛鳥の私は嫌いだったな。……そう言えば……雄鹿が笑ってた。
雷が鳴って声を出して……あの年齢で…キャーッって……
そして、耳を塞いで……蹲って…… そりゃ笑うよね。
でも、先輩が雄鹿だったから……知ってたのかな?
前の令和の私も雷を怖かったこと……きっと、そうよね。
だから、雄鹿がプッて噴き出すように笑ったのよね。
すぐに真面目な顔になって、ほんの一瞬だったけど………。⦆
⦅アフリカ……梅雨無いよね。いいなぁ~
夫婦二人で医師として活躍されてて…凄いなぁ~
私には出来ないわ。
お似合いのご夫婦……ね…………。⦆
真帆からの嬉しい知らせがありました。
初めての妊娠です。
「気をつけてね。夏でも風邪あるからね。風邪ひいたら駄目だよ。」
「分かってるって!」
「我がまま言って、好き嫌いしちゃ駄目だよ。もうお母さんなんだから!」
「分かってるって!」
「それからね」
「香澄! stop!」
「うん?」
「煩いわよ。小姑みたい!!」
「ごめん。悪かったわ。……許してくれる?」
「今回だけ許す! もう二度と小姑にならないで!」
「うん。約束する。」
「ヨシ!………あ!…………そうだ!!」
「何?」
「紗奈先輩、結婚してたんだってさ。」
「してた?」
「うん。大学出て直ぐにご結婚~♡
だからね、田辺先輩とは高校3年生の春には終わってたんだってさ。」
「そうなの?」
「うん。ご本人から聞いたから、ね。」
「田辺先輩から?」
「違うわよ! 紗奈先輩から聞いたの。昨日、産婦人科で!」
「えっ? 紗奈先輩もご懐妊?」
「そう、二人目だってさ。」
「そうだったんだ。」
「だからね。田辺先輩はフリーだってさ。紗奈先輩から聞いちゃった。」
「そう……。」
「チャンスだよ。香澄!」
「なんで?」
「だって、先輩のこと好きだったじゃん。高校1年生からずっと……。」
「高校1年生からずっと?」
「うん。……やだ! 忘れたの? あの事故で忘れたの?」
「ごめん。なんか飛鳥時代の記憶の方が大きくて……。日に日に……ね。」
「ねぇ、飛鳥時代の人のこと好きでも……どうしようもないよ。
だって、時代が違うもん。もう二度と」
「止めて!………ごめん。真帆…。ごめんね。声を荒げて…お腹に触るかな?」
「お腹の子のこと……ありがとう。大丈夫よ。香澄の声くらいなんてことない。
……私こそ、ごめんね。香澄にとって大切な想い出なのに、分かってるのに
本当にごめんね。」
「ううん。ありがとう。心配してくれて、ありがとうね。」
「香澄………。」
真帆は香澄に誰か好きな人が、飛鳥ではない今に居て欲しいと思うのです。
先に結婚して子宝に恵まれて……香澄にも同じように…と思ってしまったのです。
いつか、いつの日にか、香澄の心を捉えて離さない男性がこの令和に現れて欲しいと真帆は思いました。




