医師になる夢
正樹が目指しているのは医師です。
正樹の祖母から亡くなった叔母の話を聞いてからです。
祖母は父の母親です。
父は今は一人っ子ですが、実は妹が居ました。
2歳下の妹が15歳で亡くなったのです。
病名は、白血病。
その頃は治療法が全くなかったと祖母は言いました。
その祖母が亡くなった叔母の名前でDMが届くと喜んだのだそうです。
「20歳の時だったわ。生きていたら20歳の成人式の前の夏だったと…
思うの。
来たのよ。お手紙が、振袖のね。買ってください!っていうお手紙。
生きていたら、こんなに綺麗な振袖が着られるんだなぁ~、って………
そう思って、見てたのね。
そしたら、生きているように扱って貰えたことが……嬉しかったの。
本当に嬉しかったのよ。
これ、ね。その時のお手紙なのよ。
ほら、ここ、見て。正樹君、智樹君。
お名前、あの子のお名前でしょう。
捨てられないの……捨てられないのよ。あの子のお名前が入ってるから…
生きて欲しかった。助かって欲しかった。
不治の病なんか、なくなればいいのに………。」
「おばあちゃん、僕、お医者様になる。」
「まぁ、智樹君、ありがとう。」
「僕もお医者さんになる。」
「まぁ、正樹君。ありがとう。」
「二人とも、本当にありがとう。」
祖母との会話を思い出す度に、正樹は智樹に言いました。
「おい、智樹、お前が先に医師になるって言ったくせに……
なんなんだ。お前は、サッカーばかりして!」
「だって、兄さんの方が賢いから…… 僕の学力じゃ無理でしょう!」
それが、流石に高校入学の寸前で勉学に励むようになり、智樹も図書館で勉強するようになったのです。
その図書館で智樹が運命の人と出逢ったことを正樹は知りませんでした。
15歳で白血病で亡くなった女の子は実在します。
私の知人の娘さんです。
生きていたら20歳の成人式の前にダイレクトメールが届きました。
振袖をお買い求めの…という内容で、様々な振袖をモデルが着ていました。
知人は「生きているみたいで嬉しい!」と言っていたことを私は母から聞きました。
それを、正樹の医師への夢になる動機として入れました。




