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慕情  作者: yukko
令和
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返信メッセージ

思い出そうとすると香澄は激しい頭痛に襲われます。

それは、「飛鳥時代」のことを思い出す時には起きません。

激しい痛みが起きるのは、必ず前世のもうひとつ前、前々世と言う言葉は無いと思いますが、漢字をあてるとしたら、その前々世しかありません。

前の令和の香澄のことを思い出そうとすると頭に激しい痛みが起きるのです。


香澄は智樹に教えて貰うしかないと思いましたが…………

祖母のことがあるので、前の令和の香澄の人生を智樹に聞くことなく日が過ぎていきました。

祖母は1月30日に逝きました。

地震の直後に転院してから、あまり長く居て貰えなかったのです。

両親も香澄も覚悟をしていました。

それでも、家族が逝ってしまったことは辛いのです。

ただ、地震で亡くなったり、事故で亡くなったら、家族も本人も覚悟など出来ないまま、その時を迎えます。

覚悟が出来て、看病も少ない日数でも出来て、それは幸せなことなのだと思いました。


葬儀が終わり、家族で帰宅しました。

父は「改めて田辺君にお礼をしないとな。」と、言いました。

母も同感のようでした。

両親から「田辺君に伺ってお礼をしたいから、日時を決めて貰うように連絡を!」と、言われたのです。

あれから全く連絡を取っていなかったので、香澄はどうすればいいのか分かりませんでした。

兎に角、お礼を親がしたいということだけは伝えないといけないと思いました。

そのまま、LINEで伝えました。


「田辺先輩、地震の際に助けて頂いたことを感謝しています。

 両親も大変感謝しており、お礼に伺いたいと言っています。

 先輩の御都合が良い日時を教えて頂きたいです。

 よろしくお願いします。」


返信はありましたが、丁寧に断られてしまいました。


「おばあ様がお亡くなりになって日も浅く、大変な中、わざわざ、

 お越しいただき、お礼をして頂けるほどのことを僕はしていません。

 どうかお気になさらずに、御身体を労わってください……と、

 ご両親様にお伝えください。」


香澄はLINEの画面を、そのまま両親に見せました。

両親は気落ちしている様子でしたが、「ご迷惑なのかもしれない。」と、無理にお願いして伺うことは止めると言いました。

香澄は返信しました。


「分かりました。」


その一言だけしか言葉が浮かびませんでした。

智樹からの返信メッセージは、今までの「香澄ちゃん」がなく……急に今までよりも遠い存在の人になったように香澄は感じました。

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