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慕情  作者: yukko
令和
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事情徴収

香澄と母、そして「田辺先輩」は警察署で事情徴収を受けました。

香澄は全く知らない男性にいきなり手首を掴まれてしまったこと、引っ張られて、引き寄せられそうになって怖くて声が出なかったことしか話せませんでした。


「先輩。」

「うん?」

「どうして? どうして、駅に居たんですか?」

「あ……、出張前に香澄ちゃんのお母さんに会いたくて…

 それで、今日、香澄ちゃんを迎えに駅に行くって聞いて…

 今日、急にお母さんにアポ取ったから……

 香澄ちゃん知らなかったよね。

 驚かせてごめんね。」

「……どうして? お母さんに会いに来たんですか?」

「手紙の件でね。ちょっと……。」

「ちょっと、何ですか?」

「僕の知り合いには居なさそうだったから…。」

「それは、私に直接LINEしてくれれば、いいですよね。」

「うん。 そうだね。」

「何を隠してるんですか?」

「隠してないよ。」

「嘘!」

「僕は半年、出張で居なくなるし、兄さんも居なくなるから……。」

「先生も居なくなるって…… どうしてですか?」

「兄さんは海外へ行くことになったんだ。」

「海外?」

「うん。国境なき医師団って知ってる?」

「はい。」

「その活動で行くんだ。忙しくて挨拶には来られないみたいで……。」

「そうなんですね。」

「それで、香澄ちゃんの手紙の件に兄弟二人とも何も出来なくなることを

 お母さんに話したくて……ね。」

「どうして、私に直接じゃないんですか!?」

「兄とね。話し合って、僕がご両親にお伝えすることになったんだ。

 お父さんはお仕事中だろうから……。

 ここの駅、実は僕の勤務先から一駅なんだよ。

 だから、お母さんに話すことにしたんだ。」

「もう一度、聞きます。

 どうして、私のことなのに私に話してくれなかったんですか?」

「香澄ちゃんの……… 心に余裕はないだろうって……思って……

 僕の知り合いについてとか…… 気になる人が居ないと言っても

 今の香澄ちゃんには……信じて貰えそうになかったから……。

 ご両親に話したほうがいいと思ったんだ。

 でも、香澄ちゃんに話すべきだったよね。ごめん。

 それから……

 もし、何かあっても僕たち兄弟は、特に兄は何も出来ないんだ。

 だから、何かあった時にご両親から僕に連絡して貰いたいと

 お願いするつもりだったんだ。」

「香澄、助けて頂いたのに……あなたって子は、お礼も言わずに……。」

「いいえ、僕が悪いので……。」

「先輩、ごめんなさい。」

「謝らないでよ。僕がいけなかったんだから…。」

「先輩、助けてくださって本当にありがとうございました。」

「気にしないで。当たり前だから…。

 それよりも、怪我が無くて良かったよ。

 香澄ちゃんが連れ去られなくて本当に良かったよ!」

「田辺さん、本当にありがとうございました。」

「いいえ、お礼を言って頂けるようなことはしていませんから…。

 どうか頭を上げてください。」


母は父に連絡して、父が車で迎えに来てくれました。

「田辺先輩」とは警察署で別れました。


LINEに「田辺先生」からのメッセージが届きました。


「智樹から聞きました。

 怪我はなかったと聞き安堵しました。

 兎に角、無事でよかったです。

 怖かったでしょう。

 今の香澄さんには心療内科医の助けが必要だと思います。

 良ければ紹介します。

 恐怖が薄れるのに時間が掛かると思います。

 無理をしないで過ごしてください。

 僕はもうすぐ海外へ行きます。

 昔からの夢です。

 いつか帰国したら会いましょう。

 それまでお元気で! 

 もう二度と貴女に災いが降りかからないことを祈っています。

 ……子ども達にもよろしくお伝えください。

 いつか会える日まで……さようなら。」

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