大和三山
「田辺兄弟」に来てもらった翌日、香澄は施設を休み、父親と共に警察に3通の手紙を見せて相談しました。
職場の上司にも何があったのかを話しました。
父は毎朝、車で送ってくれます。
帰りは、職場の女性と必ず一緒に駅まで行きます。
職場の上司に話したことで助けてくれることになったのです。
駅には母が迎えに来てくれて、母と一緒に帰ります。
時々、幼馴染の夫婦が車で迎えに来てくれることになりました。
京都に行っている「田辺先生」からLINEで奈良県の明日香村の写真が届きました。
そのメッセージは「怖い想いをさせてしまって本当に申し訳ないです。必ず、貴女を守ります。」という文章でした。
香澄は「守ります。」の一文に動悸がなかなか治まりませんでした。
「田辺先輩」からもLINEでメッセージを貰っていて「僕に出来ることがあったら遠慮なく!」という文章で、「先輩らしい!」と香澄は思いました。
LINEで送られてきた明日香村の写真はとても綺麗でした。
大和三山(畝傍山、耳成山、香具山)の写真も撮って送ってくれました。
⦅畝傍山が女性の山だったよね。
畝傍山を巡って、耳成山と香具山が争う……だったよね。
宝塚歌劇の……なんだったけ? あったのよ。
♪ かぐぅや~まはぁ~ うねびを おしと
みみなしと あいあらそいきぃ~♪
って歌が………。
あの大和三山、藤原宮の周りにあったのよ。
あの山々を眺めてた……そんな時間もあった………。⦆
お礼のLINEを送りました。
「綺麗なお写真をいっぱい、ありがとうございました。
大和三山のお写真まで撮って来てくださって
本当にありがとうございました。」
すると、直ぐに返信がありました。
「その後、大丈夫ですか?
何もなく過ごしていて下されば良いのですが……。」
⦅返信がめっちゃ、早い……。⦆
「大丈夫です。無事ですし、父や友達が送迎してくれていて
凄く過保護です。」
「それは良かった。過保護ぐらいでも安心できませんから!
僕も帰ったら警察に行くこと以外で出来ることがあると良いのですが……。」
「このお写真だけで充分です。ありがとうございました。」
「喜んでいただけて本当に良かったです。
明日、帰りますので、警察に行かれる際には日時をお知らせください。
よろしくお願いします。」
「はい。その節はお世話になります。
こちらこそ、よろしくお願いします。」
送られて来た写真の中で、何故だか大和三山に心惹かれました。
この近くに「雄鹿」が葬られているかもしれない……と、思うと送られてきた写真を見て、知らぬ間に涙が頬を濡らしていました。




