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慕情  作者: yukko
令和
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「田辺先輩」と「田辺先生」

同窓会が終わって、二次会に行く人と帰る人に分かれました。

真帆は二次会に彼と一緒に行きました。

香澄は二次会には行かずに帰ることにしました。

「田辺先輩」も二次会には参加せずに香澄と帰ることにしたのです。


「階段のこともあるから、今日は家まで送るよ。」

「いいですって、先輩。大丈夫です!」

「いやいや、何かあったら大変だから、今日は、ねっ!」


先輩に押し切られるように家まで送って貰いました。

先輩が居てくれたので、香澄は家までの帰路を怖いと思うことなく帰れました。


「先輩、本当にありがとうございました。」

「いいえ、気を付けるんだよ。」

「はい。……おやすみなさい。」

「うん。おやすみ。」


先輩は香澄が家に入るまで見守ってくれました。



⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂~~~⁂



日曜日が休みでしたので、図書館に行きました。

香澄が図書館でゆっくり本を読んでいると、「お具合は如何ですか?」と、小さな声で話しかけられました。

その声は「雄鹿」と一緒でした。

本から視線を外し、顔を上げると、そこに声の主が居ました。


「あれから、あの子の具合は如何ですか?」

「あ……田辺先生……。その節はお世話になりました。」

「いいえ、仕事ですので……。」


そう言いながら、「田辺先生」はタブレットを取り出しました。


「もしよければ、タブレットで話をしませんか?」


そう入力された画面を見せて貰いました。

香澄はスマホを使って……


「はい。私はスマホを使います。」


そう入力した画面を見せました。


「あの子は、どうしていますか?」

「元気です。事故に遭ったのが嘘みたいです。」

「そうですか。それなら、良かったです!

 何を読んでおられるのですか?」

「今日は奈良県の明日香村のことを知りたくて、奈良県を紹介

 している本を読んでいます。」

「明日香村?」

「はい。」

「古代に興味があるのですね。」

「古代に詳しくないのですけれども、興味はあります。」

「そうですか。」

「先生の御趣味は何ですか?」

「まるで、お見合いみたいですね。」

「すみません。」

「僕の趣味は何でしょうか? 分かりません。」

「そうなのですね。」

「はい。無趣味ですね。

 実は、僕、来週、京都に行くのです。学会で…。」

「そうなんですね。」

「はい。その時に奈良県明日香村に行ってみようかな。」

「興味があるのですか?」

「ありますよ。古代史、嫌いじゃないので…。」

「京都と奈良って、歴史ある街並みで、素敵でしょうね。」

「行かれたことは無いのですか?」

「はい。言ったことはありません。」

「一度行かれると楽しいですよ。」

「はい。いつか、行きたいと思っています。」


本を読むよりも「田辺先生」との会話をしていました。

気が付くと12時でした。


「もし、宜しければ、お昼ご飯ご一緒させて頂いても?」

「私とですか?」

「はい。」

「近くのスターバックスかちょっと離れたマクドナルドにしようかと

 思ってたんですけれど………。」

「スターバックスにご一緒させて貰うのは駄目ですか?」

「いいえ、構いません。」

「では、お昼ご飯、スターバックスで!」

「はい。」


スターバックスへ歩いていると、先日「田辺先輩」と二人で歩いたことを思い出しました。


⦅あの時、先輩と久し振りに会えて嬉しかったな。

 隣は全く同じ顔の先生。

 本当に、見る度にそっくりだと思う……な。

 二人とも……雄鹿にそっくり!⦆


今日は当然ですが、別々に注文して食べました。

「田辺先生」がスマホを取り出して言ったのです。


「あの、もしよければ、奈良で撮った写真を送ります。」

「え?」

「明日香村まで行きますから、写真を撮って貴女に送ります。」

「いいんですか?」

「はい。………それで、あまり親しくないので不安でしょうが………

 貴女のメールアドレスを教えて貰えますか?

 メールアドレスよりもLINEの方が良ければLINEでも……。」

「あ……。」

「すみません。急に………距離感が可笑しいですね。」

「いいえ、どこにお勤めか知っていますし、これからもお世話に

 なるかもしれませんし…… 子ども達が……。」

「いいんですか?」

「はい。………じゃあ、LINEで………いいですか?」

「はい。」


LINEに「田辺先生」の名前が入りました。


⦅前にスマホを調べた時はLINE見なかったな。

 アドレス帳しか見なかったな……。

 田辺先輩の名前LINEにあった………。

 田辺先輩もLINEに名前があるけれど……

 それはサッカー部のグループLINEの中で……

 個人的にメッセージを送ったり貰ったりしたこと

 無い、な………。⦆


⦅そっくりだから……「先輩」も「先生」も……

 会ったら…… 声を聞いたら……

 どちらも、めっちゃドキドキするのよ……ね…。

 それは、全く変わらないわ。⦆


「じゃあ、写真撮ったら送ります。」

「ありがとうございます。」

「飛鳥浄御原宮跡と藤原京跡周辺でいいかな?」

「凄く詳しいんですね。」

「凄くということはないけれど……少し、ね。」

「凄く詳しいですよ。」

「そうかな?!」

「えっと、お写真、よろしくお願いします。」

「はい。」

「あの、すみません。私はこれで……。」

「あぁ、こちらこそ、申し訳ない。じゃあ、LINEします。

 じゃない、写真送ります。」

「はい、よろしくお願いします。」

「じゃあ、さようなら。」

「失礼します。」


その日からでした。自宅のポストに香澄宛ての変な手紙が届くようになったのは……。

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