再び病院へ
時間があると、香澄は無意識に図書館へ行きます。
まるで、そこで何かが待っているような………。
想い出せない記憶があるような………。
あれから、「田辺先輩」にも「田辺先生」にも、偶然の出逢いはありません。
図書館へ行くと言うと、幼馴染も、サッカー部のマネージャーを一緒にしていた真帆も、まるで知り合いではないのに同じ言葉を香澄に伝えます。
「職場にも、大学にも、きっと、香澄のこと好きで、
告りたい!と思った人が居たと思うんだけどな…。
でも、ガードが堅いからね。香澄は………。
無意識なんだろうけど…………ね。
『好きな人居ます! 近づかないでください!』って
オーラが出てるのよ。」
「ちょっとは他の男性見たら?」
⦅他の男性?って……誰を? いないじゃん。⦆
「ねぇ、別に彼氏いなくても良くない?」
「良く無くないよっ!」
「図書館に行くようになったの、先輩でしょ。
先輩はもういいの?」
「うん。真帆……。」
「何?」
「この間の話だけどね。」
「あ……ぁ……。飛鳥時代の……。」
「うん。あの体験でね。」
「うん。」
「私、好きになった……男性が……居るの。」
「え?」
「もう絶対に、ね………。もう一生…ね………会えないの………。」
「…そなんだ…。」
「だからね、もう……何だか…前みたいに先輩のこと……想ってないんだ…。」
「………うん、いいんじゃない。心のままに、だよ。」
「うん。」
「泣かないで、香澄。」
「……うん。……いつか、行くの……。」
「どこへ?」
「奈良県の飛鳥へ…。」
「飛鳥って地名のとこあるの?」
「奈良県明日香村ってとこがあるのよ。」
「そうなんだ。」
「そこに……そこのどっかに雄鹿が眠ってるから…。」
「おじか?」
「うん、名前、雄鹿っていうの……。いつも私の傍に居て守ってくれてた。」
「へぇ~~っ、騎士様みたいだね。」
「うん。」
「そりゃ、カッコいいわ。」
「うん。」
「だから、図書館で明日香村のこと調べたりしてるんだ。」
「ふ~~ん。いいじゃん。」
「ありがと。」
そんなメッセージをLINEでやり取りし終えて、駅の階段を下りていたらドンと押されたのです。
香澄は階段から転げ落ちました。
周囲は騒然として、救急車が呼ばれ、香澄は病院へ搬送されました。
何が起こったのか全く分かりませんでした。




