パラレルワールド?
真帆は歴史が好きだったと思うのです。
だから、違いが分かるのではないかと思いました。
それに……分からない言葉を思い出す度に頭が酷く痛んで辛いだけではなく、思い出せないこと自体にモヤモヤしてしまうのです。
そのモヤモヤも嫌なのだと香澄は思いました。
そして………まだ、この世界に馴染めない自分を取り戻すために香澄は勇気を出して、真帆に全てを話すことにしたのです。
真帆に大まかな身の上に起こったことを話しました。
「え………………………… そんなこと、起きる訳……ないよ。
香澄の臨死体験じゃないの?」
「信じてよ。」
「泣かないで………。ごめんね、香澄……信じられなくて……
信じられないままだけど、あり得ることを考えてみようか、二人で…。」
「……………うん。…………ありがと。」
「先ず、歴史ね。」
「うん。真帆は詳しいでしょう。歴史………。」
「いやぁ~、ごめん。私、戦国時代が好きなんだ。
だから、飛鳥時代は………ゴメン。分からない………。」
「そうなの…。」
「うん。ごめんね。でも! 調べることは出来るから!」
「ありがとう。調べてみたのよ。」
「うん。どうだった?」
「私が飛鳥で体験したこと、そのままだった。」
「それが本当の歴史じゃないの?」
「違うの。私の前の令和では違う歴史なの……。」
「どうだったの、その前の令和での歴史は……。」
「大津皇子は死罪になるの。」
「えっ? そんな馬鹿な……。」
「長屋王も死罪になるの。」
「嘘だぁ―――っ。」
「ほら、嘘って……。それくらい違うのよ。」
「ごめん。泣かないでよ。お願いだから、<嘘>はもう言わないから!」
「ごめんね。真帆………。」
「ううん。………あっ! 呼ぶわ。」
「誰を?」
「そんな話が好きなあいつを! 待っててね。呼ぶから………。」
真帆は彼氏を呼びました。
「呼ばれてきたよぉ~! おひさぁ~、香澄ちゃん。」
「おひさ……元気そうね……相変わらず……。」
「うん。元気だよ。でっ、おおよその話は聞いたよ。
多分だけどね。」
「うん。」
「同じようだけれど別なんだよ。」
「同じようだけど別ぅ~?」
「うん。パラレルワールドって知ってる?」
「聞いたことがある。」
「それだよ。多分!」
「だから、コロナ禍だっけ?」
「うん。コロナ禍。」
「それが無いのかもしれないよ。」
「どうしてなくなるの?」
「俺、研究してるんじゃないからねっ。分からないよ。」
「ごめんなさい。」
「謝らなくてもいいよ。
実際に物理学(量子力学)の世界でも理論的な可能性が語られているからね。
例えば、量子力学の多世界解釈や【ゼロ・ポイント・フィールド】仮説、
宇宙論の【ベビーユニバース】仮説などであるんだよ。
でもね、あくまでも可能性であって、存在自体を確認することさえ出来ない
らしい。
だから、香澄ちゃんが居た前の令和と、今の令和と違うんじゃないかな。」
「どういうことか……分かんない。」
「私も分かんないよぉ~。」
「えっと、別々の令和が存在してるんだ……分かる?」
「別々に令和があるってこと?」
「うん。」
「じゃあ、別の令和に私たちが居るってこと?」
「うん! それっ!!」
「でも、歴史が違うよ。」
「それもパラレルワールドならではだよ!」
「じゃあ、どして? コロナ禍はこっちで無いの?」
「分からん!! 全く同じじゃないってことだけ、かな!?」
「ふ~~ん。分かったような……分からないような……。」
「お前は分からなくてもいいの。香澄ちゃんが何となく分かったらOK!
香澄ちゃん、なんとなくでいいんだよ。なんとなく両方ともあり!って
分かったら、それだけでいいんだ。」
「うん。ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして!」
「二人はこれからデートでしょ♡」
「まぁ、会ったんだし、ねっ。」
「おう!」
「あ……香澄、また連絡するね。サッカー部の同窓会!
日時が決まったら…。」
「うん。待ってる。」
「じゃあ、またね~。 バイバイ。」
「バイバイ~!」
パラレルワールド……かもしれないと思ったら、香澄は少しコロナ禍という言葉に拘らないようにしようと思ったのです。




