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心変わり
香澄は、先輩が雄鹿にそっくりだと思いました。
不思議でした。
「飛鳥」で、初めて雄鹿に会った時、香澄が思ったのは……
⦅初恋の人に似ている!⦆
だったのです。
でも、今の香澄は……先輩を見て……
⦅雄鹿にそっくりだ。⦆
そう思ったのです。
気持ちが変わってしまっていました。
それは、自分で信じられないほどの変化でした。
「先輩」に似ている「雄鹿」のことが気になって、いつしか「雄鹿」のことを好きになって……
今は「雄鹿」が好きなのです。
ただ、あまりにもそっくりなので、「先輩」と居ると、「雄鹿」を思い出してしまうのです。
たった一度だけ抱きしめてくれた雄鹿。
あの温もりを忘れられない香澄。
募る慕情。
叶わぬ想い。
同じ顔、同じ声、同じ姿…… あまりにも似ていて……。
忘れ得ぬ雄鹿を鮮明に思い起こさせた今日の出逢いでした。
その日は、もう図書館で勉強しよう!という気持ちは消えてしまいました。
不思議な感覚のまま家路に就きました。




