表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
慕情  作者: yukko
令和
47/166

初恋の人

香澄はまさか図書館で先輩に会うとは思っていませんでした。

先輩に誘われるがままに歩きました。

着いた先はスターバックスでした。


「ここで、いいかな?」

「あ……、はい。」

「香澄ちゃん……何にする?」

「あ…… はい。……えっと、抹茶ティーラテ……にします。」

「ケーキは? 要らないの?」

「あ、要りません。」

「抹茶ティーラテのサイズは?」

「あ…トールで。」

「じゃあ、抹茶ティーラテのトールとスタバラテのトール、1つずつ。」


先輩が無言で香澄の分も支払ってくれました。


「先輩、私、私の分は自分で払います。」

「久し振りだから、僕に払わせてよ。ねっ!」


笑顔でそう言われて、「すみません。……ありがとうございます。」と、言うのが精一杯でした。

向かい合って座っていると、ドキドキしました。


⦅雄鹿……そっくり…… 顔も、姿も…声も……

 そっくり………

 別人なのに…… こんなに似てるなんて……。⦆


胸の高まりを抑えようと意識すればするほど高まっていくような気がしました。

頬が赤く染まっていくのを感じました。


「香澄ちゃん、今も赤面症なのかな?!」

「えっ? 赤いですか?」

「うん。僕が高校3年生の時…初めて会った時から、今も…だね。」

「………恥ずかしい……。」

「サッカー部に入部してくれて最初の挨拶の時、すっごく真っ赤になってた。

 だから、覚えてるんだ。」

「……忘れてください。」

「もう一人の子も…… 真っ赤になってたなぁ~。 二人とも可愛かったよ。」

「もう、ほんとに、忘れてください。」

「真っ赤だね。」

「もう、先輩!!」

「分かった。分かったよ。

 ところで、今はどこにいるの?」

「あ…… 福祉大学です。」

「そうなんだ。……サッカー部でマネージャーやってるの?」

「いいえ。もう何もしてません。」

「そうなんだ。」

「先輩は? どうして図書館に…?」

「あぁ…、この近くの病院へ行くんだ。

 それで、その前にちょっと時間調整を兼ねて入ったんだ。」

「そうなんですか?」

「ところで、香澄ちゃん……。将来は何になるの?」

「児童相談所で働きたいんです。」

「へぇ~っ。」

「変ですか?」

「いいや、いいねっ! ちゃんと夢があるのは……。」

「…あ、ありがとうございます。」

「いいえ、お礼を言われるようなこと言ってないよ。

 ほんと真面目だね。」

「そうですか?」

「うん、そうだよ。真面目!」

「そ……そんなこと…ないと、思います…けど…。」

「ある!と僕は思います。

 さてと……香澄ちゃん、ありがとう。」

「何がですか?」

「時間、楽しく過ごせて、潰せたよ。ちょうどいい時間になった。」

「そうなんですか。」

「うん。ありがとう。じゃあ……元気でね。」

「はい。あ、ご馳走様でした!」

「どういたしまして!………あ、サッカー部の連中に会ったら、」

 よろしく伝えてね。」

「はい。」

「じゃあ……。」

「お疲れさまでした。」

「クラブ活動じゃないよ。バイバイ!」

「あ……さようなら。」


胸の高まりは治まらないままに、先輩を見送りました。

先輩は今は何をしているのか聞くことも出来ませんでした。

雄鹿にそっくりだと、改めて思った香澄でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ