めぐり逢い
香澄が地方公務員試験に挑んでいる間に、幼馴染夫婦に可愛い子が産まれました。
出産祝いを持って行くのにも、いつがいいのか分からずに母に聞きました。
「もう、そりゃあ、大変なのよ。」
「だろうね。」
「だってね、全て変わるのよ。生活が……。
だからね、母親の身体も心もある程度落ち着いてからの方がいいわよ。」
「落ち着くのは、いつ?」
「そうね………。
人によって違うから一概には言えないけれど、生後3カ月以上後ね。」
「分かった。 ありがとう! お母さん……。」
赤ちゃんの首が座った頃にお祝いを持って行きました。
喜んでくれました。
「ねぇ、おばさんから聞いたんだけど……。」
「うん? 何?」
「図書館で勉強してるんだって?」
「うん。」
「どうして? 一人っ子だから家でもいいじゃん。」
「どうして……なんだろ?」
「へ?」
「自分でも分かんないや。
ただ、何となく……周囲を気にしなくていいから? かな?」
「そうなんだ。」
「うん。」
「また、何かあったのかと期待しちゃった。」
「何かって?」
「で・あ・い……よ!」
「そんなもん、ないわよ。」
「そっか………残念……。」
「めぐり逢いって…凄いよね。」
「どしたの?」
「だって、さ。二人は幼稚園からの長い付き合いでしょう。」
「うん。」
「そういう人にめぐり逢えたんだよね…。幼稚園でっ。」
「そっか……そだね。」
「うん、凄いめぐり逢いだよ。」
「うん。」
可愛い赤ちゃんと過ごす時間は楽しくて……あっという間に過ぎてしまいました。
帰路、「赤ちゃんが可愛いってだけで帰れるんだから、子育てしなくて、時々会うだけって楽よね。」と思いつつ、「飛鳥」では子育てしなかったことを思い出しました。
⦅授乳は乳母がして、オムツを替えるのも乳母……。
草壁を育てなかった母だったんだ。⦆
⦅草壁……ごめんね。⦆
⦅草壁、貴方の父上様とは政の話ばかりで……
私が歴史を変えてしてしまったことが、貴方を追い詰めた。
ごめんね。……草壁……。⦆
草壁を思い出しながら、何故か図書館に向かっていました。
どうして、ここに来ると安心できるのかが分かりませんでした。
図書館でいつものように本を読んでいました。
すると……思わぬ人が声を掛けてくれたのです。
「久し振り。元気だった?」
「………せんぱい……。」
「声、出したら駄目だよね。図書館で……。
久し振りだから、ちょっとお茶でも飲まない?」
驚いてしまった香澄は頷くだけでした。




