図書館
福祉大学で学び、バイトして……普通の大学生の日々を送るようになりました。
「好きな人を作ればいい。」と、言われたけれど……そんな気にはならなかったのです。
香澄は時々、ぼんやりとスマホを見ます。
スマホの画面に映し出される名前と電話番号を………。
でも、その中には憧れていた先輩の名前はありませんでした。
⦅だよね。一方的に見てただけだもんね。
記憶が可笑しいから、もしかしたら………って、思ったけど…。
無いよねぇ~。⦆
⦅あ……、そ……だ………。
飛鳥時代の、あの…私の体験は……本物だったのかな?
調べよう~!⦆
香澄はネットで調べるのではなく、何故か図書館に行きました。
母に「図書館で調べ物をするの?」と、聞かれて、「うん。」と、答えつつも、「もしかしたら、前の私と全く違うことしているのかなぁ?!」と、少し不安に思ったのです。
図書館に着いて、飛鳥時代の歴史を調べようと、「日本史」のコーナーに行きました。
⦅え~~~っとぉ……、これと………これ、と……これも…かな?⦆
本を3冊取り、席に着いて読み始めました。
読み進めていくと、大津皇子についての記載を見つけました。
⦅あぁ~~~、大津…… 想い出せるわ。顔も、姿も、声も……。
我が子、草壁よりイケメンだったなぁ………。⦆
「あ……!!」
大きな声を上げてしまったので、周囲に何度も「すみません!」と謝りました。
すると、その声がまた大きかったようです。
口に人差し指を当てて、囁くような小さな声で「静かに…。」と言われました。
無言で頭を下げました。
⦅大津、死んでなかった……。天皇になって……岡宮天皇に……
それから、岡宮太上天皇に……。⦆
⦅じゃあ、草壁は………。
あ、ごめんね。草壁………。罪については書かれていない……。
けど、大津を無実の罪に陥れようとしたこと、それが、たぶん……
あの子の命を奪ったんだわ。⦆
⦅不比等が……死罪になってるもの……。
あの体験のまま、なんだ。⦆
⦅長屋王の変なんて、無いし……。⦆
⦅持統天皇……は………火葬されてる!
大津……ありがとう。私の希望を叶えてくれて……。
醜い姿を晒さないようにしてくれたのね。
ありがとう。大津……!⦆
図書館で本を読んで、あの体験が事実だったと分かりました。
手首のミサンガを香澄は「吉備内親王、私の孫娘……ありがとう! これ、私好きよ。」と、そっと優しく撫でました。
ただ、当たり前なのでしょうが……
身近に使えてくれていた者の名前はありませんでした。
唐津の名前も、舟坂の名前も………そして、雄鹿の名前も………見つかりませんでした。




