平成
病院のベッドで目覚めた後に、「今は何年?」と、聞きました。
看護師は「2017年よ。」と答えてくれました。
戻って来たのは、2017年(平成29年)でした。
⦅あれっ? 平成? 令和って何?
令和ってだけ覚えてる。 令和って何なの?⦆
戻って来てから、飛鳥の記憶はあるのに、その前の記憶が…… 前世と思っていた記憶が朧げなのです。
そして、思い出そうとすると頭痛がしました。
「痛い!……」
「どうしたの?」
「頭が酷く痛いんです。」
「先生に診て貰いましょうね。」
そういうことが入院中多かったのです。
それから、頭痛が怖くて思い出すのを香澄は止めてしまいました。
ただ、香澄はこの平成29年より前の記憶はしっかりと覚えています。
両親のこと、学校のこと……
しかし、あの「飛鳥」での日々で時々思い出していた「令和には……。」、「令和では……。」の令和が何なのか分からないのです。
香澄の記憶は不思議なくらい「飛鳥」での日々が鮮明なのでした。
病院には高校の同級生や幼馴染が見舞いに来てくれました。
幼馴染の中で二人、付き合っているのです。
幼稚園から高校まで一緒で、まるで「名探偵コナン」の新一と蘭みたいです。
今日来てくれたのは、その二人です。
「良かったぁ~~っ!」
「おい、そんなに抱き付いたら傷が痛いよ、なぁ。」
「大丈夫よ。痛かったら言うから、ねっ。」
「ねっ!」
「けど、良かったなぁ~!」
「うん。」
「学校へはいつから行くの?」
「退院したら行くよ。」
「そっかぁ~!」
「学校が一緒だったら、良かったな。」
「うん。そだね。」
「一緒だったら、勉強教えてくれる? 遅れちゃったんだ…。」
「違うから……してあげたくても、出来ないね。」
「そうだなぁ~。」
「ねぇ、夏休みになったら、泳ぎに行こうよ!」
「いいよ。お邪魔だろうから……。」
「えぇ―――っ。そんなことないよ!」
「行ってきなよ。二人で!」
「一緒に行こうよ! ねぇ……。」
「あのね。」
「うん。」
「身体に傷があるのよね。事故の…… だから、水着、着たくないんだ……。」
「あ……。」
「だよな……。
おい、もうちょっと……気づけよな。」
「ごめん~。ほんとに、ごめんね。」
「いいよ。気にしてないよっ。」
他愛ない話をして過ごしていると、平和だなぁ~と、思う香澄でした。
その時間が幸せだと思うのです。




