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慕情  作者: yukko
飛鳥
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大海人皇子

大海人皇子(おおあまのみこ)(やかた)へ着きました。

姉の大田皇女(おおたのひめみこ)と二人で挨拶します。


「本日より、大海人皇子(おおあまのみこ)様の妃としてお仕えいたします。

 大田でございます。」

「私は鸕野讚良(うののさらら)でございます。」

「頭を上げよ。 二人ともよく来た。 これから頼む。」

「はい。」


祝宴が開かれました。

祝宴の後、今日は大田皇女(おおたのひめみこ)の元へ向かわれると聞いたのです。


⦅ああ―――っ! 良かったぁ~。

 叔父さんとなんて……なんか…こう…嫌だわっ。

 近親相姦じゃん。

 それが普通って、どうなのよ!

 拒否……出来ないよね………。

 逃げたくなっちゃったなぁ~。⦆


大海人皇子(おおあまのみこ)(やかた)でも、スキップを踏みながら「厠ぁ~♪ か・わ・やぁ~♪」と歌い、厠へ行く鸕野讚良(うののさらら)皇女(ひめみこ)大海人皇子(おおあまのみこ)(やかた)で働く者たち、特に女孺(にょじゅ)は不気味な物を見る眼で見ています。

そして、その話は大海人皇子(おおあまのみこ)の耳にも届いたのです。


「これは………面白そうな妃が来たではないか! 楽しみだ!!」


面白がっている大海人皇子(おおあまのみこ)の元へ、鸕野讚良(うののさらら)皇女(ひめみこ)の異母妹である大江皇女(おおえのひめみこ)新田部皇女(にいたべのひめみこ)の二人が嫁いで来たのです。


「兄上は何をお考えなのか………?!

 私が差し出した妃は一人。

 兄上が差し出した娘は四人。

 兄と弟二人の絆を豪族どもに知らしめるため!

 本当にそれだけであろうか?

 そなたは、如何に?」

「何故、私に聞かれるのですか? 皇子(みこ)様。」

「そなたは、少し違った考えをしていると思うのだが……。」

「さぁ…… 私に聞かれましても…… 父上様のお考えは全く分かりませんわ。

 ただ、単純に考えましたら……… 皇子(みこ)様のお力が怖かった?

 ということくらいですわ。」

「ふふふ……。」


⦅一応、夫婦よね。

 でも、夫婦の会話と言うよりは……

 腹の探り合い……かな?

 それも、叔父と姪による……腹の探り合い……。⦆


皇子(みこ)様。額田様は如何なされておいででしょうか?」

「さぁ、知らぬが………。兄上のご寵愛を受けておるであろう。」

「きっと、そうですわね。才気溢れたお方ですもの……。

 十市皇女(とおちのひめみこ)様にお会いされたいのではありませんか?

 皇子(みこ)様のお血を受けられた皇女(ひめみこ)様に………。」

「会っても善し、会わずとも善し…………………………。

 そなたは……面白いのう……。」

「何が……でございますか?」

「厠へ行くのに、呪いの踊りをしておるとか…!」

「呪ってはいません! そのような踊りなどしておりません。」

「そうか…?」

「はい。誓ってそのようなことは致しておりません。」

「それならば良い。」


鸕野讚良(うののさらら)皇女(ひめみこ)の記憶が再び流れてきました。

母が亡くなったこと、その原因が父・中大兄皇子(なかのおおえのみこ)であることが………。


「そなたは、兄上に似ているのやもしれぬ。」

「父上様にでございますか?」

「ふふふ……。姉とは違うのう。同じ母であるが……。

 姉は……大田は母に似ておるのであろう。

 そなたは父に似ておると思うぞ。」

「左様でございますか……。」


母の名は、遠智娘(おちのいらつめ)

父の皇后の次に高い身分の妃でした。

蘇我倉山田(そがのくらやまだの)石川麻呂(いしかわまろ)の娘で、父に嫁し、大田皇女と鸕野讚良皇女、そして健皇子(たけるのみこ)を産んだのです。

豪族は皇族に娘を嫁します。

それが政権の中枢に残り続けるためなのです。

蘇我倉山田(そがのくらやまだの)石川麻呂(いしかわまろ)は、乙巳の変(いっしのへん)の際に蘇我氏であるのに中大兄皇子に与したのです。

蘇我入鹿を暗殺し、中大兄皇子側に付いていたことにより新しい政府で右大臣に任命されて順風だったのです。

それが、異母弟に「謀反の疑いあり」と讒言(ざんげん)され、石川麻呂は妻子8人と自害したのです。

その後、母は健皇子(たけるのみこ)を産んで間もなく亡くなったのです。

幼くして母親を亡くした姉妹弟、弟は話すことが出来ませんでした。

祖母である斉明天皇に愛された健皇子(たけるのみこ)は8歳でこの世を去りました。

母方の祖父・石川麻呂を謀反の疑いありとしたのは、黒幕は……父・中大兄皇子ではないかと、母は思ったのかもしれません。

陰謀が蠢く政権内で、どう動くかによって生きられるか……それとも死が待っているのか…。

それは、誰も分からないのです。

祖父の死は、鸕野讚良皇女に大きな何かを残しました。

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