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回復
身体は日に日に良くなってきました。
両親も喜んでくれています。
ただ、記憶が……はっきり分からないことが多くなっていました。
医師の診断で「高次脳機能障害」にはなっていないことが分かりました。
両親の安堵は大きく、その安堵が喜びになっていました。
普通の生活をするようになったのは、意識が戻ってから半年後でした。
「香澄、リハビリ頑張った成果ね。本当に良かったわ。」
「おい、何か言う度に泣いていたら、香澄が気にするじゃないかっ!」
「本当ね、お父さん。……香澄、ごめんね。」
「止めてよ。お母さん、嬉し涙でしょう。私も嬉しいから……。」
「香澄、そのミサンガ誰に作って貰ったの?」
「そうだ、知りたいよ。お父さんも……。」
「お母さんもお父さんも知らない小さな女の子よ!」
「教えてよ。」
「内緒!」
「そうか……内緒か……。内緒に出来るのも命あってのことだ…な。
本当に良かったよ。」
何かにつけて両親は涙を流しました。
⦅たった一人の子どもだから、一粒種だから……。
いいえ、違う。
親ってきっと、そうなんだ。⦆
そう思えるのも、あの飛鳥の記憶があるからです。




