病院
気が付いたのは病院のベッドの上でした。
懐かしい父と母が傍に居ました。
目を覚ました香澄と母の目が合いました。
「お父さん、香澄が……。」
「えっ? 香澄――っ!」
父がナースコールを押しました。
「どうされました?」
「目覚めました! 娘が……目覚めました!!」
「直ぐに行きます。」
父と母は涙でいっぱいにしながら………。
「香澄………。香澄………。」
…と、名前を呼んで泣き続けていました。
香澄は訳が分かりませんでした。
⦅確か……死んだ?はず……… えっ? 違うの?
私、香澄…… 目の前で泣いてる…… お父さん! お母さん!!
戻って来れたんだ―――っ!!
いや……違うのかな? 臨死体験っていうやつかな?
きっと、そうだよね~。⦆
医師は「高次脳機能障害が残る可能性があります。」と告げました。
その病名を香澄も両親も初めて聞きました。
香澄は交通事故に遭い、一命をとりとめましたが、脳に障害が残った可能性があるとの診断でした。
確かに記憶が可笑しくなっていました。
覚えていないことがある反面、臨死体験かと思う記憶は鮮明なのです。
それが香澄にはとても不思議でした。
そして、看護師が点滴を打つ際に言った言葉を聞いて驚いたのです。
「可愛いミサンガね。
ここに運ばれてきた時から付けていて……なんとなく外せなかったのよ。」
「ミサンガ?」
看護師は香澄の右腕を少し上げて、ミサンガが見えるようにしてくれたのです。
そのミサンガに見覚えがありました。
「あ………。」
「思い出した?! 良かったわぁ~。
ご両親はご存じなかったから……。
誰かさんに貰った物なのね。」
「は…い…。」
「本当に良かったわ。若いから早く治るわよ。」
そう言って部屋を出て行きました。
両親が手首のミサンガを知らなくて当たり前です。
これは……あの飛鳥時代の吉備内親王がくれた物だったからです。
⦅あれは……臨死体験じゃ……なかったんだ………。⦆
あれは……あの飛鳥でのことは……香澄の体験だったのです。




