トイレ事情
大田皇女と鸕野讚良皇女が嫁ぐと、大海人皇子から中大兄皇子へ大海人皇子の妃の一人が行きました。中大兄皇子の妃になるために……。
その女性は女子を一人生んでいて、大海人皇子との間の一人娘の名前は十市皇女です。
⦅大海人皇子の妃で、
父上様、中大兄皇子の妃になるために
行った女性って………女性って……
あの宝塚歌劇で観た〖なんとかの紫の花〗じゃないのかなぁ?
え―――っとぉ~。
♪あかねさす~ むらさきのゆき しめのゆきぃ♪
分かったぁー! 〖あかねさす紫の花〗じゃん♡
じゃあ…じゃあ…… 額田王&大海人皇子の
狩りの時の巡り合い…とか……見られるの~♡
宴会で額田王への慕情を捨てきれない大海人皇子が
槍を中大兄皇子の前に突き刺すのも見られるのぉ~♡
めっちゃ、眼福じゃん! これからが楽しみぃ―――!⦆
香澄がこの世界、古代の日本に転生して良かったと最初に思ったことはトイレでした。
中世ヨーロッパらしき世界への転生物を良く見たり聞いたりしていましたが、中世のヨーロッパにはトイレが無いと世界史を習った時に教師が言っていたことを覚えているのです。
あの裾が広い豪華なドレスを着たまま、庭で用を足すと…教えて貰ったのです。
ところが……古代なのに………あるんです。トイレが……
香澄はトイレがあると知って、狂喜乱舞しました。
それを見ている女孺たちが恐れおののいたのです。
「鸕野讚良皇女様の御気は確かか?!」と………。
トイレは、ちゃんと「厠」という香澄が聞いたことのある名前でした。
「厠へ行って来るわね。」
「はい。」
「厠ぁ~♪ か・わ・やぁ~♪」
スキップを踏みながら歌っていると……
「皇女様…… 何を呪っておいでなのですか?」
「はへ?」
「厠へ行かれる度に、そのような呪いをお掛けになられて……。」
「呪い?……なにが?」
「呪いでは?」
「いいの、兎に角、厠へ行くの。」
「厠ぁ~♪ か・わ・やぁ~♪」
スキップを踏みながら歌っていると……
「どうかお許しください。呪いは…。」
「だ・か・ら…… どこが呪いなのよっ!」
「その……厠ぁ~♪ か・わ・やぁ~♪…が……でございます。」
「違うし、違うぅ~!! これは呪いじゃないわ。喜んでいるのよ。」
「呪いではないのですか?」
「そうよ。」
「ありがとうございます。」
「はい?」
「呪われてなくて安堵しました。」
「はい?」
疲れる会話でしたので、女孺を無視することにしました。
厠に着くまで「厠ぁ~♪ か・わ・やぁ~♪」と歌いながらスキップを踏む鸕野讚良皇女を、しばらくすると誰も気に掛けなくなりました。
そして、香澄……じゃない鸕野讚良皇女は姉と共に大海人皇子の元へ嫁いだのです。妃として………。
女孺=侍女