鸕野讚良皇女
それは、急に思い出した記憶でした。
「どうしたのだ?! 皇女!」
「……はい。……申し訳ございません。父上様。」
「聞いておったか?! 私の話を……!」
「……申し訳ございません。」
「二度とは言わぬ。これが最後ゆえ、よう聞け。」
「はい。」
「私の娘の大田皇女そして、鸕野讚良皇女そなたに
大海人皇子の元へ嫁いでもらう。良いな!」
「はい。父上様。」
⦅えっ? もしかしたら、鸕野讚良皇女?
えっ? 私が鸕野讚良皇女?
じゃあ、この人……父上様は…中大兄皇子?
ひぇ~~~~っ! じゃあ、ここは…… 飛鳥時代だったけ?
大化の改新は終わった後だっけ?
あ~あ~ 日本史ちゃんと勉強してたら良かったなぁ……
…って、どうしよう!! 元の世界に、令和に戻りたいよ―――っ!⦆
パニックになっている香澄に声を掛けた少女が居ました。
「どうしたの? 鸕野…… 先ほどから変だわ。」
声を聞いた途端、鸕野讚良皇女の記憶が雪崩のように蘇りました。
「大田姉上様……。ごめんなさい。心配かけて…。」
「どこか具合が悪いの?」
「大丈夫です。」
「本当? 無理していない?」
「大丈夫よ。私の方が姉上様よりも元気でしょう。」
「そうだけれども……心配だわ。」
「姉上様……。」
大田皇女が、そっと抱いてくれました。
すると、心が軽くなるようでした。
そして、ふと気づきました。
姉妹が嫁ぐ先は…… 大海人皇子。
姉妹の叔父だということに……気づいたのです。
そして、嫁ぐ私 鸕野讚良皇女は僅か13歳だということ……と、この時代の日本は、同腹の兄弟姉妹でなければ結婚することがタブーでなかったこと……を知るのです。
大田皇女、大江皇女、新田部皇女そして、鸕野讚良皇女の4人が次々と嫁いだそうです。
大田皇女と鸕野讚良皇女は一緒に嫁いだと思います。この二人は同腹の姉妹でした。
日本の皇族は、古代に近親婚を繰り返していました。
天皇になるのは、祖父または父親が天皇でないとなれませんでした。
また、皇后になる資格は皇族に限りでした。
初の民間皇后は美智子上皇后ではなく、古代に初めて皇族以外の藤原不比等の娘・光明子<光明皇后>であると言う人がいます。