大津皇子
急に思い出しました。
大津皇子のこと……
⦅タカラヅカスカイステージで観た!
題名は忘れたけど………
大地真央が大津皇子を演じてた♡
もう、めっちゃ素敵♡
……… 実物は大地真央ではないから……ね……。
……その舞台でも大津皇子は謀反の罪で……
やっぱり、歴史は……
大津皇子は謀反で命を絶たれるのね…。⦆
天武天皇10年(681年)2月25日。
天武天皇は律令を定める計画を発し、同時に草壁皇子を皇太子に立てました。
「帝、高市皇子を皇太子に……は適いませんか?」
「皇后、無理であることは知っておろう。
高市皇子は壬申の乱で朕に付き添い戦場に立っていた。
高市皇子の母が、そなたであれば……皇太子になれておる。」
「帝が誠に皇太子に据えたいのは高市皇子お一人でしょう。
今迄と違うことを行なうのは……やはり無理でございますか?」
「出来るものなら………しておる。
皇后、そなたが産んだ草壁皇子を立太子にし、朕とそなたの名で
知らしめる。」
「相分かりました。」
天武天皇12年(683年)2月1日から有能な大津皇子にも朝政を執らせました。
大津皇子は優秀で周囲の者たちが「帝になられるのは草壁皇太子様よりも大津皇子様こそ相応しい。」と言うようになったのです。
⦅大津皇子に会いに行こう。⦆
大津皇子に会うと知らせました。
大津皇子の元へ行くと伝えたのです。
大津皇子の舘に赴くのは初めてでした。
「皇后様、お召でしたら伺いましたのに……
わざわざのお越し誠に恐悦至極にございます。」
「大津皇子、堅苦しい挨拶は抜きに致しましょう。
貴方は私の甥です。」
「ありがとうございます。」
「今日は二人だけで話したいことがあり参りました。」
「はい。」
「大津皇子、そなたを皇太子に……出来ず……
私は高市皇子が一番、帝に相応しい人物だと思っています。
ですが…彼は…母親の身分が妨げになって帝への道は閉ざされています。
変えられません。
次に相応しいのは、そなただと思っています。
ただ……後ろ盾がそなたには無い。
私は、そなたの後ろ盾には成れぬ。
許してください。
私は草壁の母……故に…そなたの後ろ盾には成れぬのです。
そなたには、将来、帝の補佐になって欲しいのです。
高市皇子と二人で帝の補佐になり、大和政権を……
いいえ、この大倭を…作ってください。
お願いいたします。」
「皇后様、どうか頭を上げてください。
皇后様が臣下に頭をお下げにならないでください。」
「大津皇子………。」
「皇后様、私は…後ろ盾がございません。
なれど、無くとも帝のお役に立てる人間になりたいと
思っております。」
「大津皇子…… ありがとう。
貴方に……もう一つお願いがあります。」
「何でしょうか?」
「父・天智天皇が仰せの言葉がありました。
【担ぎ上げる者が出る可能性がある者、担ぎ上げる者は先に葬る。】と…
大津皇子、貴方を担ぎ上げようとする者が出てきたら……
貴方を担ぎ上げる者が出てきたら……
私は…大津皇子、貴方を葬らねばならなくなります。
私は……誰も葬りたくありません。貴方は特に……
姉上様の忘れ形見の貴方を……葬りたくはないのです。
気を付けなさい。
近づく者を…… 何を言っても頷いてはなりません。
いいですね。己が身を大切にするのです。
帝の御位よりも……貴方の命の方が尊いのですから……。」
「皇后様……。」
「今の話は、ここだけ…… 貴方と二人だけの……
漏らしてはなりません。
宜しいですか?」
「はい。」
一番伝えたかったことを伝え終えて、大津皇子が宴を儲けてくれたので、その部屋へと移るために部屋を出ました。
部屋を出て直ぐに……部屋の外で控えている舎人………雄鹿が居たのです。
⦅嘘っ……… 雄鹿が……… 生きていてくれた………。⦆
顔色を悟られないように扇で隠しながら、私は無意識に雄鹿に近づいていました。
その時の私には自分の足元しか見えませんでした。
足元しか見えていないのに、歩んでいるのも雲の上を歩いているような感覚なのに……
雄鹿の前まで行ってしまったのです。
「雄鹿……… そなた、雄鹿ですね。」
声は震えていたかもしれません。
「はい。雄鹿にございます。」
「雄鹿、生きていたのですね。」
「はい。」
「貴方は父上様の舎人でした。
だから、私は大友皇子の傍に仕えているとばかり……。」
「私は天智帝から、大津皇子様の舎人になるよう仰せ使いました。
まだ、大津皇子様が幼くあらせられた頃のことでございます。」
「そうですか……。
………… 貴方にお願いがございます。」
「私に皇后様が………。」
私は雄鹿にだけ聞こえるよう雄鹿の耳元で囁きました。
「大津皇子に近づき唆す者が出てきたら、私に直ぐに伝えてください。
お願いします。」
「承知いたしました。」
声を元に戻して言いました。
「大津皇子によく仕えてください。雄鹿……
皆も大津皇子を私と思い仕えてください。
頼みます。」
「は―――っ!」
「皇后様、有難き幸せにございます。」
「大津皇子、何を言っているのですか?
貴方は帝の大切な皇子です。
この大和政権の大切な皇子です。」
「皇后様………。」
「さぁ、案内してください。大津皇子。」
「はい!」
頬が赤らんでいることでしょう。
揮えた声になっているでしょう。
胸の鼓動は大きいままで落ち着きません。
「気取られなかったか……?」という不安が雄鹿から離れるにつれて高まっていくのをどうしようもない私・香澄でした。
香澄の心と鸕野讚良皇女の記憶が同居した不思議な………今の鸕野讚良皇女なのです。




