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慕情  作者: yukko
飛鳥
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天武天皇

壬申の乱の1年後、夫・大海人皇子は即位しました。

鸕野讚良皇女は皇后になりました。

大海人皇子の妃の中で最も位が高かったからです。

豪族の娘ではなく、祖父母、父を天皇に持つ皇族だったからです。

大田皇女が生きていれば、大田皇女が皇后になっていたと思うのです。


天武天皇は、大友皇子の死後もしばらく美濃にとどまり、戦後処理を終えてから飛鳥の岡本宮に入り、その後、新たに大極殿を建てました。

この2つをあわせて飛鳥浄御原宮と名付けたのは晩年のことです。

天皇は一人の大臣も置かず、直接に政務を執りました。

天皇は皇后に政治の話をしました。


「鸕野……皇后だったな。」

「帝、鸕野のままでも……どちらでも……お気になさらずにお呼びください。」

「うぬ。朕はこれからも様々な出来事を、そなたに話すぞ。」

「はい。」

「そなたと話していると見えてくるものがある。」

「左様でございますか…。」

「そなたは政を成すに適した考えを持っておるのう。」

「有難いお言葉を頂戴いたしました。」

「これからも頼む。」

「はい。承知いたしました。」



天武天皇8年(679年)5月5日に天武天皇と皇后は天武の子4人と天智の子2人とともに吉野宮に赴き、6日にそこで誓いを立てさせました。天皇・皇后は6人を父母を同じくする子のように遇し、子はともに協力するという誓約です。

6人は平等ではなく、草壁皇子が最初、大津皇子が次、最年長の高市皇子が3番目に誓いを立てたのです。

天智天皇の子は皇嗣(こうし)から外され冷遇されました。

その一方で、天武の子である草壁は天智天皇の娘・阿閉皇女(あへのひめみこ)と、大津は天智天皇の娘・山辺皇女(やまのべのひめみこ)と、天智天皇の子川島皇子は天武天皇の娘・泊瀬部皇女(はつせべのひめみこ)との婚姻をさせたのです。


此度(こたび)は朕の息子に跡を継がせるための布石である。

 ただ、兄上の子との繋がりを強く結ばねばならない。」

「そのための婚姻でございますね。」

「そうだ。」

「大友皇子を殺めたこと、天智帝の皇子たちへの皇嗣(こうし)からの排除。

 婚姻で天武帝への蟠りが薄まりましょうか?」

「薄められぬと申すのか!?」

「どうでしょうか?」

「何が言いたい。」

「婚姻で天智帝の皇子たちとの蟠りが薄れると感じられない人も

 居ることでしょう。たかが婚姻でございます。」

「たかが? そなたがそれを言うのかっ!」

「はい。私が大海人皇子様の妃になって強まりましたか?

 強まらずに戦になったではございませんか?

 政権は続きまする。

 帝のお力がお強い故…… ですが、永遠とは言い難いと思います。」

「乱を起こしたことを……そなたは………。」

「起きなければ良かったと思っておりまする。」

「そなた……… そなたは皇后ぞ!」

「はい。天武帝の皇后にございます。

 ですが、戦は避けて頂きたかったのでございます。」

「そなた」

「数多の! 兵が命を失いました。

 数多の失われた命の上に私は立っております。皇后として…

 故に、婚姻が繋がっていると…安堵できません。」

「皇后……。」

「帝、二度と戦が無いようにして頂きたく存じます。

 そのために、婚姻だけではない繋がりをお考え頂きますよう

 伏してお願い申し上げます。」

「……そなたには……敵わぬわ……。

 考慮しよう。」

「ありがとう存じます。」


鸕野讚良皇后の中に居る香澄は、皇子、皇女たちの婚姻を聞いた時、「なんという近親婚!」と思ったのです。

令和では考えられないことです。

叔父と姪の間に生まれた子が、従姉妹と結婚するのです。

先ず、叔父と姪の結婚自体が有り得ません。

それ自体が「めっちゃ怖いくらいタブーだわ。」とその渦中に身を置かねばならなかった香澄の感情は、その上に重ねての近親婚を行なった古代の常識に愕然としました。


天皇は伊勢神宮に大伯皇女(おおくのひめみこ)を斎王として仕えさせました。

大伯皇女(おおくのひめみこ)の弟、大津皇子は姉との別れを惜しみました。


「姉上、もう行かれるのですか?」

「ええ、大津、くれぐれも……風邪など召しませんよう…。」

「はい。 姉上、また会えますか?」

「ええ、会いましょうね。必ず……。」

「姉上! お身体、お気を付け下さい。」

「あなたこそ………。」


この別れが姉弟の最後にならないようにしたいと……

しなければならないと……鸕野讚良皇后は思いました。

皇子たちは健やかに育ち、婚姻を結ぶまでになったことは嬉しいことでしたが……令和の香澄の感情は

複雑でした。

時が進むにつれて大津皇子が謀反の疑いにより逝ってしまう日が近づいているのです。

鸕野讚良皇后が無慈悲に大津皇子を死に追いやったのなら、その日を迎えるのは恐ろしいのです。

回避するために何が出来るのか、何をすれば良いのかを見つけなければなりません。


思いついたのは、自分の息子・草壁皇子を天皇にしないことくらいでした。

皇太子にしない、大津皇子と同じ立場が望ましいのですが……高市皇子は母の身分が低いために天王になれません。

理想は高市皇子の天皇への即位です。

壬申の乱に出陣したのは高市皇子だけです。

身分、母の身分を問わないようにするのは……どうすれば良いのでしょうか?

皇嗣(こうし)=皇位継承権、皇太子や皇太弟

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