結衣
香澄は結衣に会いました。
結衣は無事出産を終えて母になり母としての美しさが、その笑顔まで輝かせていました。
「香澄ちゃん、良かったわ。」
「結衣さん、本当にご迷惑をお掛けして………。」
「迷惑なんか掛けてないわよ。」
「それから、おめでとうございます。」
「ありがとう。香澄ちゃんが居なくなった時に出産なんて……。」
「無事に生まれて来てくれて本当に良かったです。
ご出産の直ぐ後なのに、押しかけてしまって…………。」
「いいのよ。病院に居る時の方が私は楽できるもの。
実家に帰ってからの方が大変なのよ。たぶん睡眠不足になるわ。
それと、田辺のお義父さん、お義母さんにとって初孫でしょう。
病院だったら短時間で帰られるけれども、実家で1ヶ月過ごした後は
田辺にも少し顔を出して欲しいって今から言われてるのよ。
その頃の方が、私は大変なの。
病院だったら、夜、子どもを見て貰えるでしょう。
眠れるのよね。これ、凄く大きいのよ。」
「そうでしょうね。」
「香澄ちゃん……私が感じたことを一方的に言うわね。」
「はい。」
「貴女が思って言った言葉は間違っていないのよ。
死んでいい人なんて一人もいないもの。
私も同じように怒るわ。
ねぇ、医師や看護師のような人の命を守る、助けるのが仕事だとね。
先ず、人の死に何度も直面するの。初めての時、私も、ま~くんも泣いたのよ。
大きな病院だと人の死は身近なのよ。
最初は泣いて乗り越えられないんじゃないかと思うほど………。
でも、そのうち慣れてくるっていうと語弊があるけれども、最初の頃のように
泣かなくなるの。でも、後悔したり、反省したり、大泣きしなくなるだけ……。
慣れてはいけないけれども、乗り越えられなかったら医療従事者は務まらない。
だから、大泣きしなくなるのね。
そしてね、医療従事者は命を預かる身だからね。
簡単に『亡くなって良かった。』なんて、思わない。
そんなことを思う人は医療従事者には不適格だと私は思うの。
それは、香澄ちゃんの仕事でも同じじゃないのかしら?
香澄ちゃんの仕事は子どもの命を守る仕事だと私は思うから………。
だから、香澄ちゃんがショックだったのが私は分かるの。
香澄ちゃん、間違ってないよ。ショックを受けて当たり前だと思うわ。」
「結衣さん…………。ありがとうございます。」
香澄は泣いてしまいました。
香澄の心を癒してくれたのは結衣が産んだ赤ちゃんでした。
「可愛い♡ 」
「でしょう! 私の天使♡ 」
「正樹さんは、このままアフリカなんですか?」
「ううん、ま~くんは来年の春に帰って来るの。」
「そうなんですね。」
「日本で育てるのよ。二人で…………。」
「いいですね。」
「でしょ!」
「………………あの…。」
「なぁに?」
「あの………ま~くんって?」
「あ……っとぉ……出ちゃったか…… 正樹さんと二人っきりの時の呼び名。」
「可愛い呼び名ですね。」
「内緒にしておいてね。」
「はい。」
赤ちゃんの寝顔に癒されて香澄は帰路に就きました。




