帰宅
奈良から家に帰る時、智樹は家の前まで送ってくれました。
そして、家に入る香澄を見守りました。
智樹が見てくれていることが香澄の勇気の源でした。
家を飛び出したこと後悔をしていたのです。
そして、家に帰る勇気がなかなか出なかったのです。
いい年をした大人が、飛び出してしまうなんて!と自分自身が恥ずかくて………。
両親に会わせる顔が無いと思っています。
真帆にも………。
玄関ドアを開ける勇気が必要でした。
「香澄ちゃん、大丈夫だよ。」
「先輩……。」
「心配しただけだからね。君の無事を待ち望んでいらっしゃるのだから!」
「先輩……私……。」
「大丈夫!」
「………はい。」
智樹が香澄の背中をそっと押しました。
香澄は押されたままに玄関前に立ち、ふ~っと息を大きく吐きました。
香澄は勇気を出して玄関ドアを開けました。
玄関には父と母が居ました。
泣いている母、その隣にいる父も……。
母が抱きしめました。
香澄は何度も「ごめんなさい。」を言いました。
父が送ってくれた智樹のことを思い出したように、玄関ドアを開けました。
玄関前には、もう智樹はいませんでした。
「田辺君、ありがとう。」
父は誰も居ない玄関前で頭を深く下げました。
母も香澄を抱きしめながら、頭を下げました。
先ほどまで、そこに居た智樹の姿は見えませんでした。
香澄は走り出して、智樹の姿を探しました。
もう、そこには………居ません。
「先輩……… ありがとうございました。」
香澄も居ない人に向かって頭を下げました。
香澄は真帆に電話をして謝りました。
まるで高校生のようだったと、大人げなかったと、謝りました。
「香澄がどんなに亡くなった子を大事に思ったかだよ。
大事に思ったから、腹が立ったのよね。
自分の親が言ったことだったから………。
分かるよ。高校生みたいだとか、いいじゃん。そんなこと。
何も気にしないで! ねっ!
でも、田辺先輩が居てくれて本当に良かったわ。
見つけてくれたんだもん。感謝だぁ~!」
「うん。」
翌日、結衣に連絡して会う約束をしました。




