衝動的な家出
香澄にとって担当したお子さんが亡くなったのは初めてでした。
しかも、母親からの相談初日でした。
初めての相談を受ける日に…………。
香澄は何も出来なかったという事実に打ちのめされました。
母親と父親の泣き声が耳に残っています。
もうお子さんが亡くなったので母親との関係は無くなりました。
無くなりましたが、香澄は何かしなければ………という気持ちで出来得ることを考えました。
母親の心が特に気になるのです。
母親は「殺してしまった。」と電話で言ったのです。
きっと、家に置いて買い物に出たことを悔やんでいます。
殺してなどいないのに、殺したと言ったことが物語っています。
「お母さん、自分を責めさいなんでいらっしゃる………。
誰のせいでも無いのに…………。
どんなにお母さんのせいじゃありません!って周囲の人が言っても
耳に届かない!…………お母さんを助けないと…………。
どうすれば? 何をすれば?
私は頼りないなぁ…………。情けない……………。
ごめんね。もう少し早かったら、助けられたかもしれないのに……
ごめんね。………ごめん。」
泣きながら、亡くなった子に詫び続けました。
香澄を心配した両親が言いました。
「香澄、仕方がなかったのよ。
可哀想だけれども、重度の障害で………いつか親御さんは先に亡くなる。
その後のことを考えたら、良かったのかもしれない…………。」
「良かったのかもしれない?
何が良かったのかもしれないよ!
どんな状況でも生きる権利は誰にもあるのよ!
どんな子でも生きる権利を奪うようなそんな社会のどこが……
どこがいい社会なのよ!」
「香澄、落ち着きなさい。」
「落ち着いているわ。落ち着いてる。
お父さん、お母さんが、死んでよかったみたいなこと言うなんて!
あの子は生きちゃ駄目だったの? 生きちゃ駄目な子だったの?
そんな子は居ないのよ! 生きちゃ駄目なんて言わないで!!」
香澄は家を飛び出しました。
泣きながら歩き続けました。
行く当てもなく…………。
真帆に香澄の両親から電話がありました。
香澄が家を飛び出した理由も聞きました。
真帆は子どもを自分の親に預けて、夫にも連絡を入れて、香澄を探し出そうとしました。
その時に思いだしたのです。
香澄が前に通っていた精神科の病院のことを………。
子どもを失った母親に必要になるかもしれないし、もしかしたら香澄にとっても必要になるかもしれないと………。
「あれは、田辺先輩のお兄さんの紹介だった………。
田辺先輩のお兄さんに頼ろうかなぁ。」
真帆は香澄のご両親のうち、お母さんが家に残っていて、お父さんが探しに出たと聞いています。
たぶん闇雲に探していることでしょう。
真帆は香澄が行きそうな場所を探すことにしました。
「図書館! どこなんだろう? それも田辺先輩に聞こう!」
真帆は家を出てから、直ぐに智樹に電話をしました。




