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慕情  作者: yukko
令和
119/166

茉美と結衣

智樹のことを好きな女の子が居ます。

同じ会社で同じ部署の女の子です。

何かにつけて話しかけられて、昼休みも傍に来て………。

智樹にとっては疲れる存在でした。

そんな女の子が告白をしてきたのは2度目でした。


⦅2度も勇気があるな。⦆


智樹はそう思っていました。

今までも何人かの女の子に「好きです。付き合ってください。」と告白されたり、手紙を渡されたりしましたが、断るとそれで終わりました。

それが、2度目の「好きです。」という言葉を聞いた時に不思議な子だと思ったのです。


「一度、断ったよね。」

「はい。」

「断ったのに、何故、また?」

「田辺さんに彼女が居ないと分かったからです。」

「………居ないけれど、君と付き合う気は無いよ。」

「絶対に無いですか?」

「絶対に………。」

「もし、ほんの僅かでも可能性があったら、今は好きでなくても…………

 好きになるかもしれないですよね。」

「うう~~ん。その自信はどこから来るの?」

「好きだからです。可能性はゼロではないですよね。」

「うう~~ん。限りなくゼロに近いと思わないの?」

「どうしてですか?」

「前に断ったでしょう? 断ったからだけど………。」

「私は……私は、田辺さんでないと嫌なんですっ!」

「あの……… 僕の気持ちは? 考慮してくれないの?」

「田辺さん、好きすぎて、もう私、可笑しくなっちゃいそうなんです。」

「……………………………………………………。」

「可笑しくなっちゃったら、何するか分かんなくなりそうです。」

「いやいや、ちょっと待って! それ、脅し?」

「違います。今の私の気持ちです。」

「それ、脅しだよ。僕にすれば………。兎に角、帰って!ねっ。」

「嫌ですぅ~!」


そう言って、智樹の腕に抱き付いて放そうとしなかったのです。

智樹は振りほどいて言いました。


「ごめん! 僕は付き合ってないけど、好きな人が居るから!」

「嘘よっ!」

「嘘じゃないよ。もう長い片思いなんだ。」

「じゃあ、私と!」

「無理だよ。君と真逆なんだ。僕が好きな人……。

 だから、無理だから! 悪いけれど、もっと、いい人を見つけて!」


そう言って智樹は全力疾走して帰宅しました。

結衣に話すと、「強烈ね!」と笑い転げています。

その時に茉美が「香澄お姉ちゃんとは、どうなったの?」と聞いてきました。

智樹がビクッとして少し硬直した様子でした。


「どうもしないよ。」

「付き合ってないの?」

「付き合ってないよ。」

「どうして? ねぇ、どうして?」

「説明は難しいよ。」

「そうよ。茉美ちゃん、これは智お兄ちゃんの大切な心の話だからね。

 茉美ちゃんは見守っていてね。」

「ふ~~ん。見守る。不本意だけど、結衣お姉ちゃんの言うことだから聞く。」

「茉美、お前こそ、彼とどんな付き合いをしてるんだ?」

「どんなって?」

「まぁ、あれだ。………あれ……。」

「キスしたか?ってこと?」

「お前! キ……ス………。高校1年生だぞ。」

「高校1年生とか関係ないもん。」

「したのか?」

「したよ!」

「あ…………。」

「智兄ちゃん、どしたの?」

「あのね。茉美ちゃん、智お兄ちゃんは今そっとしてあげて、ね。」

「うん?」

「茉美! お前………お前………あの……なんだ……高校生らしいお付き合いをしなさい!」

「高校生らしい?」

「そうだ! 高校生らしいお付き合いだ!」

「何が?」

「だから………その……なんだ………あれを……だな……。」

「あぁ、SEXのことね。」

「え……………………………。」

「茉美ちゃん、子どもが出来るようなことは駄目よ。それと、性病もね。

 だから、必ずコンドームを使うように! それを使ってくれない男なら速攻で

 別れるのよ! いいわね。」

「はい!」


「どしたの? 智兄ちゃん。」

「茉美ちゃん、お兄ちゃんね。今、とっても、とぉ~ってもショックだったの。

 優しく見守ってあげてね。」

「うん。」


「智樹さん、大丈夫よ。茉美ちゃん、妊娠したりしないから、私、教えてるか

 らね。」

「結衣さん、僕は、僕は、今、茉美の妊娠とかじゃなくて……彼と……そういう

 ああ―――っ! 可愛い妹なのに、いつの間にか…くそっ!」

「妹は生きていてくれれば、いつかは女になるのよ。

 正樹さんも、貴方も兄弟そろってシスコンだったのね。」


結衣の笑い声は続きました。

茉美と結衣のお陰で、時間を楽しく過ごせていると、心密かに感謝している智樹なのです。

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