恋のキューピット④
宝塚歌劇を4人で見ている時、香澄は思いました。
⦅もしかしたら、私の前の令和の記憶にある宝塚歌劇の舞台
茉美ちゃんと観た? そしたら……それは…………
それを確かめたくて観るって決めたのよ。
でも、それが分かったら…………私は、どうしたいの?⦆
舞台はミュージカルとレビューというショーでした。
華やかな舞台で踊り歌う人達……。
「ひととき……現実を忘れられるの。」と、結衣は言いました。
香澄も「そうかもしれない。」と思いました。
出来れば記憶にある「あかねさす紫の花」であれば………とも、香澄は思いました。
ミュージカルとレビューの間に休憩がありました。
お手洗いに行き、席に戻ると、隣の席の智樹が口を開きました。
「香澄ちゃん、ごめんね。茉美の我儘で……迷惑だったと思う。
ごめんね。」
「そんなことはありません。」
すると、茉美が言いました。
「智兄ちゃん、聞こえてるから……。
香澄お姉ちゃん、ありがとう。嬉しいなぁ~。」
「茉美ちゃんは大好きなのよね。宝塚……。」
「うん。」
「誰と観に来るの? いつもは………。」
「お父さんとお母さんが多いかな? でもね、お兄ちゃん二人とのことも多いの。
お兄ちゃん二人と私の時もあったし、智兄ちゃんと紗奈お姉ちゃんと私の時も
あったの。智兄ちゃんとは結構一緒に来てるの。」
「そうなのね。」
「茉美ちゃん、始まるわよ。」
「はぁ~い。」
観劇が終わって、そのまま帰宅しようと思っていた智樹は香澄からの誘いに驚きます。
「あの…なんて?」
「もう一度言います。……… 先輩、私、奈良に行きたいんです。
飛鳥を感じたいんです。……それで…………お願いです。………
……先輩、お願いです。……一緒に………あの……一緒に行ってください。」
「奈良へ?」
「はい。」
「僕と?」
「はい。」
「どうして? 僕?」
「飛鳥の記憶がある先輩でないと………。」
「あぁ……… そうか………。」
「駄目ですか?」
「行けばぁ~、智兄ちゃん! 飛鳥の記憶が何か分かんないけど……。」
「茉美! 大人の話に入るんじゃない!」
「はぁ~い!」
「茉美ちゃん、私と一緒に帰ろうか?」
「うん。じゃあ、香澄お姉ちゃん、バイバイ!」
「茉美ちゃん、バイバイ!」
「香澄さん、さようなら。」
「結衣さん、さようなら、ご無事にご出産なさいますように!」
「ありがとう。………智樹さん、香澄さんを送ってあげてね。」
「結衣さん!」
「お願いね。」
「………はい。結衣さん! 茉美のことお願いします。」
「茉美、我儘言ったら駄目だぞ。」
「は~い。バイバイ~!」
智樹は茉美と結衣に大きく手を振って見送りました。
振り返ると香澄が居ました。
香澄は少し頬を染めて佇んでいました。




