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慕情  作者: yukko
令和
110/166

恋のキューピット③

香澄は紗奈先輩夫婦に誘われて来ただけでした。

着いた先に正樹の妻・結衣と智樹が居たのです。


「紗奈先輩、これは……あの………。」

「紗奈! なんでここに居るんだ?」


⦅先輩、紗奈先輩のこと、もう別れて随分経つのに、()()って……

 呼び捨て…………。⦆


「それはね………香澄ちゃんと会わせるためよ。」


そう言って紗奈は香澄の背を押して智樹の前に押し出しました。

香澄は身動きできませんでした。


「香澄ちゃん、何でこんなことになったのか分からないと思うよね。

 ごめん。直ぐに帰っていいから、ここに居なくていいから、ね。」

「智兄ちゃん、この人、だぁれ? 教えてよ。」

「茉美は関係ない人だからね。」

「智樹、香澄ちゃんを連れて来たから、私の役目は終わったの。

 それから、もうお互いに呼び捨ては止めようね。

 主人の前で紗奈!って呼び捨てされたくないなぁ。」

「あ! 申し訳ございません。僕たち、ご懸念に及ぶ仲ではありません。」

「ありがとうございます。でも、懸念していませんから……僕は………。」

「ありがとうございます。これからは、苗字で呼ばさせて頂きます。」

「そうして頂けると、本音で嬉しいです。何卒今後もよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

「じゃあ、今から主人とデートだから♡ バイバイ、田辺君。」

「あぁ……さようなら、谷口さん。」

「紗奈お姉ちゃん、バイバイ! またね~。」

「茉美ちゃん、また、今度は二人+子ども2人で会おうね。」

「は~い! バイバイ!」

「香澄ちゃん、何か分からないけれど、本当にごめんね。

 もう、帰っていいんだからね。」

「待って! 香澄さん? 私、智兄ちゃんの妹の茉美です。

 初めまして、よろしくお願いします。」

「あ……初めまして、香澄です。」

「私、高校1年生なの。」

「まぁ、高校生なのね。」

「うん。お願いがあるんです。」

「何かしら?」

「茉美! 止めなさい! 迷惑だ!」

「いいじゃん。」

「いいですよ。先輩。」

「ほぉら、いいって言ってくれてるよ。」

「茉美!」

「智樹さん、いいじゃありませんか。」

「結衣さん………。」

「香澄さん、可愛い私の義妹なの。お願い。」

「結衣さん、私はお願いを聞きたいと思ってましたから、気になさらないでくだ

 さい。」

「ありがとう。」

「香澄ちゃん、無理しないで帰っていいんだからね。」

「智兄ちゃんは黙ってて!」

「茉美!」

「香澄さん、お願いが2つあるの。いいですか?」

「茉美!」

「いいですよ。何かしら?」

「1つ目は、今日、これから宝塚歌劇を観に行くんです。一緒に行ってくれます

 か?」

「いいんですか? ご一緒しても……。」

「香澄ちゃん、もう妹のことは無視していいから。」

「待って! 智樹さん、香澄ちゃんが観たかったら観ればいいんじゃないのかし

 ら?」

「そうよ。智兄ちゃんこそ邪魔しないでよ!」

「私はご一緒させていただけるなら……。」

「じゃあ、いいの? 一緒に観てくれるんですよね。」

「はい。いいですよ。御代金をお支払いさせていただきたいんですが……。」

「後で清算しましょう。」

「分かりました。」

「2つ目は……ねぇ、お名前……香澄お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」

「茉美! いい加減にしろ!」

「先輩、いいんです。」

「香澄ちゃん………。」

「茉美ちゃん、私をお姉ちゃん………って、呼んでくれるの?」

「うん!」

「ありがとう。嬉しいわ。私、一人っ子だから……。」

「じゃあ、行きましょう。みんなで観劇しに…。」

「結衣さん……。」

「ねぇ、香澄お姉ちゃん、茉美ね、宝塚大好きなの♡ でも、ちゃんと彼いるか

 ら……。彼はね、同級生なんだ。」

「そうなの…。」

「うん。それでね…………。」

「智樹さん、取り敢えず、一緒に行きましょうよ。」

「あの………今日のこと、知らなかったのは僕だけですか?」

「ううん。貴方だけじゃないわ。香澄さんも知らなかったわ。ごめんなさい。

 私は茉美ちゃんから聞いていたの。」

「そうなんですか………。」

「ごめんなさい。止めようと思ったんだけどね。茉美ちゃんだけの計画じゃ

 なかったから………。他の人が絡んでたら茉美ちゃんだけに止めてね!って言っ

 ても無理だと思ったの。」

「そうだったんですか……。すみません。御身体のこと考えたらこんなこと出来な

 いのに………。」

「いいのよ。気にしないで! ところで智樹さん、香澄さんのことだけど…………

 自分の気持ちを告げてから諦めた方がいいんじゃないかしら?」

「何を言っているんですか……。」

()()()……付かないわよ。はっきり断られた方が()()()付けられると思うの。

 どうかしら?」

「結衣さん、それは……分かってることなんで……結果は……無理だと……。」

「やってみて! 貴方のために……… たまには自分の気持ちを優先してもいいん

 じゃないかしら?」 

「結衣さん……僕は……彼女を……。」

「愛している……んでしょう。………………気持ちを伝えるのは1度きり。

 その1度がどんな結果にしても、スッキリするわ。ハッキリするから!」

「結衣さん。」

「さぁ、行きましょうよ。先ずは楽しみましょう。」

「………はい。」


結衣、茉美、そして、智樹と香澄……4人は劇場に入って行きました。

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