汚名返上
真帆が初めての子育てに必死になっていた頃、電話が架かってきました。
紗奈先輩からでした。
「真帆ちゃん、初めての子育て、どう?」
「めっちゃ睡眠不足ですぅ。」
「でしょう!」
「本当に、ひとりじゃ無理ですね。」
「そうでしょう。ともに子育てしてくれてる? ダーリンは?」
「意外とやってくれて助かったるんですよね。
紗奈先輩、ダーリンって呼んでませんけど? うちは……
先輩とこはダーリンなんですか?」
「うちも違うわよ。……って、ダーリンはどうでもいいの!」
「あのヘタレが居てね。」
「ヘタレ? 誰のことですか?」
「智樹よ!」
「田辺先輩ですか?」
「そう、ちょっと香澄ちゃんの署名してたでしょう。」
「はい。あの時に智樹から連絡を貰って、うちの舅に繋いだのよね。」
「そうだったんですか?」
「そうなのよ。署名を集めても法律を変えないといけないでしょう。
それで、国会議員に渡すためにね。」
「ちょっと、凄い舅さんですね。」
「舅が凄いのじゃなくて、舅の御学友が今まで署名とかして、それを国会議員に渡
したりしてたのね。それで、色々と学ばないと進まないでしょ。」
「なるほど~。」
「でっ、繋いだのよね。それはそれで渡せて、一応、形にはなったのね。
集めた署名は誰に渡したかを報告しないといけないでしょう。」
「そうですね。」
「それをし終えて、可笑しいのよ。智樹……」
「何が可笑しいんですか?」
「元気が無いって言うか、覇気がないって言うか……。取り敢えず生きてるって感
じなのよ。」
「身体を壊されたんですか?」
「違うと思うの。たぶん、香澄ちゃん……。」
「へ? 香澄ですか?」
「うん。実はね、私と智樹が分かれる原因は、智樹が香澄ちゃんのことを好きに
なったからなのね。」
「えっ?」
「私はちょっと嫌な子だったのね。サッカー部の皆の前で智樹に告ったの。
智樹は優しいから断らないって確信してたのね。」
「げっ!」
「げっ!って何よ。」
「すみません。……で、付き合ったんですか?」
「そうなの。私の思惑通りに進んだのよ。でも、香澄ちゃんを一目見て恋に落ちた
みたい!……直ぐに分かったし、先は無いって言うことも分かってたから…。」
「そりゃそうですよね。ほぼ無理強いしてのお付き合いの始まりですもんね。」
「真帆ちゃん、静かに聞いてくれるかな?」
「はい! 先輩!」
「そんな風に私を振ったくせに、今まで何にもして来なかったのよ。あいつ!」
「確かに!」
「ヘタレでしょう!」
「そうですね。」
「ヘタレという汚名を返上させるのよ。」
「あの……見えてこないんですけど……。誰が田辺先輩の汚名を返上させるんです
か?」
「私たちよ。」
「たち……私も込みですね。」
「勿論よ。頑張りましょうね。」
「あ…… はい。」
紗奈先輩は私たちで二人を会わせよう!と言いました。
真帆は不安です。




