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慕情  作者: yukko
令和
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香澄

香澄は2025年の春から児童相談所内で仕事が変わりました。

児童相談所の業務は多岐に渡っており、親と何らかの理由で暮らせない子を預かること、その子を施設に入所させること、虐待に遭った子を保護すること、その後の対応をすること、非行に走った子のこと、発達障害児や知的障害児そして身体障害児の障害手帳の発行、及び相談窓口etc.


そんな多岐に渡る仕事の中の今までは施設関連だったのですが、これからは障害児関連の仕事になったのです。

学びが増えました。

施設に入所する子どもの親とは違うことが多く……障害児の親、特に母親は自分を責めています。

健常に産んであげられなくてごめんなさい!と責めています。

そこからのスタートなのです。そして、多くの母親が必死になって学ぶのです。障害特性などを……。

それが施設に入所する子の親と少し違うような気がしている香澄です。

特に親が虐待している場合は、全く違うと香澄は思っています。

今までと少し違うのは、子どもにより多く寄り添うと思っていたのが、前の仕事でした。

でも、今は母親の気持ちに今までよりも寄り添わないと、母親が自分を責めて追い詰めてしまうのではないかと思うことがあったからでした。



仕事が忙しければ忙しいほどに休日は穴が開いたように寂しくなるのです。

友達に会いたいけれども、子育てと仕事の両立で忙しい友達に無理を言えないから諦めよう!と香澄は寂しさを紛らわせられない休日を送っています。


なんとなく出かけるにしても、出掛ける先がありません。

前は図書館に行っていましたが、今は行く気持ちになれないのです。

忙しいと正樹への想いも、あの飛鳥の雄鹿への想いも薄れます。

ただ、休日は寂しいのです。

そんな時は薄れてきたと思っている想いが湧いて出てきます。

そんな時に思い出すのが、智樹の言葉です。


「飛鳥の記憶を大切にして、それから、今……これからは、その記憶に引っ張られ

 ないようにね。」


「前世の記憶が影響して、今の人との出逢いや関りを無意識に排除してしまって

 いるのではないか?って思うんだ。

 僕自身もこれから先は、今を大切にしようと思ってるんだ。」


智樹の言葉が胸に突き刺さったままでした。


⦅私は前世の記憶が影響しすぎているということ?

 それで見えなくなっていると…いうこと?

 今を大切に……か……。

 飛鳥には戻れないし、、もう誰も居ないわ。

 ひとり……ね。⦆

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