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慕情  作者: yukko
令和
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想い

正樹夫婦に会って、智樹のことを聞いた時、罪悪感が湧き出てきました。

それを忘れようと無意識にしていたことも、あの日気づかされました。

正樹夫婦が「智樹が変だ。」と感じたのは、智樹と会ってカラオケで話をした日以降なのか、どうかを聞く勇気がありませんでした。

智樹と会った最後の日のことを話しませんでした。

何故、話せなかったのか……それは前世の話をしたくなかったからです。

智樹が正樹に話したのは、飛鳥時代への転生でした。

その前の本当の最初の智樹の人生を、前の令和の智樹の人生を、智樹が話していなかったからです。

智樹が話していないことを香澄が話せないから……話さなかったのです。

でも、それだけだったのか?と日を追うごとにその思いが強くなっていく香澄でした。


智樹がどんな風に変なのかも分かりません。

知ろうとしなかったのです。

正樹夫婦から聞こうとしなかったのです。

何故か………怖かったから………。

香澄は怖かったのです。智樹の様子が前と違うことが怖かったのです。

想像できないから怖かったのと、自分のせいで変わってしまったのではないかという怖さとが入り乱れています。


智樹が言っていた「飛鳥の雄鹿への想いに引っ張られている」は、そうだと香澄自身も思っています。

智樹が言っていた「飛鳥の雄鹿に拘っている」も、その通りだと香澄自身は思っています。

だから、正樹のことも好きだと思ったのは、雄鹿への慕情だったと分かっています。

雄鹿への想いが元だと分かっています。

どうしようもないのです。

嬉しかったのですから……正樹が大和三山の写真を撮って来てくれたことが嬉しかったのですから……。

でも、それを正樹に、「大和三山の写真を撮って来て、渡してあげれば香澄が喜ぶ。」と教えたのが智樹だったと知らなかったのです。

知っていれば違っていたのでしょうか?……香澄には分かりません。


智樹が言う通りに、飛鳥の雄鹿への想いが全てです。

香澄は分かっています。

分かっていても今は……雄鹿への想いを消すことは難しいと香澄は思います。

いつか、遠い未来には薄れていくのでしょう。


ただ、香澄は智樹のことが気になっています。

「変になった。」というのは、何だろうか?

智樹はどうしているのだろうか?

正樹夫婦から聞いたことが気になっています。

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