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アイドル王子(自作自演)と、深窓の姫君(余計なコブ付き)の、【偽装結婚】?!  作者: 工藤 でん
第六章 いや、どうしてこうなった

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国営軍、来襲

――ジュードが独断でミケントン軍を追った。


報告を受けて、エドワードは深く息を吐いた。息と一緒に「んああぁぁ」という魂の声が漏れた。やるせなさが言語化しなかった。「何してくれてんだよお」という意味のことが言いたかったのだ。

ミケントン軍が放った火事を、鎮火したあとだ。



ナプルの町の火事は主に職人街で起きていた。特に山側の奥地にある工場の被害が大きいとのことだった。現在調査隊が調査を行っている。


火事の被害は一般人住宅にも影響を及ぼしていた。家を失った人々のために、北側の広場に大きい天幕を張り、一時的な避難所を作った。不安気な顔の町民たちが数多く集まってきている。そんな彼らに、ブレイカーの部下たちが炊き出しも行い始めた。

このゴロツキたちは、こういう手配は本当に手早い。おかげて民衆のパニックは収まりつつあった。



エドワードは鎮火した工場の前にある石に座って報告を受けていた。エドワードも消火活動を手伝ったため、あちこちに煤がついていた。その場にいる全員同じような姿である。


「ジュードはいつ頃出陣したんだ?」

「三時間ほど前でしょうか」

「追いついて、交戦してる頃か。ブレイカー、援軍出せる?」

「出せねえこともねえが……」


ブレイカーの姿ももちろん煤だらけだ。しかしワイルドさが加わってより男らしく見えるのは、ブレイカーの生き様が表れているのだろう。火事だの喧嘩だのは、ブレイカーの人生の主軸を占めている。


「援軍となると、出せて百いくかどうか」

「……消火活動の直後だもんな」

「徴兵された新兵は軒並みだめだな。疲れて動けねえ。他にも火事場泥棒的な奴も出てくるから、自警団と連携して哨戒スケジュール組みてえし」

「ううー………」

「無理して出すか?」

「……出さない訳にはいかないだろう」


予想外とはいえ出陣している部隊がいるのだ。援軍を出さないと、ジュード隊が引き際を見失う可能性がある。率いた人数からして完勝はありえないからだ。


面倒なことしてくれたよなあ、とエドワードはがっくりと肩を落とした。

エドワードの目線の先にはひたすら縮こまっているカリンがいた。ジュードと同じマフマクン領の兵士として、いたたまれないのだろう。


確かにここでミケントン軍に大きな打撃が加われば、ミケントンも再起に時間がかかるだろうし、もしくは降伏してくるかもしれない。

もしかして、カリンにいい所見せたいから出陣した、とかじゃないだろうなあ。と、先日のジュードの告白を思い出してエドワードは疑いたくなった。仕事と私情は別にする奴だと信じたいが、常に当て擦られていた立場としては、疑いたくもなるものだ。



マシューが突然ピリッと辺りを見渡した。もっさりたした金髪がすかさずエドワードの前に現れる。ざわざわと兵たちの様子にも変化が起こっていた。

ここで何かが起きたようではないが。


哨戒をしていた兵士がすぐに駆けつけてきた。心持ち顔色が青かった。


「エドワード殿下に申し上げます!」

「聞こう」

「ナプルの町に向けて、ジュード隊の軍勢が敗走してきております」

「敗走……ジュードはミケントン軍に負けたのか」

「ジュード隊を追ってくるのは、ミケントン軍ではありません……こ、国営軍です!」

「国営軍……?」


エドワードは息を飲んだ。

国営軍は、国が抱えた軍隊だ。戦うことを目的に鍛錬された、精鋭が揃う集団である。

もちろん国からの指示がなければ動かせない。その国営軍がこちらに向かってきているということは……国から敵と認定されたに等しい。


報告する兵士は動揺していた。実際に国営軍の進軍を目撃したのだろう。


「わ、我々に、国営軍が差し向けられました! ナプルの町に向けて進軍してきています。

我々は、国に対して反逆をしたことになるのでしょうか?!」


ブレイカーが立ち上がった。

ギョロリとした目で伝令を睨みつけた。それだけで底知れない威圧感が増した。


「浮き足立つな。我々は逆賊では無い。

兵士たちに伝達。エドワード王子を信じて冷静に待機すること。ジュード隊には援軍を出す。

行け!」


伝令は慌てて戻って行った。

マシューはすかさず精鋭を確保するべく動き出した。自ら援軍に参加するつもりだろう。

金色の頭が一瞬振り返って、ブレイカーんとこ、とエドワードに指示を飛ばした。ブレイカーの傍で安全を確保しろ、ということだ。


エドワードだって安全な場所から離れる気はない。マシューが前線に立つと言うなら、嫌がられたってブレイカーについてまわるつもりだ。


「どういうことだと思う、ブレイカー」

「ミケントンやオーサが国営軍を動かせるとは思えない。動いたとすれば、サミュエル王太子か」

「王太子であっても、国営軍は簡単には動かせないはずだ」

「その、国営軍を動かすには、どういう流れを取るんだ?」


緊張感のあるブレイカーの声音は久しぶりに聞いた。エドワードの身も引き締まる思いがした。


懸命に軍の司令について思い出していた。座学でカルロスからギュウギュウに詰め込まれた知識の一部だ。

コメカミに手を当てながら、エドワードはブレイカーと城壁へ移動し始めた。高いところから戦局を見るつもりなのだ。

思い出したことを、自分に確認しながら口にした。


「派兵が必要な事案があったとして。それが議会にかけられて国王の承認を得たら、軍務卿と、王国騎士団総裁のマキシウエル殿下の決済印をもらう。それがそろったら、軍に司令が行く。

そこで初めて国営軍が動かせる」

「軍務卿とマキシウエル殿下のハンコな。サミュエル王太子がもちかけて、ホイホイ押すと思うか?」

「さすがに無理だろうな。特にマキシウエル殿下は謹直で有名だ。あの人がトップにいるから、軍は癒着や腐敗せずに保たれている、って説もある」

「じゃあ、どうして国営軍が出動したんだ?」


エドワードは眉をひそめた。

そんなこと、俺が知りたい。


城壁の南端に登り、上から見下ろすと、敗走してくるジュード隊が見えた。その後ろから追撃してくる軍団の旗は、スファルト王国の国旗。海と太陽を表した、見慣れた国旗だった。


本当に、国の旗を掲げた軍隊が、こちらに迫ってきている。



その国営軍の横腹に、数十騎の騎兵集団が飛び込んで行った。

マシュー率いる、ナプルの町の援軍だ。「もう出たのか、早え」とブレイカーが唸った。


援軍は国営軍を相手にさんざん暴れ引っ掻き回し、混乱に陥れた。マシューは兜を被らず金髪を晒して戦っている。マシューの周りは敵が避けていき、それがさらに混乱を生じていた。『金髪の小悪魔』相手に戦いたい猛者はいないらしい。

十分暴れたと悟ったマシューは、さっさと撤退していった。


その隙にジュード隊はナプルへ帰還できたのだが。





ジュード隊と、マシュー率いる援軍がナプルに帰還したことを確認したエドワードは、ジュードに面会するために城壁を降りた。

ちょうどそのタイミングで、火事の実証見聞を行っていた隊が報告に訪れた。火事場の見聞のせいで、隊員たちは真っ黒だった。


「報告、よろしいですか」

「え、今?!」

「かなり、重要案件です」

「うん。急ぎで」


エドワードは立ち止まらずに言った。隊員たちはエドワードについて、続く。


「はっ。

工場より五名の遺体が発見されました。死因はいずれも、拘束されてからの刺殺ですね」

「……は?」

「ミケントンはあの工場の痕跡を無くしたかったのだと思われます。我々の消火が早かったため、物証が出ました」

「物証って」

「オーサ公爵の、新しい財源ですよ」


さすがにエドワードは立ち止まった。先に行こうとするブレイカーの腕を掴んで立ちどまらせた。ブレイカーも聞いていた方がいいし、そもそも今はエドワードの護衛だ。

まかせろ、とブレイカーの部下たちがジュード隊の元へ向かった。


隊員が煤で汚れた金貨をエドワードに見せた。ただ汚れた金貨に見えるが。


「ニセ金です」

「……なんだと」

「溶けかけですが、金型も押さえました」

「じゃあ、あそこは……ミケントンが焼き尽くしたかったものは」

「ニセ金工場です……」

「ウソだろ……」

「おそらく殺されたのは、ニセ金造りの作業員でしょう。口を封じられましたね」


周辺国家は同じ貨幣で動いている設定です。ニセ金が流通しちゃうと、お金への信用が低くなる。ニセ金を出したスファルト王国の信用が落ちちゃう。これはマズイ。


……という説明を、作中で書きたかった。でも主眼が経済じゃないから。主眼はらぶきゅんだから。らぶきゅんから随分遠い所にいるけどねえ(T^T)

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