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アイドル王子(自作自演)と、深窓の姫君(余計なコブ付き)の、【偽装結婚】?!  作者: 工藤 でん
第六章 いや、どうしてこうなった

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67/107

優先順位

Ep.58から、連続でリアクションいただいております。あざーーーっっす!!!

創作のモチベが維持できているのは皆様のおかげです。

ああ誰だこれ書き始めたヤツ、厄介な方向に向かいやがって、って書いたのオレだー!と時々なるので、嬉しいんです。

ほんとにほんとに、嬉しい。

事態が急変したのは明け方のことだった。


エドワードは深く寝入っているところを、隣りに寝ていたマシューに蹴り起こされた。マシューはすでに鎧を身につけようとしていた。


「マシュー、何? なんか脇腹すごく痛い」

「蹴られる前に起きろよ。緊張感ねえな。

何か起きてる。支度しろ。顔も描く」

「何が起きてるんだ?」

「分かんねえ」


マシューに出遅れながらも支度を終えたエドワードは、天幕を出た。そこへちょうど哨戒担当の隊長が駆けつけてきた。ナプルの町を寝ずに哨戒していたはずである。


「エドワード王子に申し上げます!

ナプルの町南側で火災が発生。同時にミケントン軍が南門より離脱しています!」

「町に火を放って逃げ出したか」

「ミケントンのおっさんがやりそうな手だな」

「北と西の城門は町民の手で開けられ次々と避難しています。ですが、かなりパニックな状況です。

ご指示を!」


エドワードは隊長の顔を見返した。緊張で強ばっているのが自分でもわかった。

指示を出すのは俺だ。

すぐにやらなければいけないこと。

緊急事態だ。迅速に指示を出さなければいけない。


こういう時、カルロスがいないのがもどかしい。いつも指示待ちだった自分を、あの時に戻ってどつきたい。どつき回して、なぜあの時にあの指示を飛ばしたのか、カルロスに教えを乞いたい。


エドワードは思いついたことをすぐに指示した。


「町民の避難誘導と消火を優先。逃げ出した町民たちはできるだけ遠くに誘導してくれ」

「エディ、ミケントン撃つなら今が好機」

「あ、そうか」


マシューの言葉も正しい。

戦略的に考えればミケントンを撃つのが、最優先だろう。

だがナプルの町民は、助けなければ。彼らはミケントンのとばっちりを被っただけなんだから。


「……消火活動を、全力で」

「わかった」

「エドワード王子、それは違う!」


駆けつけてきたジュードがエドワードに詰め寄った。エドワードの胸ぐらを掴もうとした手は辛うじて下ろされた。ジュードの目が爛々とエドワードに突き刺さった。


「全軍でもってミケントンを撃つべきだ。数ならこちらが優勢だ。今なら壊滅に追いやれる」

「……わかっている。だけど、火事の被害者を最小限にしないと」

「ミケントン軍がほかの貴族軍と結託して再攻勢をかけてくるほうが、人民の被害は多くなる! なんでそれが分かんねえ!」

「それでも、目の前で助けられる命がある」

「そんなもん、ただの自己満足じゃねえか!」


ジュードの言葉に、エドワードは思わず詰まった。

自己満足と言われて、完全に否定する事はできない。大局を見ればジュードの方が理にかなっているのかもしれない。

ミケントンの暴走をここで止めてしまえば、これ以上戦う必要はなくなる。死者も怪我人も最少で済むだろう。


だけど、と、エドワードは明るくなり始めた空の向こうに、さらに明るい色を見た。町の南側が燃えている。炎の色が黒い煙とともに赤く高く上っていた。


今すぐ消火に入れば、町が燃え尽きることは無い。家を失って途方に暮れる人も減る。ミケントン軍が撤退したナプルの町は、一般人しかいないのだ。


「消火活動と、避難誘導を全力で」

「エドワード王子!」

「女子供、老人と怪我人を最優先。できるだけ町から遠ざけるんだ。避難先へ衛生班を向かわせろ。怪我の処置を頼む」

「了解しました」

「消火活動には土木隊もつけろ。延焼を防ぐために建物を壊す必要が出る。町民に協力してもらって、水場を確保。人海戦術となるだろう。全員出動だ」


指示を受けた隊長が飛ぶように去っていった。すぐに伝達が行き渡るはずだ。


自分の指示が正解なのか分からない。最善が何なのか。分かる人がいたら教えてくれ。

それでも、エドワードは燃えるナプルの町を見捨てることはできなかった。



ジュードがエドワードを睨みつけ、そのまま背を向けた。「腰抜けが」と呟いた言葉は聞かなかったことにした。

あいつ追いかけてって殴ろうかな、という風情のマシューも、いちおう止めておいた。



どちらが正しいなんて、時間が経ってみなければわからない。それを間違うことなくすぐに実行できる人が、名将と呼ばれる人なんだろう。

ここに名将はいない。現実に直面して迷って躊躇って、それでも決断しなければいけない凡人しかいないのだ。



俺は、身分が王子なだけの、ただの人だから。


先を見通す判断力。状況を冷静に見れる分析力。どちらかを選ぶのではなく、どちらも選べる、実力。


ないものばかりだ。


もっと精進しないと。もっと知識を蓄えないと。もっと力を付けないと……!


歯ぎしりして、エドワードはマシューと共にナプルの町へ向けて走り出した。





……ジュードが、自らの手勢を率いてミケントン軍を追った。

この知らせが届いたは、ナプルの町の火事があらかた鎮火した後の事だった。

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