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アイドル王子(自作自演)と、深窓の姫君(余計なコブ付き)の、【偽装結婚】?!  作者: 工藤 でん
第三章 商売繁盛したいんだ

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販売計画

「女子の思考回路についてはお任せ下さい」


カナメがゆっくりとお辞儀した。

まずはですね、とラヴィリアの傍に来て解説が始まった。


「推しが独身で、ある程度身近に感じていますと、あの王子様が私を見染めてくれたら私はお姫様♡という妄想が発生いたします」

「うわあ、本当にそんな妄想発生するんだ……」

「何を言ってるんですか、今さらですよ王子。エドワード王子は妄想でご飯食べられる女子の、言わば主食ですよ」

「妄想でご飯?主食って何? よく分かんない、やだ怖い!」

「そういう女子に課金してもらってるんじゃないですか。私もそのうちの一人ですが何か?」


カナメがキラリと目を光らせた。

エドワードは口を一文字に結んで静かに首を振った。

怖いから何も言わないでおこうと思った。



「……ですが妄想女子たちはですね。

同時にそんなことあるわけないわ、とも思っているわけです。明らかに身分が違いますから。小説『らぶきゅん♡わたしの王子様』が大ヒットした理由は、そんなことがあるわけがないことをあることにしてくれた作品だからです」

「……嫌になるほど読まされたから、知ってる」

「妄想女子たちは、小説の素敵な王子様に憧れると同時に、現実のエドワード王子にも憧れているわけです。

……実際の王子は、完璧に作られた偽物だったんですけどね」

「なんていうか、本当にごめんなさい」

「ええ。心の傷は深いです。

それはともかく、憧れの王子様を推している女子は、現実の王子様にも幸せになって欲しい、と心から願っているのです。

ですからエドワード王子、あなた様は幸せにならなければいけません」


エドワードは驚いたようにカナメを見た。そんなこと思い至りもしなかった。


「推しの幸せは自分の幸せです。ラヴィリア姫と婚約したことで幸せいっぱいのエドワード王子、というのを喧伝しましょう。売り方によって絵姿の売上は上がると考えます」

「……それは、今までになかったような絵面で、かな」

「さすがでございます。伊達に絵姿で食ってきたわけではありませんね。

ラヴィリア様を想う気持ち溢れる、ような作品が希望です」

「ラヴィを想う気持ち溢れる……」


エドワードはラヴィリアに目を向けた。清楚で可憐な少女がはにかんだようにこちらを見ていた。庶民服に引っ詰め三つ編みでも、その透明感のある美しさは隠しきれず、まともに目が合うと目が潰れるような気がした。光が、オーラが眩しすぎる。

この眩しすぎる女性との幸せいっぱいな王子の絵姿を世間に……。


「……今まで以上に滅茶苦茶恥ずかしいということは、よく分かった」

「金儲けのためです、エドワード王子」

「なあエディ。極甘モードで姫にさんざん恥ずかしいこと言っといて、今更何言ってんの?」

「マシュー、言葉を慎んでくれ。傷をエグってるから。やっと忘れられるかと思ってたのに!」


エドワードは赤くなりそうな顔をごしごし擦った。極甘モードのエドワードは、ど甘いセリフをラヴィリアに向けて連発していた。正気に戻ると穴を掘って潜り込んで、意味不明な罵詈雑言を叫びたくなってくる。

ラヴィリアはあははと乾いた笑い声を上げた。ラヴィリアだって極甘モードのエドワードは苦手なのだ。


「あとは、絵姿の効果的なシーンを考えるだけですが」

「絵姿にはラヴィの姿や顔も入るんだよね?」

「いえ、まだ早いです。匂わせる程度が萌えます。おいしさはほのかに香る所からです」

「ラヴィ、カナメの言ってることがよくわかんないんだけど」

「専門家の意見というのは大概そういうものですわ」

「ラヴィもよく分かってないんだね……」

「例えばだけど、ラヴィリア姫をイメージするものを絵の中に忍ばせる、とか?」


マシューがカナメに問うと、カナメは大きく頷いた。


「効果的ですね。連想が妄想を刺激します」

「……ラヴィ、この人の言ってる妄想が怖いんだけど」

「エディ。その辺は、無になってスルーするのがオススメですよ?」

「ラヴィリア姫のイメージ、特徴、象徴……」


マシューがラヴィリアをモサッとした前髪の向こうから眺めている。表情が読みにくいのでマシューが何を考えているのか分かりにくい。


「やっぱり、髪かなあ」

「わたくしの髪ですか?」

「アイスシルバーの髪って、あんまりこの辺で見ないよね。特に今みたいに纏めると青みがかって見えるの」


確かにただ下ろしている時はシルバーに見えるが、三つ編みに纏めたラヴィリアの髪は薄っすら青みがかっているように見える。ラヴィリアの外見で目につくのはまずここだろう。


「姫の目もきれいな青だしさ。青のイメージカラーが使えないかなあ」

「印刷のインクを青に変えるか?」

「絵姿のエディが青くなるだけだと伝わりにくい。一部だけ青とかどうよ」

「どういう感じだ?」


例えば、とマシューは鉛筆を取った。

サラサラと絵を描きつけた。


「エディとラヴィリア姫がダンスしてて、姫は後ろ姿にする。エディが髪に触れてるところ。髪だけ青くする」

「俺、変態ぽくねえか?」

「エディがラヴィリア姫を追いかけて青い髪に手を伸ばしてる」

「俺、変態ぽくねえか?」

「エディがラヴィリア姫の青い髪に顔をうずめてる」

「俺、変態じゃん!」


マシューは話しながら次々と絵にしていった。三枚の変態が現れた。変態を破り捨ててやろうとエドワードが絵に手を触れる前に、ラヴィリアが絵姿を取り上げた。

ラヴィリアは変態ぽくなった三枚を見てイメージした。モノクロの印刷で一部だけ青い色をつける。確かに目につきやすいし印象に残りやすい。


「……青い鳥、とかどうですか?」

「鳥?」

「エディがくつろいでる所に青い小さな鳥が舞い降りてきて、掲げたエディの指に止まりますの。それを可愛いなあと見つめるエディ……とか」

「あ、いいね」

「絵の中のエディは優しい目をしてます。それを見て女の子たちは、エドワード王子にこんな目で見られたい、と思うかな……どうでしょう、カナメ」

「はい、優勝です!」


カナメが拳を握って宣言した。

マシューがさらさらとラヴィリアの言うシーンを絵にした。指の先の小鳥も可愛らしい。思いついてラヴィリアは、小屋の外に咲いている青い花をつんできた。花弁を潰して絵の中の小鳥に青く彩色する。

優しげなエドワードが青い小鳥を愛でている。平和なその絵は町の女の子に受けるだろうか。


ラヴィリアは絵の中のエドワードを見て、本物のエドワードに目を移した。ノーメイクのエドワードはいつものように冴えない男振りであった。だがそのチョコレート色の眼差しが、優しく自分に向けられることがあることをラヴィリアは知っていた。


その度にきゅん、とするのだから。町の女の子たちもきゅん、てなると思うのです。



「あとですね、思いついたことがあるのですが」

「思いついたこと?」

「青い鳥にちなんで、青い羽をモチーフにした小物を販売出来ないでしょうか」

「小物? 例えば」

「ピアスとか、ネックレスとか。ブローチのようなものとか」

「女性が身に付けるものか」

「羽でしたらそんなに高価にならないでしょうし、絵姿を買い求める皆さんにも手の届く価格で作れないかなと思いまして」

「なるほどなあ」

「でも、絵姿より単価は上げられると思うのです。絵姿の販売より儲けが出るのではないかと……」

「おおー!」

「それにはまず、仕入れ値と加工費、人件費がどれほどかかるかを調べる必要がありますね」


入口から声がかかって、穏やかに一礼したカルロスが入ってきた。城での業務から帰ってきたのである。

大変、とラヴィリアは立ち上がった。カルロスが下城したということはそれなりの時間になってしまっているのだ。



「カナメ、お夕飯の支度にかかります!」

「申し訳ございません、時間を失念しておりました」

「エディ、ごめんなさい。この話はまた後で!」


急がなくちゃと、ラヴィリアは急いで夕食の支度を始めた。




カルロスはマシューの書いた青い鳥の絵をつまみ上げた。ラヴィリアが塗った青い鳥が鮮やかだ。


「なんだか、面白い話をしてましたね、エディ」

「うん。俺らとは発想が違うっていうか」

「細かい調整は大変でしょうが、せっかくなので姫の発想に乗ってみましょうか」

「カルロスがオーケー出すってことは、勝算があるってことだろ?」

「そうですねえ」


カルロスはエドワードの肩をぽんと叩いた。意味ありげな視線でエドワードに笑いかけた。


「どちらに転ぼうとも、あの方への手土産になると思うんですよ」

「なにそれ、意味深」

「忙しくなることは覚悟してください」


げえ、とエドワードは顔を歪めた。カルロスの忙しいは身を削る忙しさであることを、長年の付き合いで知っている。

何やらされんだろ、俺。



そのエドワードの背後では、素晴らしい速さで3羽の鳩が解体されていた。

目の調子が良くなくて。

更新はさらにゆっくりになるかと思います。

書けないのも辛いが、読めないのが!辛い!

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