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クアトロ・ステラ  作者: 赤月白羽
第一章 駆け出し二人と巨大猪
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帰還と再会

#3『帰還と再会』

「ユノ村には養生と、村長から譲り受けた剣を返しに来たの」


 村に戻るまでの道中、三人は村の近況や外の世界のことを話し、特にハンスはビースト狩りの話をしきりと聞きたがった。

「ハンターたちは一通りの武器の知識はあるけれど、その中から特に気に入った武器種を愛用して使い続ける傾向にあるかな。まぁ、私は標的に合わせて装備を変えるけれど、それでも弓と小ぶりな取り回しの良い武器を好んで使うわね」

「へぇ~……ほかにどんな武器があるんだ?」


 おとぎ話を聞く子供の様に、目をキラキラさせてハンスが聞く。ハナは肩をすくめて言った。


「それこそ色々。従来の武器を強化したようなものもあれば、まったく奇抜なものや武器と呼べそうにないものまであるから……。世界には本当に様々なクリーチャーがいて、それに特化したものもたくさんあるのよ。特定のクリーチャーを専門に狩る人もいて、そういった人はそのクリーチャーに特化した装備で戦うみたいね」


 ここでハナは何かを思い出してクスリと笑い、どこか懐かしむように話をつづけた。


「面白いのは魔法や特殊能力を駆使して戦う人たち。もう装備や戦い方が私みたいなのとは全然違ったりするから、いい刺激になるわ。私の友人にそういった人がいるのだけれど、時々どちらがビーストなのか分からなくなるような……そう、ちょっとワイルドな戦い方をするの」


 最後の方はひきつった笑みを浮かべて言葉を選ぶように話した。


「ビーストたちは力強くて、生命に満ち溢れていて……中には恐ろしいけれど美しいものもいてね、さっきあなた達が見たコもここから遠く離れた山で出会ってね、他のワイヴァーンと縄張り争いをしていたの。どちらも空を舞う姿は美しかったけれど、あのコはさらに巧みに飛んで相手を翻弄していたわ」


ハナはその時のことを思い出してか、うっとりする目で遠くを見るように語る


「そんな彼をどうしてもモノにしたくて、執拗に追いかけて捕まえたわけ。あとは長い時間をかけて友達になって、今では遠くに移動する時には乗せてくれるようになったわ」


 嬉しそうに話すハナに、レーナは疑問に思ったことを口にする。


「一緒にいない時はどうしてるんですか? 誤って他のハンターと鉢合わせして、下手すると狩られてしまう危険も……」


「街にはモンスターを飼育できる施設があってね、ハンターが留守にするときは代わりに世話をしてくれる係の人がいるのよ。さっきも私を下ろしてからはそのまま街の寝ぐらに戻っているわ」


 そう答えるとハナは立ち止まって森の奥に視線を向けた。


「まぁ、ここから更に奥の岩山には飛竜の巣におあつらえ向きな穴ぐらがあるから、そこに待機してもらうことも出来なくはないけれど、先客がいたら面倒なことになるから街に帰ってもらった方が安全かな」


 街に帰る時が面倒と苦笑し、今度は真剣な顔でハナは二人に聞いた。


「それより、いま村にハンターがいないって本当なの? ギガスボア以外に村の周囲に脅威になりそうなビーストはいないらしいけれど、今回みたいに被害も出ているわけだし誰か来てもらった方が良くない?」


 ハナの質問にハンスがため息まじりに答えた。


「もしヤバいのが来たら村長には分かるんだと……それに、あいつを狩ったら他にはいなさそうだから居ついてもらえねぇだろうし、ビーストハンターに依頼するにしてもギガスボアの毛皮やらキノコやらから得られる利益じゃ報酬を払えねぇってことらしい」


「そっか……なるほど……」


「……だから俺がビーストハンターになって村を守るんだ」


 ボソリと付け加えたハンスをレーナは心配そうに見つめ、ハナは困ったよな笑みを浮かべた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 ハナの導きで思っていたより早く村に帰ってこれたことにふたりは軽い驚きを覚えた。しばらく森にいなくても結構わかるものらしい。


 村に入ると、通りがかった村人が三人に目を留め、いぶかしむように首を傾げては通り過ぎていく。ハナは可笑しそうにくすくす笑いながら村人の反応を愉しんでいたが、誰かに気付いて立ち止まり、そちらに向かって手を振った。


「ソフィ! 久しぶり!」


 入り口にほど近い家に住んでいる女性の名前を聞いてハンスとレーナがハナの視線の先を見ると、少し先でその女性が腕をだらりと垂らして、持っていた山菜で一杯にした籠を落としたのも気づかず信じられないといった表情でハナを凝視していたが、泣きそうになりながら駆け寄りハナに抱きついた。


「もう! 十年もどこに行ってたのよ!」


「ソフィ……く、苦し……」


 ソフィと呼ばれた女性の方をパンパン叩いて注意を促しながらハナが訴えるが相手は聞く耳持たず、むしろ二度と離すまいと力強く抱きしめて訴え続ける。


「村長は“ハナならば大丈夫”って言って取り合ってくれないし。すごく心配したんだから! もっとマメに帰ってきてもいいじゃないの」


「わかったから、ごめんって! とにかく一旦離してってば」


 ハナの必死の訴えにソフィはようやく腕を解いてハナを頭からつま先まで眺めまわした。


「それにしてもその髪、最初誰だか分からなかったよビーストハンターになると、そうなっていっちまうものなの?」


「単に染めただけよ……ここには養生しに戻ってきたの。またしばらく厄介になるわね」


 そうやって二人が話をしていると、遠巻きに見ていた他の村人たちも「ハナなのか?」とか「見違えた」などと口にしながらハナを取り囲んであれこれと話し始める。ハナはしばらく村人たちの質問に答えていたが「村長に挨拶に行く」といって皆と離れ、ハンスたちに手招きすると二人を伴って村長の家に向かうのだった。



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