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記憶
彼女との出会いは彼女が中学生の時だった。
当時、高校生だった私は部活帰りで、歩いて家に帰っていた。夕方遅くの6時頃、だったと思う。
「ペイちゃん」
突然、外国人の女の子に笑顔で声を掛けられた。正確には、外国人ではなくハーフなのだが、赤髪で青い瞳をした女の子は、外国人にしか見えなかった。
細くて柔らかそうな赤髪は美しく、大きな目をしていた。にこりと笑う彼女に声を掛けられた瞬間、心臓が止まったかと思った。
彼女から聞いた話だが、彼女の母親は若い頃は性に奔放な女性だったらしい。毎晩、別の男と飲み歩き、体の関係を持っていた。それが原因で、彼女は父親を知らない。自分の血の半分がどこの国から由来したのかも知らなかった。
「ペイちゃん?」
当時の私には『ペイちゃん』というあだ名で呼ばれるほど親しい女性の知り合いはいなかった。だが、彼女は明らかに自分に呼び掛けているように見えたので、「ペイちゃん?」と聞き返すと彼女の表情は一変した。取り返しのつかない過ちをしてしまったかのような彼女の悲痛な表情を私は覚えている。