成長したね
7
バスケットボールは、練習も重ね、試合ではいろいろなことがあったけれども、グループの結束は高くなってきていた。
今日は試合日。まず、ベンチは綾。
「今日も試合勝つぞー!」
「オー!」
熱狂とともに、秦弥たちは走り出す。
ジャンパーは結城。
「!?」
一瞬でボールを奪い取ると、華麗なドリブルでコート内を疾走しはじめた。
敵に囲まれると、すぐさま眞博にパス。
「ナイス」
眞博はドリブルを続けるが、無理だと悟ったのか、近くにいた結衣に軽く投げ込む。
「シュート決めてもいいですか?」
「いいよっ!」
チームメイトのいい返事を背に、結衣は走り出す。
誰もが振り返るような美貌を前にドリブルを繰り返す。
「このまま、シュート!?」
「いや……たぶん無理」
眞博の問いに、秦弥は走り出し始めた。
結衣は確かにシュート入れられる力は持っている。
けれど、相手も相手だ。結衣を行かせないように阻んでいるのだ。
あの女一人でそれを振り切ってシュートできるのか…。
「じゃあ、パス♪」
「うん」
いきなり、結衣の手からボールが離れた。
ボールはバウンドし、コートを駆ける。
「受け取った」
それは彩苗だった。
「バウンドパスかよ!」
敵の不意をついて彩苗にパスしたのだ。
そのまま、彩苗は走り出す。
でも、シュートのところには向かわない。──あくまでも撹乱なのだ。
「結衣!」
一瞬でボールが結衣に渡る。
敵たちが来る前に──彼女はジャンピングシュートを決めた。
「じゃあ、次ベンチ交代だね〜!」
結衣が、一点を入れた後、綾と交代する。
「……秦弥ボール持てなかったじゃん」
「……」
「意外と女子がアップしてる…。おれらも追い抜かされないようにしないとね」
眞博が懸命に秦弥の機嫌をとっていた。
秦弥は少し悔しいらしい。
「まあ、結衣はともかく、彩苗と綾が成長したな。次のジャンパー誰だ?」
秦弥の問いに、結城が振り返る。
「オレに決まってんだろ?」
「……──」
「睨むなよ。分かったから。お前がジャンパーやっていいよ。さっき触れなかったもんな」
「ありがとう」
両チーム睨む合い、ジャンパーが立った。
秦弥はコートの中央に立つ。
これから、第二試合だ。
8
「あ〜気持ちよかった」
バスケ終了後、女子たちは更衣室で談笑していた。
「二回戦目、ちょっと焦ったけどね」
「秦弥が失敗したやつ?」
「ジャンパーでね」
「まあ、あれは仕方がないよ」
彩苗と綾の会話が続く。
結局、勝てた。勝てたけれども、秦弥がジャンパーで失敗したせいで落ち込んでいたのだ。
「勝てたからいいと思うけど」
「文句はないけどね」
みんな、充分試合をした。
そして勝てた──失敗があっても言うことはない。
着替え終わると、教室に戻って、席についた。
「今回、お前意外と上手かったな」
彩苗はムッとした顔をする。
面白そうに秦弥は見つめた。
「秦弥だって失敗したくせに」
「失敗したけど?それがどうかした」
「意外とって……」
「最初は酷かっただろ?コントロールはできてたけど全然飛ばない上に、チーム戦で足を引張るし」
「うるさい‼秦弥も単語一つすら覚えてなかったのに」
「そういえば、成長したね。俺たちって…」
今、思い返せば二人共長所と短所があって、カバーしあってた。
そして、自分の力に変えていった。
それが”成長”なのだろう。