練習したら勝てるかもしれない
5
多少な壁はあるとも、秦弥と彩苗は、休み時間勉強を教える仲になった。
「で分かった?疑問詞を覚えておいて。意味とつづりを頭の中に入れといて」
「分かった」
秦弥は、紙に書き、単語を覚えていく。
そこへ。
「バリバリ頑張ってんじゃん」
「……結城。今、覚えてる」
「まあ、さすが彩苗だよな」
「だな」
返事をしながら、単語を頭に刷り込ませる。
とにかく、書いて覚える。
書くしかないと教えられたとおりに覚えているのだ。
「……お、おい‼チャイムなったぞ!?」
結城に呼ばれ、秦弥ははっと我に返った。
「没頭し過ぎだぞ。勉強病うつったな…完璧に」
覚えるのに周りの状況に気づかなかったようだ。
「早く校庭に出ろ。体育だからな」
「体育か…」
秦弥はペンを置いて、結城と共に外へ出る。
確か、バスケットボールの試合だったような。
グループは今日発表される予定だ。
「誰となんのかな。結衣だといいな…!」
「前は俺が結衣とだった」
「羨ましいぜ、恋愛経験ゼロのくせに」
「うるさい。結衣に惚れはしないから」
冷たくあしらう秦弥。
「ったく……本当に恋愛したことない哀しい奴だな」
「なんとでも言えば?結衣とか好みじゃないし」
結城は苦笑する。
「恋愛以外は、普通の賑わい男子なのにな?」
その問いには秦弥は答えず、無視をしていた。
6
「同性で3人グループを組んで、そこでグループを決めます」
一瞬で、秦弥と結城、眞博が集まる。
「次は、異性の3人グループを選んで組んで下さい」
即座に、結城が、
「オレ結衣がいいなー」
「……勝手にしろよ」
「熱愛だね」
結城が喜んで、結衣のグループに近づいていく。
「……あいつ、よく積極的に話しかけられるな」
「たしかに。下手するとキモいって言われるレベルなのにな」
結城の知らないところで、秦弥と眞博の意見が一致したのだった。
「お待たせ〜!結衣と一緒だぞ」
結城が秦弥たちの元に戻ってきた。
「また、一緒だね。秦弥くん」
結衣が、えへへと笑いながらグループになる。
「結城くんって優しいよね。だって、誘ってくれたんだもん」
秦弥は苦笑い。
その行為の裏に、好かれたいという気持ちがあることに、結衣は気付いてるのだろうか。
気付いたら受け止めるのか…。
「じゃあ、メンバー集まったみたいだね。おれと秦弥と結城、結衣と彩苗と綾の6人だ」
眞博が、皆を促し、ボールを取ってくる。
「…………」
彩苗には、目をそらされた。
秦弥は気にせず、ボールをドリブルさせる。
「ま、練習はチームプレイだから、気の合い方、それと女子は基礎練習をしないと」
気づけば、秦弥が仕切っていた。
「まずは、パス・ドリブル・シュート。3つを完璧にさせる」
初めは、パスだ。
結衣はなかなかの腕前だった。
綾は、方向調整がまったくない。
彩苗は飛ぶことは飛ぶが、スピード力がなかった。
「結衣は、まあまあだね。次は、綾…。投げ方から教えないとだな。眞博、教えてやれ」
「まあいいけど。おれにできるのはそんぐらいだよな」
眞博は、ボールを一回シュートさせると、綾の教えに入った。
彼の教え方は、秦弥より上手いかもしれない。
特に、投げ方系は。
秦弥は彩苗の方を見た。しかし。
「……できるわけない」
一瞬で目をそらされる。
「ふうん、勉強しかできないってこと?」
「悔しいけど、そういうことだよ」
秦弥の挑発に乗らず、彩苗は、居心地が悪そうにそっぽを向く。
「秦弥くーん‼わたし練習してていいですかー?」
結衣が、ボールを片手で笑顔で質問してきた。
「いいよ」
「じゃあ、オレも」
なぜか、結城までサポートにつく。
二人は、話しながら、パスを超えたドリブル・シュート練習を始めた。
もう一つ、眞博は綾に教えてるし…。
(仕方がない)
「なら、一回パスしてみて」
「分かった。いくよ」
彩苗がボールをパスしてきた。
「おっと」
簡単に受け取れる。
受け取りやすいパスだ。けれど。
「威力は意外とあるな。けど、全然飛ばない」
「分かってる」
「威力はシュートのときしか使わないから。パスのときには、取りやすさと気の合い、距離が要求されるし」
秦弥はサッとボールを投げて彩苗に返した。
物理線を描いて、彩苗の手に吸い込まれていく。
相手を考慮した、威力を抑え、取りやすく、けれどスピード力と距離を飛ばす力を込めて。
「スピード力もある程度は大事。途中で相手に取られるときもあるし。でも、まだ早いから、距離を飛ばせるようにしろ」
「ずっと前から頑張ってるよ。でも、飛ばないから」
「じゃあ、とにかく投げて〜」
「え!?」
秦弥はパスを受け取る姿勢をする。
投げろということだろう。
「とにかく投げてみろ」
「は、はい」
彩苗は、力を込めて腕を伸ばし、ボールを手から話した。
「前より距離が落ちてる。はい」
またボールが返され、もう一度投げる。
「もう一回」
また投げる。
投げる投げる投げる投げる投げる投げる。
──どのぐらい投げただろうか。
チャイムがなる直前に、秦弥はストップをかけた。
「0,5m伸びてた。これ、練習したら勝てるかもしれないな」
「勝てる……?」
「次の体育で試合じゃん。まあ、シュートは分かんないけど、足を引っ張ることはなさそうだし」
「足引っ張んないよ!」
ムキになって返しながらも、彩苗は手の甲で汗を拭った。
この汗は努力の煌めき。
0.5という数。
そして、秦弥に褒められた証拠。
バスケ経験一回(しかも、ルールあやふや)の作者が書いたので、当てにしないでくださいね。