表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

避けられているのか不安

 3


 一瞬で秦弥の頭の中がパンクしそうになる。

 それを抑え込んで授業を聞こうとしたが──。


「分からない」


 つぶやきが漏れて一瞬で後ろの生徒に伝わった。


「分からない?」


 オウム返しで返される。


「っつ……」


 なんだかとても居心地が悪い。

 まあ、天才派と運動派の違いと言うか。


「しょうがないじゃん?俺はお前みたいに頭がいいわけじゃないから」

「それ、褒め言葉として受け取る」

「まあ、褒めてる方かな…」


 実際は皮肉を込めていったのだが。


「で?どこが分からない?」

「……?教えてくれるとか?」

「っつ……!」


 途端に彩苗の顔に微妙に変化があった。


「教えると言うか……説明簡単にできるんだったらここで言う!教えるとかはたぶんしない!」

「……んとね、大体わからない」

「はあ……」

 呆れ顔の彩苗に秦弥はいたずらのように微笑む。

「だって、勉強苦手だし」


 


 っていうわけで、休み時間はほぼ彩苗の特訓授業になった。

 普通は、放課後なのだが、彩苗が否定し続けるため、こうなったので。

「じゃあ、これを書いてみて。『私はペンを持っています』」

「それは、分かる。『I have pen.』」

 即答する秦弥にため息をつく彩苗。

「一つ忘れてるよ…」

「何?これは絶対分かると思ったんだけど」

「一応授業は聞いてるみたいだけど、理解が全然してない。大体、聞いた瞬間に拒絶反応が起きるでしょ?」

「……まあね」

「まず、冠詞が抜けてるの!」

「冠詞?」

 疑問顔の秦弥に再びため息をつく。

「冠詞は前回の単元でしょ?何回前に戻って勉強しなきゃいけないの」

「……──」

 言い返せず、黙ってしまう秦弥。

「冠詞は名詞の前に置かれるa/an/theの3つ!この前に置かれるやつで名詞の情報が分かる」

「3つの使い分けは?」

「……theが面倒くさいよ。まずは、aとanね」

 彩苗の口から説明が流れ出てくる。

 秦弥はそれを聞きながら、テキストに彩苗の説明を書き込んだ。



 4


「へえ…」

 秦弥と結城と眞博との3人での帰り道。

 話を聞いた眞博は冷たく返事をした。

「デキてるね?意外といいかも〜」

 野次を飛ばしてくる結城を無視し、秦弥は別に、と言う。

「嫌らしい感情は抱いてないからな」

「それならよかった」

 そう返事をした眞博は、安堵したように息を吐く。

「で?お前たちは…?」

 質問した秦弥に結城は飛び付くように返事をする。

「結衣メッチャ優しいよ‼今日も勉強を教えてくれたし…!」

「それ、ほぼ彩苗と一緒じゃん」

「いやいや、放課後もしてくれるって‼」

「……そうなの?」

 秦弥は驚いた顔をした。

「俺の場合はしてくれなかったけど…」

 彩苗は嫌がった。

 放課後は嫌だとずっと断り続けていた…。

「それ、微妙な距離だな」

 唸る眞博。

「……別に距離は気にしてないけど」

「それならよかったけど」

「じゃあ、二人ともさよなら〜!結衣と行ってくっから!」


 ご機嫌顔で結城は秦弥と眞博たちと手を振ってを別れる。

「……嘘だろ?お前、本当は傷ついているんじゃないの?」

 二人っきりになったとき、眞博はそう呟いた。

「まあ……よく分かるね。なんかあれは拒絶的だった…。とても」

 秦弥は自嘲気味に笑う。

「彩苗の断り方は半端じゃなかったよね。あれはさすがに引くよ……嫌われてる可能性高いかも」

「嫌われててもいいんだけどさ、結衣はああやって結城と放課後教えてるのに、彩苗はどうしてかなって…」

「放課後にはいろいろ問題があるとか?」

「……──」

「気にするなって」

 眞博は元気づけようと秦弥の話を受け止めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ドキドキですね。 少年少女の胸の中の駆け引き。 続きが気になりますね。
[良い点] 結城と結衣いい感じ! でも秦弥と彩苗はどうなんだろう? どう気持ちが動いていくのか楽しみです☆彡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ