なぜか目が離れない
7
試合開始直後。
彩苗は自分の持ち場に着くとジャンパーの結城に目を向けた。
一瞬で宙に浮いたボールを奪い取るとドリブルを開始。
そして、眞博にパス。
そして……結衣にボールが回された。
「シュート決めてもいいですか?」
結衣が微笑み、チームメイトがいいよと返事をする。
だけど彩苗は気付いていた。
結衣のあの目はゴールを狙っていない。
撹乱させるつもりか、自分の本心をまだ言っていない。
そう…何をするのか。
「じゃあ、パス♪」
結衣からボールが離れる。
それを目で追うと彩苗はキャッチをした。
結衣の得意な撹乱技。そしてバウンドパス。
バウンドさせて相手に渡す…結衣が得意なパス方法。
そして、彩苗も撹乱を開始させる。
とにかく走って。走って。
取られないように。そうして。
自分は足があまり速くない。けど、それでも。
チームメイトのために撹乱をさせる。
「結衣!」
叫ぶと結衣目がけてボールを放った。
結衣はニコリと笑う。
そして──跳躍した。
8
二回戦目は秦弥が交代し、ゲームをはじめた。
だが、ジャンパーで相手に奪われてしまったのだ。
「……!?」
だが、秦弥は正確に相手の正面にまわる。
敵は焦り、仲間にパスをしようとしたが……秦弥に阻まれた。
それから結城にパスをし、一瞬で結城がシュートを決めた。
ハッキリ言って無双…最強である。
(すごい)
なぜか秦弥の活躍から目が話せない彩苗であった。
「今回、お前意外と上手かったな」
教室に戻るとすぐに秦弥が話しかけてきた。
褒められた…のだろうか。
のわりには意外がついているから。
少しムッとする。
「秦弥だって失敗したくせに」
「失敗したけど?それがどうかした」
サラリと返され再びむくれ顔の彩苗。
「最初は酷かっただろ?コントロールはできてたけど全然飛ばない上に、チーム戦で足を引張るし」
「……──」
正直そうだけど。
認めたくはなくて。でも本当のことで。
「うるさい‼秦弥も単語一つすら覚えてなかったのに」
彩苗にとっての精一杯の返しだった。
いつも出てくる返しが出てこなくて、そう返したのだが。
「そういえば、成長したね。俺たちって…」
逆に意味深な言葉で返されてしまったのである。
彩苗は初めてムットさせたのは秦弥だけです(笑)




