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第2話

 11月16日ぶん

 この時間帯の投稿から抜け出せない。時間帯的には昼頃に投稿出来たら多くの方に見てもらえそうな気がするのだが……。そのためにもまず、早起きをしなくては。

 森深くのレンガ造りの家屋に住む魔女、フェナーチアの名前を知らない者は街の中に一人も存在しない。理由は単純で、彼女が作る薬が住人達の生活を支えているからである。代表的な物を挙げるとするならば、怪我を負った時に塗る薬や病を治すための薬、この街の生活必需品となっている発火剤や浄水薬だ。

 もちろん、彼女が作る薬を使わなくても住人達は生活することは出来ていた。しかし、人というものは怠惰な生き物のようで、一度便利になってしまった生活から逃げ出すことは出来ないのである。



「フェナーチアさん、それはそっちじゃありません。前に片付けるところを決めたんだからその通りにしましょうよ」

「……。こっちの方が手を伸ばしやすくて便利なんだ」

「今、面倒臭くなって嘘をつきましたね?」

「ぅぐ……」



 そんな住人達の役に立っているフェナーチアがどうして森の中で生活しているのか。その理由は別に彼女がズボラな性格を隠したいからだとか、家の周りに生えている植物が不気味だからとか、そういうわけではない。これはただ単に彼女の趣味だ。

 もし、フェナーチアが自分の性格を隠したいのだとすればここにイルゥナは呼ばないだろうし、生えている植物が不気味なのだとすればそれを原料に作られる薬を住人達は取り扱ったりしないだろう。

 見えていないから使うことが出来るのだと言われればそれまでだが……。


 イルゥナは持ってきた荷物を比較的綺麗にされている机に置き、片づけを手伝う。一番初めにイルゥナがとった行動は、掃除に邪魔な長い髪を一束に纏めて後頭部に結うことだった。

 薬の作成に生活のほとんどの時間を費やしているせいでボサボサになってしまったフェナーチアの髪とは異なり、イルゥナの焦げ茶色の髪は太陽の光をシットリと艶やかに反射させる。煽情的に視界に映る髪の奥に見える、健康的な首筋とうなじ。フェナーチアは人知れずゴクリと唾を飲みこんだ。


 掃除の当番は、いつもフェナーチアが薬とそれに関わる材料や機材でイルゥナが書籍となっている。中には危険な物を使わなければ作れない薬もあるため当然の判断だった。

 ただ、掃除の指揮をとるのは家主ではなく、イルゥナである。猫背になりながらイソイソと片付けるフェナーチアの後ろ姿をいつも視界に収めながら、両腕いっぱいに本を抱えて片づけを行う。



「ふぅ……。本の片付け終わったので、お風呂場とか掃除してきましょうか?」

「い、いや! いい! そこまではしなくてもいい!! そこから先は私がやるから、イルゥナは何も植えられていない花壇の手入れをしてくれ。その間には終わらせる」

「分かりました」



 窓を塞いでいた本が片付き、入り口付近しか照らしていなかった太陽光が家の中を明るく照らす。そうすることでようやく、真っ黒なローブを着込んでいたフェナーチアの顔を視界にしっかりと収めることが出来るようになった。

 薬作りにかまけているせいでよく眠れていないのだろう。目の下には大きな隈が出来ており、普通にしていれば可愛らしい顔も台無しだ。背はイルゥナよりも頭一個分高い程度。今年28歳を迎えた大人の女としては平均値にも満たない身長だった。胸もあまり大きいとは言えず、不健康そうな顔以外は全体的に幼児体型と言っても遜色ないだろう。


 ただ、彼女の特徴的な部分はそれだけではない。もう二つほど頭周辺に街ですれ違えば誰しもが二度見する特徴があった。

 一つは目の辺り。隈も特徴的だが、もっと人の目を惹くのは瞳を保護するように存在する円盤状に切られ、削られた二つの水晶。二つの水晶は鼻の上に乗る短い棒で繋がれ、耳から伸びる細長い棒状のもので場所を固定されている。

 二つ目は首元。これまた円盤状に切られた二つの何か。目の辺りにあるものとは異なり、こちらは分厚く金属で出来ているようだった。その何かが首元にぶら下がっているのは、やはりアーチ状の金属板で二つが繋がっているから。

 街の住人も、度々この家に尋ねるイルゥナもそれらの用途は知らない。魔女が持っているから便利な物なのだろうと察しているだけで、フェナーチアの頭の中を覗き見ることを彼らは出来ていないようだった。



「はぁ、風呂掃除にトイレ掃除……。腰が痛くなってしまった」

「毎日やらないから汚れが溜まるんですよ」

「いや、まぁ、しているんだ。しているんだが……」

「水を流すだけでは掃除とは言いませんからね」

「はぃ……」



 掃除が終わるとテーブルで遅めの昼食をとり始める二人。今日、イルゥナが持ってきた籠に入っていたのはイルゥナの母が作ったサンドイッチだった。パンを半分に切って、野菜と少しの干し肉を詰めただけの食べ物だが、フェナーチアにとってはお気に入りらしい。イルゥナの説教が終わると、口の中いっぱいに頬張って食べ始める。

 見た目相応の食べ方だが、歳を考えると落ち着きのない食べ方だった。



「今日の依頼はこれですね。この前の依頼の品は……」

「ほほほふぃふぃほひゃひゃひゃ」

「『そこの右の棚だ』と……。ああ、これですね」

「……んぐ。よく聞き取れたな」

「聞き取れないこと前提でしゃべったんですか」



 呆れたと言いたげな視線がフェナーチアに向けられる。

 彼女はそれを無視するようにそっぽを向きながら再びサンドイッチを頬張り始めた。


 今日の筋トレ日記

 腕立て伏せ30回

 腹筋30回

 背筋30回

 これを二セット

 

 菜々瀬蒼羽の日記を書いていた頃から続けているこれだが、後書きにこういうのが入るのって邪魔だろうか?

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