夢
「カリナ様。」サノアはカリナの前で跪く。
「まぁ、どうしましたサノア?」カリナ姫がサノアに問う。
「私をムサシ様の妾にしてください。」
「あら、あら、ご自由になさい。」
「宜しいのですか?」
「ムサシ様ですから。」
「俺の意思は?」
「「ありません!」」二人そろって答える。
「マジかぁ。」俺は盛大にため息をついた。
**********
「はぁ、又ランナー鶏の端肉か。」俺が言う。
「贅沢言うなよ、俺らが食えるだけでもありがたいだろ。」同僚のポーターが言う。
「あぁ、俺らは食えるだけましだよな。」俺は答える。
「だよなぁ、」
「んじゃ、何時もどおり、ごった煮を作るか。」俺はクズ野菜を刻みながら言う。
「それが一番腹にたまるからなぁ。」
「たまにはオーク肉でも食ってみたいよなぁ。」俺が言う。
「ははは、俺らに来るのはせいぜい内臓だろう。」
「内臓もちゃんと処理すればそれなりに食えるからな。」
「あぁ、そうだな。」
「よし、こんなもんか。」俺はごった煮を作り終えて言う。
「さぁ、食おうぜ。」同じポーター仲間の男に言う。
「おぉ、美味そうだ。」
俺達はポーター仲間とそれを食い始める。
「ムサシ、肉をかっぱらって来てやったぞ。」姉御が俺達にオークの並肉を持ってきてくれた。
「姉御、大丈夫なのかよ?」
「かかか、任せろ。」
「いや、本当に大丈夫なのか?」俺は心配になって姉御に聞く。
「今回はオークを5匹狩ったからな、少しぐらいは大丈夫だよ。」姉御がニカって笑いながら言う。
「ムサシ、良いから食おうぜ。」ポーター仲間が言う。
「それもそうだな。」俺は姉御から貰ったオークの並肉を、俺特製のたれに漬けて焼き始める。
「じゅわ~。」良い匂いが辺りに漂う。
「やばい、さっさと食うぞ。」俺はそう言いながら肉を食べる。
「あぁ。」ポーター仲間も肉を口に入れる。」
「おぉ、ムサシ、これ美味いな。」姉御も肉を口にして言う。
「お前たち、美味そうなものを食っているじゃないか。」ギルドの鼻摘みたちが絡んでくる。
「あぁ? 向こうに行ってろ!」姉御が凄む。
「ポーター達にそんな良い肉を恵んでやる必要はないよな?」
「はぁ? あたいに意見する気かい?」姉御が殺気を出しながら言う。
「あぁ、怖い、怖い、でも、ギルマスが何て言うかな?」鼻摘みが言う。
「別に構わんぞ。」
「え?」
「構わんと言った。」ギルマスが言う。
「ええ?」
「ポーター達がいるから、俺達は物資を地上に持ち帰れる。」ギルマスが言う。
「つぅ。」鼻摘みがたじろぐ。
「お前たちはポーターを軽んじているが、ポーターがいなければダンジョンの物資を地上に運べないのだ。」
「ギルマス?」姉御が聞く。
「あぁ、遠慮なくその肉を食べればいい。」
「ちっ。」鼻摘みが離れていく。
「姉御?」
「あぁ、ムサシ、普通に食べろ。」
「ありがとう姉御。」
「かかか、照れるぜ。」
**********
「ムサシ、逃げろ!」
「え?」
「やばい奴だ!」
「え?」
「荷物を捨てて逃げろ!」姉御が叫ぶ。
「わぁ!」俺は荷物を捨てて駆けだした。
「振り返るな!」姉御の声がする。
俺は駆けた、息が続く限り。
**********
数時間駆けた後、俺はそこに戻った。
「戻って来たのか?」そこには満身創痍の姉御がいた。
「姉御?」
「ははは、疲れた。」すべての敵を排除した姉御が俺の腕の中に倒れこんだ。
「姉御!」俺は姉御を抱きとめた。
「少し眠る。」姉御はそう言って俺の腕の中で寝息を立てた。
「姉御?」
「ぐぅ。」姉御は爆睡した。
「姉御、凄いな。」姉御は俺の憧れだった。
「お前たち、無事だったか?」ギルマスが声を掛けてくる。
「ギルマス?」
「あぁ、エリスのおかげで全滅は避けられた。」
「え? ギルマス?」
「今回は、エリスにすべてを任せてしまった、心苦しい事だ。」
「え?」
「次は私も参戦しよう。」
このギルマス、大丈夫か?
**********
「姉御、何を作っているんだ?」
「あぁ、ムサシか、オークカツだ。」
「オークカツ?」
「あぁ、オークの並肉に塩コショウをして、衣をまとわせて油で揚げるんだ。」
「へぇ、美味しそうだな。」
「おっ、ムサシは才能がありそうだな、一緒にやってみるか?」
「やりたい。」
「よ~し、よく言った、ムサシにあたいの技を全部仕込んでやるぞ。」
「うん、姉御。」
**********
「今回は、何を作るんだ? 姉御。」
「ははは、今回はランナー鶏の唐揚げだ。」
「唐揚げ?」
「金鶏ならもっと美味いんだけど、高級食材だからなぁ。」
「どうやって作るんだ?」
「あぁ、ランナー鶏のもも肉を、醤油、大蒜、生姜を揉みこんで、一時間ほど馴染ませてから、180度の油で揚げるんだ。」
「180度?」
「あぁ、見てろよ。」姉御はそう言うと菜箸を油に入れる。
「え?」
姉御が菜箸を油に入れる。
油に入れた菜箸から泡が出てくる。
「其れが180度の反応だよ。」姉御が言う。
「成程。」
「ムサシは覚えが良いな。」姉御が俺の頭をワシワシして言う。
「姉御、止めてくれ。」
「かかか、止めない。」
「姉御~。」
「かかか。」
**********
「姉御、今回は何を作るんだ?」
「生姜焼きだ。」
「生姜焼き?」
「あぁ、オーク肉をあたい特製のたれに漬けこんでフライパンで焼くんだ。」
「ごくり。」
「かかか、旨そうだろう。」
「あぁ、姉御。」
「なんだよ、食いたいって顔をしてるぞ。」
「姉御の料理は全部美味いからな。」
「かかか、当然じゃないか。」
「姉御、その特製のたれは何を合わせてるんだ?」
「ムサシは勤勉だな、特別に教えてやるよ。」
「おぉ、姉御は優しいな。」
「かかか、照れるぜ。」
「まず醤油と、煮切った味醂、酒と・・・・・・
**********
「はっ!」俺は目を覚ました。
俺は、ミロクの神気を持った奴を狩りに来て、時間切れで野宿をしていたことを思い出す。
「くふふ、楽しそうな顔をしていたよ。」
「俺は夢を見ていたのか?」
「くふふ、良い夢を見ていたんだね。」
「あぁ、昔の姉御とのやり取りの夢だった。」
「良い夢だったのかい?」
「あぁ。」
「くふふ、元気が出たかい?」
「あぁ。」
「んじゃ、狩りに行こうか?」
「あぁ。」
俺は、ミロクの神気を持った、次の獲物を狩るために森に入った。




