孤児院で
俺は塞都市の孤児院に来た。
「ふむ、孤児院はいつも通りだな。」
「まぁ、ここがムサシ様が懇意にしている孤児院なのですか?」カリナが言う。
「うわぁ? 何で?」
「あらあら、ムサシ様がこそこそと出かけて行ったので、妾のところに行ったのかと思い、後を付けてまいりました。」
「はぁ、俺は信用がないんですね。」
「あらあら。」
「あ! ムサシ兄ちゃんだ!」
「ムサシ兄ちゃん、今日は何を食べさせてくれるの?」孤児たちが群がってくる。
「ふふふ、人気者なのですね。」カリナ様が嬉しそうだ。
「ムサシ兄ちゃん、その綺麗な人誰?」孤児の一人が聞いてくる。
「あぁ、俺のお嫁さんのカリナだ。」
「わぁ、ムサシ兄ちゃんのお嫁さん?」孤児の一人が聞いてくる。
「あぁ、そうだぞ。」
「まぁまぁ、ムサシ様は孤児たちに慕われているのですね。」カリナが言って来る。
「ははは、餌付けの効果ですかね?」俺は笑いながら言う。
「まぁ、ムサシ様、今日はどのような?」シスタークロエが近づいてくる。
「まぁまぁ、お綺麗な方。」カリナ様が俺の腕を抓りながら言う。
「カリナ、そう言うんじゃないから。」俺はカリナに言う。
「まぁ、ムサシ様、そちらの方は?」シスタークロエが聞いてくる。
「あぁ、俺の嫁になった、カリナです。」
「え? カリナ、 え? 第3王女の?」シスタークロエが挙動不審になる。
「ほほほ、初めまして、私、ムサシ様の正妻になったカリナですわ。」カリナが綺麗にカーテシーをする。
「はひぃ、私はミロク神聖協会のシスター、クロエと申します。」
「シスタークロエ、どうしたの?」
「シスタークロエ、顔が赤いよ。」孤児たちが囃し立てる。
「あのお方は、高貴なお方なのです。」シスタークロエが言う。
「ほほほ、私はここにいるムサシ様に嫁ぎましたから、もう王族ではありません。」カリナが言う。
「え? そうなのですか?」シスタークロエが呆ける。
「あぁ、だが俺が公爵を叙爵したからカリナは公爵夫人だ。」俺が言う。
「ひぃ! 身分が変わらないじゃないですか!」シスタークロエが言いながら膝まづく。
「あらあら、孤児たちと同じように接してくださいな。」カリナ様が言う。
「そう言う訳には。」シスタークロエが言う。
「その割には、俺には普通の対応ですね。」俺はシスタークロエに言う。
「あぁ、ムサシ様は公爵様でした。」シスタークロエがフリーズする。
「えぇ? ムサシ兄ちゃんは、ムサシ兄ちゃんだよ。」
「そうだよ、ムサシ兄ちゃんだよ。」孤児たちが言う。
「ははは、そうだぞ、俺はムサシ兄ちゃんだよ。」
「わ~い。」孤児たちが俺に群がる。
「今日は、オークの並肉の生姜焼きだ!」
「わ~い。」
「ふふふ、ムサシ様、私にも食べさせてください。」カリナが良い顔で言う。
「え?」俺は疑問に思う。
「カリナ、オークの並肉だぞ。」
「ふふふ、ムサシ様の料理は、たとえ並肉でも美味しく調理されていますから。」カリナがうっとりとして言う。
「あれ? 俺は孤児たちにやばい物を提供しているのでは?」俺は思う。
「孤児たちが、普通の生活に戻れないんじゃないか?」
「くふふ、そうかもね。」
「え~、どうすれば良いかな?」
「今は、それを提供すれば?」
「それで良いの?」
「孤児院を卒院してから、その苦労を気が付けば良いさ。」
「そう言うもん?」
「くふふ、そう言うもん。」
「なら、今日はがっつりやるか!」俺はオークの並肉の塊をミロクから貰う。
「オークの並肉の塊を薄切りにする。」俺はミロクから貰ったオークの並肉の塊を天叢雲剣で薄切りにしていく。
「くふふ、天叢雲剣の無駄遣い。」
「これが一番薄く切れるんだ。」
「くふふ、」
俺は、オークの並肉の塊を数百枚薄切りにした。
「ぜはー、ぜはー、疲れた。」
「くふふ、今回だけじゃ使い切れないね。」
「残ったら、持ってくれ。」
「くふふ、了解。」
「よ~し、焼いていくか、いや、その前に米か。」
「ムサシ様、あたしお米炊く。」孤児の一人が言って来る。
「おぉ、そうか。」俺はその孤児に人数分の米をミロクから貰い手渡す。
「鍋はあるのか?」
「うん、大丈夫。」その孤児が米を研ぎに井戸に向かう。
「んじゃ、キャベツの千切りか。」
「ムサシ様、あたしに任せて。」別の孤児が言う。
「おぉ、出来るのか?」
「うん。」
「あぁ、任せた。」俺はその孤児にキャベツ2個をミロクから貰って渡した。
「さて、焼いていくか。」俺は地魔法で竈を作りミロクからフライパンを貰って竈に火を入れる。
「ムサシ様、お手伝いします。」別の孤児の女の子が俺に言う。
「おぉ、んじゃ、焼くのを任せて良いか?」
「はい、大丈夫です。」
「あぁ、それじゃ頼むな。」
「はい!」
「ふふふ、孤児たちは逞しいのですね。」カリナが言う。
「いや、前に来たときはこんな風じゃなかったが。」
「ムサシ様に影響を受けたのです。」シスタークロエが言う。
「え? 俺に?」
「はい。」
「どんな?」
「前に、お風呂を作っていただきました。」
「あぁ、そんなこともあったな。」
「孤児たちは、ムサシ様の行為を見て思うところがあったのでしょう。」シスタークロエが言う。
「はぁ?」
「その日から、孤児たちが積極的に動き始めました。」
「なんで?」
「解りません。」
「何でだろう?」
「くふふ、ムサシが背中を押したんじゃないかい?」
「む、ムサシ様。」
「何だ、カリナ。」
「先程から、ミロク神様が見えるのですが。」
「え?」
「くふふ、ムサシと繋がった(・・・・・)から見えるようになったんじゃないの?」
「前に言っていたのは、冗談じゃなかったのかよ?」
「くふふ、私は本当の事しか言わないよ。」
「カリナ。」
「はい。」
「そう言う事らしい。」
「もう、ムサシ様のエッチ。」
「え? 俺が悪いの?」
「知りません。」
「くふふ、夫婦喧嘩は犬も食わないよ。」
「知らんわ!」
その後も孤児たちはてきぱきと動いて、俺が指示をしなくても皿にキャベツの千切りを乗せ、マヨネーズをかけ、生姜焼きを乗せて食事を完成させていく。
味見をしたが、俺がたれを提供したから普通においしかった。
そして、御飯も炊き上がり食事の準備が終わる。
「あれ? 味噌汁が無い?」俺が気付く。
「御つけ作って来た~。」二人の孤児が鍋を持ってくる。
「おぉ、本当に凄いな。」俺は感動しながら言う。
「ムサシ兄さま、味見して。」孤児が味噌汁を小皿によそって俺に渡してくる。
おれはそれを口にする。
「うん、美味い。」
「やったぁ!」孤児たちが喜ぶ。
「良し、食べるぞ。」俺は何時ものように、地魔法でテーブルと椅子を作る。
「ねぇ、ムサシ様。」孤児の一人が言って来る。
「何だ?」
「このテーブルと椅子を毎回消しちゃうけど、このまま残しておいて。」
「え? 何で?」
「天気が良い日は、ここでご飯を食べたいから。」
「遊ぶのに邪魔にならないか?」
「ううん、テーブルもお飯事の場所になるから。」
「そうか、ならこのまま残しておくな。」
「うん。」
孤児たちは、俺とカリナの分まで配膳してくれた。
「それでは、いただきましょう。」シスタークロエが言う。
「「「「「「いただきます。」」」」」孤児たちが言う。
「じゃぁ、俺たちも貰おう。」
「はい、ムサシ様。」カリナがニコニコしながら生姜焼きを口に入れる。
「まぁ、ムサシ様の味だわ。」
「俺がソースを提供したからな。」
「ふふふ、美味しいです。」
「そうか、良かったな。」
「くふふ、私にも食べさせろ。」
「前から思っていたんだが、自分で食べられないのか?」
「え?」
「食べられるようになったって事は、掴めるんじゃないのか?」
「どうだろう?」そう言いながら、ミロクがフォークに手を伸ばす。
「持てる!」ミロクが喜ぶ。
「良かったな。」
「ここまで神気が戻っていたんだね。」そう言いながら、ミロクが俺の皿から生姜焼きをフォークで刺して口に入れる。
「あぁ、美味しい。」
「ミロク様、私のお皿のお肉もどうぞ。」カリナが言う。
「うん、お前たち二人に幸あれ。」そう言いながらミロクがカリナの皿の肉を取り口に入れる。
「言っていることは立派だが、やっていることは残念だ。」俺はあきれながら言う。
「ほほほ、良いではないですか。」カリナがニコニコしながら言う。
「ムサシ兄ちゃん、誰とお話ししているの?」孤児の一人が聞いてくる。
「あぁ、ミロク神様だぞ。」
「ミロクしん?」孤児は疑問顔になる。
「あぁ、俺の手を触ってみろ。」俺は孤児の前に手を差し出す。
「?」孤児は怪訝な顔をしながら俺の手を触る。
「くふふ、健やかにあれ。」
「わぁ!」孤児が尻もちを搗く。
「どうしたの?」別の孤児がその虎児に聞く。
「女の人が見える。」
「其れがミロク神様だぞ。」俺が言う、
「ミロク神?」シスタークロエが反応する。
「皆さま、良い機会です。 礼拝堂にある、ミロク神様のご本当のお顔を見せてもらいなさい。」
「解ったぁ」孤児たちがわらわらと集まってくる。
「触ればいいの?」孤児が聞いてくる。
「あぁ。」
「えい。」孤児が俺の手を触る。
「くふふ、元気で過ごせ。」
「わぁ、本当に神様が見える。」
「え~、俺も見たい。」
「私も見る。」
「あぁ、推すな、俺は逃げないから順番だ。」
「は~い。」
孤児たちは、ミロクを見て興奮しながら食事に戻った。
「ほほほ、良い子たちですね。」
「あぁ、シスターの教えが良いんだろう。」
「ふふふ。」




